「椋、ちょっといいか・・・」

唐突に岡崎くんが話しかけてきた。

「何ですか、岡崎くん」
「ちょっと椋に用事があったんだよ」
「そうなんですか、でもお姉ちゃんに見られても大丈夫なんですか?」
「ん、別に用事があるから話しかけてるんだからいいんだ」
「でも、お姉ちゃんだと勘違いするかもしれませんよ」
「だ、大丈夫だって・・・俺は杏を信じてるぞ」

でも、冷や汗かいてますよ。

「冗談ですよ、それで何の用事だったんですか?」
「ああ、実はな――


急なんだが、明日の昼、空いてないか?」










  友人として・・・










というわけでその日はやってきました。

「岡崎くん、こんな日に何の用事なんだろう?」

私も本当は別の用事があったので、断るつもりだったのですが、
急にバイトが入ってしまって、

「きっとこれは僕と椋さんの仲を嫉む者の仕業だね。」

と言ってました。
それにしてもどうしてよりによって今日なんでしょう?
そんなことを考えているうちに岡崎くんがやってきました。




「はあっ、はあっ・・・悪いな椋、
こっちから誘ったのに待たせちまって」
「別に気にしていませんからいいですよ。」
「しかし、ホント悪いな。
こんな日に誘っちまって」
「私も急遽暇になってしまったので…でもホントにいいんですか。
もし、お姉ちゃんに知られたらどうするんですか。」
「うっ・・・そん時はそん時だ。」
「それで岡崎くんは何で私を誘ったんですか。」
「実は今日椋に付き合ってほしいのは
杏の事なんだよ。」




「そうだったんですか・・・」

どうやら岡崎くんが私を誘ったのは、
お姉ちゃんへの誕生日プレゼントを一緒に探してほしいからみたいです。

「でも、お姉ちゃんなら岡崎くんから貰ったものなら
どんな物でも嬉しいと思うけどね。」
「そうはいっても男じゃ入りにくい店とかもあるじゃんか」
「そんなところに女の子と入る方が問題だと思うんですけど…」
「うっ、でも杏には直前まで知られたくなかったから…」
「分かりました、手伝いますから。
それで、何にするか、ある程度は決まってるんですか?」
「まあ、一応無難にアクセサリー系かヌイグルミ系にしようかと思ってるだがな、
アクセサリーの類はともかくヌイグルミの売っている店に
男一人で入るってのはかなり抵抗があるからな」
「じゃあ、まずはヌイグルミがあるお店から見ましょう」
「分かった。そこの所は椋に任せる」
「では行きましょう」




お店の前に着きました。

「では入りましょう・・・
てどうしたんですか岡崎くん。入らないんですか?」
「いや、いざ入ろうとすると恥ずかしくてな
というか何か得体の知れないプレッシャーが来るんだ
特にあの辺りのぬいぐるみからな・・・」

ただ入りたく無いだけの気もしますけど…

「もー岡崎くん、
お姉ちゃんのためだと思って諦めてください」
「てか椋、後ろから押すなよ」




「それでは早速選びましょう」

隣には何もしていないのにぐったりの岡崎くんがいます。
ここに居るだけでも辛いって顔をしています。

「別に俺はヌイグルミと決めたわけじゃないんだが・・・」
「わー、このヌイグルミ
ボタンみたいじゃないですか?」
「どれどれ・・・確かにウリボウに似てるな」
「ではこれにするんですか?」
「もう少し見てから決めるわ
大体アクセサリーもまだ見てないんだぞ」
「ふふふ・・・お姉ちゃんの事になると、
岡崎くん慎重だね」
「当たり前だろ。
何たって杏は俺の彼女だからな」
「岡崎くん・・・こんな所で言って恥ずかしくないんですか・・・」
「・・・ちょっとだけ恥ずかしくなってきたな」
「ふふふ・・・それじゃあプレゼント探しを続けましょう」




結局そこでは結論を出さずに次に行ってから決めることにしました。

「アクセサリーのお店なら一人でも行けると思いますけど・・・」
「せっかくだから付き合ってくれよ」
「分かりました・・・後でお姉ちゃんに知られても知りませんからね」
「・・・まあ、そん時はそん時に考える」

少しはお姉ちゃんを信用したほうがいいと思いますよ?




「それにしても、アクセサリーつうたって種類が多すぎるんだよな〜」
「岡崎くん、アクセサリーだったらある程度は決めてますよね?」
「ああ、まあな・・・
ある程度は絞ってるんだけどな」
「そうなんですか・・・あ、これなんてどうですか?」
「ん、これか・・・」




その後、岡崎くんは結局アクセサリー店で
プレゼントを買っていきました。

「今日私がついてきた意味、
あまり無かったような気がしますけど・・・」
「そ、そうだったな、まあ今度からは自力で何とかするよ」

空笑いしながら答えている。
ふと、腕時計を見ると、5時半を回っていた。
そろそろバイトも終わる時間かな…

「そろそろ私は行きますね
この後用事もあるので・・・」
「ちょっと待ってくれ、椋」
「え、何ですか?」
「今日はホントにありがとな」
「でも、多分私がいなくても岡崎くんは
ちゃんとお姉ちゃんのプレゼントを見つけれたと思いますよ」
「だったら尚更感謝しないとな
そんな用事に付き合ってくれたんだからな」
「そんなに気にしなくていいですよ・・・」
「というわけでこれをやるわ」

そういって岡崎くんが私にキーホルダーを手渡した。

「え、これって・・・」
「今日付き合ってくれたお礼と・・・誕生日プレゼントだ
さっきの店で買ったものだけどな・・・
そんなに高いものでもないからな、遠慮せずに貰ってくれ」
「・・・・・・」

でも、いくらそれほど高価なものでないとしても、
岡崎くんからプレゼントを貰ってもいいのかな?
それはお姉ちゃんにも失礼な気が…

「なあ、椋」

岡崎くんに声を掛けられました。

「もし、受け取ることを躊躇ってるなら、気にしなくていいぞ
俺は友人としてプレゼントしたいんだ」
「友人として・・・ですか」

岡崎くんは頷きました。
私は少しだけ考えて・・・
それを受け取ることにしました。

「ホントは嬉しかったんです、世界で3番目に入るくらいに!」
「3番目って・・・スゲー微妙なところだな」
「残念ですけど、岡崎くん以上に貰って嬉しい人はいますので」
「まあ、喜んでくれたからいいんだけどな」
「もちろん半分冗談ですが・・・」
「半分はホントなんだな・・・まあ、いっか」
「でも、本当にいいんですか?」
「だから気にするなって、俺が送りたかったから送るんだからな
・・・あと、誕生日おめでとな」

岡崎くんは照れくさそうにしながら言った。
私はとても嬉しかった。たとえ友人としてでも・・・
だから、ちゃんとお礼を言った。

「ありがとうございます、朋也くん」

岡崎くんと友人という関係に戻って以来、
ずっと呼んでいなかった名前で。




「それじゃあ、私は今度こそ行きますんで」
「おう、今日はマジでありがとな」
「気にしないでください
お姉ちゃんと楽しんでくださいね」

そういって少し歩いていったところで立ち止まった。

「岡崎くん〜」
「ん、何だ〜」
「今日、私がお姉ちゃんより先に岡崎くんから
誕生日プレゼント貰ったこと言っちゃいますね〜」
「!! 馬鹿やろう、そんな事あいつに言ったら俺が殺されるだろ!」
「それではまた明日に会いましょう〜
あと、今日のお姉ちゃんとの約束の時間に遅れちゃ駄目ですよ」

そういって私は去っていった。

「あ、くそ〜・・・椋〜! 絶対言うなよ――!」

後ろから岡崎くんの本当に
慌てている声が聞こえてきている。
私はその声をバックにしながらこの後に
約束している人との待ち合わせに向かっていった。






 〜おまけ〜

次の日・・・

「おはよう、椋」
「おはよう、お姉ちゃん
昨日は岡崎くんとは楽しめた?」
「え、あははははは・・・
そういう椋はどうだったのよ?」
「うん、楽しかったですよ
それに岡崎く・・・あ、何でもないです」
「ねえ、椋
何でそこで朋也の名前が出てくるのかしら?」
「え、その岡崎くんのことじゃないですよ」
「りょ〜う〜」
「あ、もう学校行かないと・・・」
「大丈夫よ、登校しながらゆっっっくり聞くから」
「でも、私バスだし・・・」
「今からなら時間あるから大丈夫よ」
「え、あはははは・・・」

もうこれ以上、逃げ道は無いみたいです。
ごめんなさい、岡崎くん。
どうやらお姉ちゃんにばれてしまいそうです。











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 TK「誕生日オメでとー!!」
 椋「ありがとうございます」
 杏「でも、あたしがあんまり出番無いんだけど
  というかほとんど?」
 TK「大人の事情なのです^^;」
 杏「それをごまかしと言うのよ」
 TK「スイマセン_| ̄|○
   実は杏さんも出すお話のつもりだったのですが、
   時間の都合で出来なかったのです」
 杏「・・・・・・」
 TK「ま、他のSS書きさんので補完等を・・・グハッ」
 杏「死になさい!!」
 椋「わ、私が占いで・・・(パラパラ)
  ・・・TKさんは数日以内に命を貰うでしょう」
 TK(それって死ぬって事ッスか!?)
 杏(・・・ご愁傷様)



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