暴風の中の出来事










ビュ――――!!
ガタガタッ!

「凄い風だな」
「そうだね・・・」

風で窓が揺れるのが分かる。

「俺今日帰れるのかな・・・」
「無理じゃない? 流石に・・・」
「何で俺こんな日にもこんな所に来ちまったんだろ?」
「あんたが『台風の接近で暴風警報が出たから学校早く終わったけど、
することないからお前の部屋でゴロゴロしてようぜ』って言ったからですよ!?」
「え、そうだった? じゃあ、お前のせいとかじゃなかったのか!」
「100%あんたのせいですからね!?」
「気にするなって、ほんの少しは冗談だからよ」
「全部冗談にしてくださいよね!?」
「・・・まあ、考えてもしょうがないんだ、弱まるのを祈って待つとするか」

そう思いながら再び読んでいた漫画に目を戻した。




コンコンッ
「春原〜、ちょっといい?」
「いいっすよ〜」

そういうと、美佐枝さんが入ってきた。
そしてすぐに俺の姿が目に入ったみたいだ。

「あれ岡崎、あんたまだいたの?」
「え、ああ・・・こんな天気だし、
もう少し収まったら帰ろうと・・・」

美佐江さんははぁ〜っとため息をつきながら、

「岡崎・・・残念だけどそれは諦めたほうがいいわよ」
「どういうことッスか?」
「・・・あんたは今晩の天気も知らないのかい?」
「知らないですけど・・・」

というか天気なんて見ないし。

「あんたね〜・・・台風がこっちに接近してるから朝までずっとこんな感じよ」
「じゃあ、俺は今日は帰れないってことですか?」
「今から帰れば可能かもしれないわよ」
「今からですか・・・」

俺は窓から外を見ようとした。

「ちっ、汚い窓だな」
「何ちゃっかり酷い事言ってるんですか!?」
「春原〜! 掃除くらいちゃんとしとけっていつも言ってるでしょ!」

春原は美佐枝さんに首を絞められている。
顔が心持ち紫色になっている気もするが…気のせいか。
あれはいつも通りの顔色だろう。
で、肝心の外を見てみると、

(・・・・・・この中をですか・・・)

風も既にかなり強い上、雨が降ってくるかも知れないこの中をですか?

「予報じゃ、これからもっと強くなるって言ってたわよ」
「そうなんすか・・・」
「というか、こんな日にもここに居るなんて・・・
あんたも物好きだね〜」
「ホントだよね〜」

バキッ!

「って何で僕だけは殴られないといけないんですかね!?」
「すまん、お前だけは殴っておけと言う俺のお告げが・・・
「つまりあんたの意思だったんですね!?」
「で結局のところ、岡崎どうするの?」

俺は少し考えてから、

「仕方ねえ、今からさっさと帰ることにします」
「そう? じゃあ、気をつけて帰りなさいよ
雨が降ってないと言っても風は強いからね」
「忠告ありがとうございます、
じゃあ、美佐枝さん」
「ああ、ほんとに気をつけなさいよ」
「はい・・・じゃあな、ヘタレ」
「とっとと行ってください!」

春原の叫びをバックに俺は寮を後にした。



「そういえば、美佐枝さんは何の用事だったんですか?」
「ああ、それはね・・・」
「もしかして! 僕におっぱい揉ませに来てくれたとか・・・
「・・・・・・ドロップキーック!!」

その直後、 何者かの絶命の雄叫びが聞こえたとか聞こえないとか…



「ん?」

俺が外に出ようとしていたら、何か聞こえた気がした。

「春原の断末魔の叫びが聞こえた気がするが・・・?」

ほんの少しだけ考えて、

「ま、気のせいか・・・
それに叫んでるのはいつもの事だしな」

そう思い、俺は外に出た。





ビュ――――!!

「ぐわ〜っ、全然前に進めないじゃないかよ」

家に帰ろうと決心したまでは良かったのだが、
風は想像以上の強さで全然進めなかった。
しかも逆風なので尚更きつい。
俺の横に葉っぱや木の枝がドンドン飛んでいっている。

(一体どのくらいのでかさの台風なんだよ!)

といってもテレビなんて見てない俺にはそんなことも知らない。
とりあえず超大型ということだろう。

ゴ――――ッ!!

一段と強い風が吹いた。

「うおっと」

流石にバランスを崩しかけ、咄嗟に踏ん張り何とか助かった。
その時、前から人が飛んできた。
俺は咄嗟にそのコース上にいたので避けた。
その瞬間、その飛んできた人の正体に気付いた。

(もしかして、ことみ・・・?)

そう気付いたときには既にことみ(仮)は俺を横切り
何処か遠くに行ってしまった。

「しかも、本読みながら飛んでいったぞ・・・
もしかして自分が飛ばされてることに気付いてないんじゃないのか?」

ことみの集中力に改めて驚いた。
が、俺はここである疑問が浮かんだ。

(ってか、ことみがこんなところを飛んでるはずないじゃないかよ!?
いくらなんでも、こんな日に外で本を読んでいるはずないし、それに・・・)

「人がそう簡単に飛ぶはずないよな〜」

多分、あれはことみに似たぬいぐるみか何かの類だろう。…でか過ぎるがな。
ことみは今頃、自分の家でのんびり本を読んでいるはずだ! ・・・きっとな。
俺はそう自分の中で結論付け、今のは見なかったことにしておいた。

「って俺も早く家に帰らないとな
またさっきより一段と強くなっている気がするし・・・
俺も飛ばされたくないしな・・・」

俺は再び逆風の中、進み始めた。




しばらく進むと、何かが足に当たった。
それを見ると、見覚えのあるものだったので拾ってみると、

「これは木彫りの・・・ヒトデ?
これはもしかして・・・」

ビュ―――――!!

そう思った瞬間、再び突風が!
何とか踏ん張ろうと思っていると、

俺の横を通る過ぎる幾つかの木彫りのヒトデ(多分)、
そして、それを持って飛んでいく一人の少女…

「・・・・・・」

いや、俺は何も見てないぞ。
人間はそんな簡単に飛ばないからな。
あれは決して俺の学校にいる1年生の
伊吹風子ではなかったぞ。

俺は自分の心にそう言い聞かせた。
とりあえず、このヒトデだけは持っておこう…






ゴ―――――!!
ガシャンッ!?

どうやらどこかのガラスが割れたみたいだ。
これは徐々にやばくなってきているな…
自分の歩く先から何が飛んできてもおかしくないからな…

ビュ――――!!

また強い風が来た…その直後、
前から物凄いスピードで何かが飛んできた。

(は、早!?)

あまりの速さにかわすことが出来ず、

ゴスッ!

足に命中した。
その拍子にバランスを崩した。しかも、

ビュ――――!!

又もや突風が吹いてきた。

「うわあああぁぁぁ―――!!」

俺は見事に数メートル吹っ飛ばされた。

「ああ・・・俺は今、空を飛んでいたよ・・・」

何とか無事に着地できたものの…

(春原っていつもこんな気分で飛ばされていたんだな・・・)

しかし何だったんだろうな、今俺の脚に当たったものは…
だが、それはもう遠くに飛んでいるから確認は出来ないんだがな。

「これ以上外にいると本格的にやばい!
ほんとにさっさと帰ることにしよう・・・」




また、一段と風が強くなって気がした。

「さあ、次は何が飛んできるんだ?
岩か、レンガか、瓦か、ガラスの破片か、大木か、家ごとか、それとも・・・
百科事典か、六法全書か!?

少しだけ疑心暗鬼になっている俺。
というか百科事典や六法全書が飛んでくることってない気がする。
…まあ、ある一点からは飛んでくることもあるがな…
主にある一人にだがな!

ビュ〜〜〜〜〜〜!!

今までで最大級の突風が来た。遂にきた!

「さあ、英和でも和英でも何でもかかって来い!」

ちょっと俺の脳はおかしくなっているみたいだ。
その時、俺の顔面目掛けて、何かが飛んできた。

(く、コイツは避けきれない・・・死ぬかも!)

そう思っていると、

ズボッ!

それは叫んでいた俺の口にすっぽりと入っていった。
どうやらやわらかいものだったため、命は助かったみたいだ。と思っていた直後、

(うっ、突然意識が・・・)

朦朧としていく意識の中、俺は考えていた。
この全身が拒絶する謎の物体、そしてこの触感…
恐らくパンだろう…そして、こんなパンを俺は一つして知らない。

「もしかして・・・・さ、早苗パン・・・ですか・・・」

というかもしかしなくてもそうだろう。
その直後、俺の意識はブラックアウトしていった。





ガタッ!

そんな物音を耳にして目を覚ました。

「ん、ここは・・・・・・」

そこはどこかの部屋だった。

「あ、岡崎目覚ましたのか?」
「ん、春原? ってことはここは・・・」
「そう、僕の部屋だよ」
「・・・・・・」
「寮の前で倒れてるのを偶然美佐枝さんが発見して運んでくれたんだよ
で、僕の部屋で寝かせといたんだよ・・・
おかげで僕は寝不足なんだけどね」

そうだったのか…一応、感謝しとくことにするか…
そして、その前にやらなければいけない事が…

ドゴッ!

「っていきなり何するんですかね!?」
「いや、ここで殴っておかないと
春原エンドフラグとかたったら嫌だからな」
「理不尽っすね、ってフラグって何ですかね!?」

コンコンッ

「入るわよ〜」

そういって美佐江さんが入ってきた。

「って岡崎起きてたのね、調子はどう?」
「大丈夫っすよ」
「そう・・・発見したときは岡崎死にそうな顔してたからね
さすがにあたしも焦ったわ」
「そんなにやばかったっすか?」
「ええ、泡吹いてたし、痙攣もしてたわね
「そうっすか・・・」

恐るべし、さすが(?)早苗パン。

「まあ、何事も無いみたいだからよかったわ」
「ありがとうっすね、発見してもらって」
「気にしなくていいわよ、それよりあんたら
今日も学校あるからさっさと行ってくれるとありがたいんだけど・・・」
「あんまり行きたくないんですけどね・・・」
「僕も遅刻していきたいんですけど・・・」
「つべこべ言ってると、ドロップキックくらわすわよ!」
「はい、行きます」

さすがに朝からそんなものはくらいたくなかった。

「あと、制服は乾かしておいたからね
ここにおいて置くわよ」
「・・・じゃあ、今俺が着ているこの服は?」
「それは僕の服だよ・・・」

え、春原の服? Sunohara's clothes?

「・・・ぐわあああぁぁぁ―――!!
体中が突然痒くなってきた!!」

「あんた人が貸してやってるのにその言い草はないですよね!?」
「というか誰が着替えさせたんですか?」
「ああ、春原だけど・・・」

ドゴッ! ボグッ!

「って何でいきなりパンチくらわないといけないんでしょうかね!?」
「スマン春原・・・
これも俺のためだと思って殴られ続けてくれ」
「絶対、嫌ですからね!?」
「アホなことやってないでさっさと行きなさいよ・・・」

とりあえず、この事実は俺の中で黒歴史化しておくか…




登校時・・・

「あ・・・岡崎さん、春原さんお早うございます」
「お早う渚ちゃん」
「おはような・・・何かちょっと疲れた顔してないか?」
「え、そうですか?」
「んな気がしただけだ・・・で、何かあったのか?」
「ちょっと心配事がありまして・・・」
「・・・何なんだ?」
「実は・・・昨日の台風のどさくさにまぎれてお父さんが、
お母さんのパンをばら撒いてたんですよ!

あのパンはおっさんの仕業かよ!?

「ですから他の人に被害が被っていないか心配でして・・・」
「・・・・・・」
「岡崎さん、どうしたんですか?」
「いや、何でもない・・・」
「そうですか・・・って早く教室に行かないと遅れてしまいます!」
「そうだな・・・」

俺はその被害者ですけど!
とはとても言えなかった。


ちなみに教室に行くと、
地元で多数の謎の昏睡者が見つかった!
という噂が流れていた。
俺はその真相は知らない…ことにしておいた。











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 TK「クルスさんへの1万ヒット記念SSでした〜」
 朋也「HP開設記念SSはどうしたんだ?」
 TK「・・・・・・これと一緒ということで・゚・(ノД`)・゚・」
 朋也「そんなんだからこんな中途半端なSSになるんだよ!
   つまらんのだから、とことんつまらなくしておけよ!」
 TK「酷い言いようですね・・・」
 朋也「だったら今度送るときはもっといいもの送れよな!」
 TK「精進します_| ̄|○」
 朋也「お前、それまた送りますって言ってるようなものだぞ・・・」
 TK「あっ・・・」
 朋也「・・・ヘタレ並みの脳だな・・・」



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