「…もう朝になっちまったか。」

  昨日はなかなか寝付けなく、結局夜遅くまで無駄に起きていた。
  そんなこと言ってもしょうがないんだがな。

  「時間は…9時か。今から用意すれば間に合うな。」

  そういって起き上がり出掛ける準備をした。
  とにかく芽衣ちゃんと約束した場所に向かうことにした。

  「って何処に行けばいいんだ。」

  今度は集合場所を決めてなかったことに今気づいた。











  夏の3days 後編











  とりあえず学校の寮に行くことにした。そこしかあてが無いんだが…
  着いたのは10時前だったが、そこに芽衣ちゃんはいた。

  「おはよう芽衣ちゃん。」

  俺としては今日はすぐに会えたことが嬉しかった。
  昨日のことがあるし…

  「そういえば集合場所言うの忘れてましたから
  今日会えるかどうか心配でしたよ。」
  「俺もそう思ったよ。でもここしか思い浮かばなくて…」
  「そうでしたか、私も岡崎さんが思い浮かぶ場所は
  ここしかないのでは…と思ってました。」

  そう言って笑う芽衣ちゃん。考えが読まれていたことがちょっと悔しい。

  「ま、無事に集合できたからいいんじゃないか。」

  そこでふと芽衣ちゃんを見て気づいた。

  「そういえば今着ている服って確か昨日買ったやつじゃ…」
  「そうですよ、似合ってますか。」

  着ているのは昨日買った白のワンピースである。

  「ああ…ってそれ昨日も聞かれたけど。」
  「今日も聞いておきたかったんです。」
  「それで今日は何故俺だけなんですか。」

  聞くと、芽衣ちゃんはちょっと拗ね気味で

  「岡崎さん聞いてなかったんですか、今日は私とデートしましょうって
  言ったんですよ。おにいちゃんがいたらデートにならないじゃないですか。」

  ちょっと待てよ。

  「確かにそうだけど…昨日はみたいなものとか言ってなかった?」
  「そんな小さい事気にしてるなんておにいちゃんみたいですね。」

  春原みたい…春原見たい…スノハラミタイ…

  「どうしたんですか!? 岡崎さん。何か遠い世界に行っているみたいでしたよ。」
  「ん、ああ…大丈夫だよ。」

  実際は大丈夫じゃなかったが。お花畑見えたし。

  「で、今日はどこに行くつもりなんだい?」
  「事前に調査して決めてあります。では行きましょう。」
  「ちょっと待ってよ、芽衣ちゃん。本当に何処なんだよ。」
  「ついてこれば分かりますよ。」

  そういうと先を歩いていってしまった。

  「仕方ない…ついて行けば分かるか。」

  そう思ってすぐに追いかけて行った。




  そこは駅に行き電車で3駅ほど行ったところにあるテーマパークだった。
  途中の段階をもの凄く端折ってるな。

  「今日はここで遊ぼうかと思っていたのです。」
  「…遊園地か。」

  遊園地なんかもう随分行った記憶が無いな。
  行く機会が無かったというのもあるが。

  「では早速入りましょう、早くしないと混んできてしまいます。」
  「そうだな、もう既に込んできてるしな。
  それにしても、もしここに来るつもりだったなら
  もう少し集合時間早くすれば良かったな。」

  そういうと、芽衣ちゃんにジト目で見られた。

  「でも、岡崎さん朝弱いじゃないですか。
  前来た時も朝全然起きなかったじゃないですか。」
  「ぐはっ、それは言わないでくれ。」

  悶絶する俺を見て、笑う芽衣ちゃん。
  でも、いっしっしという笑い方はやめた方が…女の子だし。

  「でも、今日は遅刻してこなかったので良かったです。」

  そういってさっさと入場券売り場に行った。
  俺もその後を慌ててついて行った。




  「それでまず何に乗るのかな。」

  入場券を購入し、園内に入って周りを見渡しながら聞いた。

  「まずはやっぱり定番中の定番、お決まりのパターン、メリーゴーランドです。」

  え、聞き間違えたのか? 何か予想と違うものが聞こえた気が…
  やっぱりメリーゴーランドとか言ってたよな。

  「もちろん岡崎さんも乗るんですよ。」
  「芽衣ちゃん、それはさすがに…」

  俺がメリーゴーランドに…想像しただけで吐き気が…

  「冗談ですよ、ジェットコースターに決まってますよ。」
  「芽衣ちゃん、俺になんか恨みでもあるの?」
  「ないですよ、それより早く行きましょう。
  あれは混むってのが定石なんですから。」
  「あ、おい待ってくれよ芽衣ちゃん。」

  そういってジェットコースターの列に行った。



  「結構並んでるな…」

  これは最低30分は待たないといけないな。
  そういうのは苦手なんだよな。

  「でも、待つのも遊園地の醍醐味というものなんです。」

  そう言う事もあるな。

  「何か話しながら待ちましょう。」
  「そうだな…じゃあ、一昨日話してなかった早苗さんのことでも話すか。」
  「早苗さんっておにいちゃんの恋人の振りをしていたあの人ですか。」
  「ああ、そうだよ。芽衣ちゃん、
  実は早苗さんはれっきとした一児の母なんだよ。」
  「・・・・・・え゛えええぇぇぇーーー」

  音読不可能な声で芽衣ちゃんが叫んだ。まるで春原のようだ。
  すると周りにいた人が一斉にこちらを見た。

  「もう、ビックリさせないで下さいよ、岡崎さん。」

  って俺に罪擦り付ける気ですか!?
  しばらくして周りは興味が無くなったのか、自分達の会話を再開した。

  「で、岡崎さん冗談ですよねその話。さっきの仕返しですか。」

  芽衣ちゃんの反応は最もだ。

  「でもこれは本当なんだよ。しかも、俺達の高校に娘さんがいるんだよ。
  それも俺や春原と同じ学年だ。」
  「・・・・・・」

  先ほどのような奇声(?)を上げることも出来ないようだ。

  「・・・・・・世の中は不思議なことばかりですね。」

  そういって放心してしまった。
  俺も最初聞いたときはビックリだったからな。
  そのうち乗る順番となった。



  「きゃああーーーーー!!」
  「うわあああーーーーー!!」

  それは想像以上だった。



  「凄かったですね。」

  満足そうな芽衣ちゃん。

  「ああ、あれ最速何キロ出てるんだよ。」

  一方の俺は早くも疲労困憊だ。

  「最速130`程度って書いてありましたよ。」
  「はあ!? どう考えてももっと出てたぞ。過少表記じゃないのか。」

  あり得ねえ、ありゃあ170は出てたぞ、隠れ記録だぞ。

  「でも過少に書いてもしょうがないんじゃないですか。」

  しかもそれ以前にコースの半分以上逆さじゃねえかよ。
  頭に血が上ってしょうがない。
  ありゃああり得ないぞ。いつか事故起こすな、あれは。

  (あれは春原をいじめる為に作ったんだろう…)

  そう自分に言い聞かせた。




  「次はこれです。」

  目の前にはお化け屋敷がある。

  「こいつはまたベタ過ぎるおちだな。」
  「…じゃあ、メリーゴーランドに行きましょう。」
  「さあ、芽衣ちゃんさっさと並ぼう。」

  あれだけは勘弁だ。俺も乗せられる気がする。

  「あ〜待ってくださいよ、岡崎さん。」

  さっさと列に行く俺に慌てて芽衣ちゃんが追いかけてきた。



  順番になって入っていった。

  (まあ、それなりに怖いが驚くほどでは…)

  中は凝ったつくりではあったが標準程度だった。
  さっきの逆さコースターなんかとは違いいたって普通だ。

  「きゃああーーー。」

  そういうと芽衣ちゃんが俺の腕にしがみついて来た。
  しかもいかにもわざとらしく…ってもしかしてこれは…

  (う、ううでに胸が当たってるよ。)

  中学生といっても成長期の女の子であるから、そりゃあ気にならないことは無い。
  脳内で様々な葛藤をしていると、芽衣ちゃんが覗き込んできた。

  「な、なんだい芽衣ちゃん。」

  冷静に返事した。ちょっと冷や汗だ。

  「岡崎さん、今私が腕にしがみついた時、ちょっと焦りましたよね。」
  「そんなことは無いよ。」

  もちろん実際は焦りまくりです。

  「じいーーーー。」

  ジト目で見ている。

  「うっ。」
  「じいいいーーーーーーー。」
  「……すいません、じつは焦ってました。」

  そりゃあ、女の子の胸が当たれば少しは焦りますよ。

  「岡崎さんのエッチーー。」

  芽衣ちゃんはそう言いながら進んでいった。

  「って止めないとやばいだろ、あれは。」

  俺は慌てて止めるため追いかけた。お化けより怖いぞ。
  
  


  出たあとは他のアトラクションに入ったり乗ったりした。
  途中でメリーゴーランドに行った時、
  危うく乗せられそうになった。
  それは全力でお断りした。とっても残念そうな顔をしていた。




  最後は観覧車に乗った。これもお決まりのコースだな。

  「うわー、とても高くまで昇ってますね。
  外の景色も夕焼けに染まってきれいです。」

  外は夕方とあって綺麗な景色が広がっている。

  「今日は楽しかった? 芽衣ちゃん。」
  「はい、とても楽しかったです。」

  そういってとても嬉しそうな顔をした。

  「岡崎さんは楽しかったですか。私が急に言った事だったので
  迷惑ではなかったですか。」
  「俺は…そうだな…。
  確かに急に言われたことだったから戸惑ったけど
  今日は一日楽しめたよ。」

  本心からそう思えた。


  
  「岡崎さん、おにいちゃんは今何してるんですか。」

  突然そんな事を聞かれた。ちょっと質問の意図が読めない。

  「あいつはいつも俺と馬鹿やってる日々だよ。」

  とりあえずそう答えておく。

  「やっぱりそうですか。あんまり聞いた意味無かったですね。」
  「そうだが…何でそんな質問をしたんだい。」

  そう聞くと、

  「来たときに私の目的がこの町への観光だと言いました。
  実は親には行く前に兄の様子を見てきてくれと言われました。」
  「なるほど、さすがに観光だけじゃ両親もお金は出さないよな。」
  「両親は多分おにいちゃんのことが心配なんですよ。
  今年でもう卒業ですからね。それでおにいちゃんはどうするのか。気になってるんですよ。」

  そりゃあ、普通の親なら自分の子の将来を心配するだろう。

  「大丈夫だよ、この間もあいつの部屋に地元の企業のパンフレットとかあったし。
  あいつは馬鹿だけど自分の事はちゃんと分かってるやつだよ。」
  「本当ですか?」
  「ああ、高校であいつの一番近くにいた俺が言うんだ、間違いないよ。」
  「分かりました。そう言っときますよ。」

  安心した、という感じでそう言った。

  「ってあいつの一番近くにいたって言っちまったよ、俺。
  駄目だ。やっぱ今の発言は撤回の方向で…」
  「じゃあ、やっぱりおにいちゃんは駄目なんですか。」

  悲しそうな顔で言う芽衣ちゃん。

  「…仕方ない、今回は超法規的措置でそれを撤回しないことにしよう。」
  「そこまで嫌なんですか、お兄ちゃんのこと。」
  「嫌なら喋らないって。あいつとはこういう関係でいたいんだ。」
  「そうなんですか。じゃあ、そういうことにしておきます。
  そういえば岡崎さんは卒業後はどうするんですか。」
  「まだ何にも考えてないが、進学は考えてないしな…
  とりあえず地元で就職するんじゃないか。」

  まあ、今の家にいることは無いんだが…

  「じゃあ、岡崎さんはこの町に残るんですね。」
  「そうだが…何で?」
  「実は…私も岡崎さん達の高校を受けようかと思ってるんですよ。」
  「何いいぃーーーー!!」
  「そんな大きな声出さないで下さいよ。
  それでやっぱり知り合いがいれば良いじゃないですか。」
  「…それは俺に留年しろということか。」
  「違いますよ、そのときに岡崎さんにこの町のことを
  もっと教えてもらいたいんですから。」
  「分かったよ、そのときは歓迎しまくってやるよ。」
  「待っててくださいよ、岡崎さん。
  くれぐれも始めた仕事やめて駄目人間にはなってないで下さいよ。」

  あまり笑えない冗談だ。

  「…そうならないように努力するよ。」




  次の日…

  「それでは岡崎さん。」
  「そうか、もう帰っちゃうのか…残念だな。」
  「そうですね、実はまだ夏休みの宿題をほとんどやってないんですよ。」

  ちなみに今は8月半ば、なかなか厳しいぞ。

  「俺なら諦めてやらないな。」
  「それじゃあ、この高校は行けませんよ。進学校ですから。」
  「大丈夫だって、あのヘタレですら来れるんだから。」
  「おにいちゃんはスポーツ推薦ですから成績関係ないですよ。」

  まあ、俺もそうなんだがな。

  「そういえば俺は何か宿題あったかな。まあ、いっか。」
  「岡崎さん、そんなんじゃ留年しちゃいますよ。」
  「大丈夫だ、俺の前に春原が留年だからな。
  あいつが決定したら俺は真面目に生きていくから。」
  「おにいちゃんを基準にしないで真面目に頑張ってくださいよ。
  そろそろ行かないと電車が来ちゃいますね。
  では、そろそろ行きます。」
  「ああ、じゃあな、芽衣ちゃん。またな。」
  「はい、また会いましょう。」

  そういって芽衣ちゃんと別れた…



  「って僕の存在忘れてますよね!?」

  誰だ? こいつ。俺のメモリーにはいないぞ。

  「何ですか、その見たこと無いって顔は。アンタ友人でしょ!?」
  「え?…まさか俺とお前が。
  はっはっは、悪い冗談だ。お前が秀才とか言う位あり得ねえよ。」
  「とんでもない言いようですねえ!?」
  「おにいちゃん、私本当に行かないといけないんだけど…」
  「ん、そうか…じゃあな芽衣。」
  「うん、おにいちゃんも留年しちゃ駄目だよ。」
  「分かってるって。」
  「文句無く留年するからな。」
  「アンタだけ勝手にしてくださいね!?」
  「あははは…」
  「じゃあな、芽衣ちゃん。」
  「はい、岡崎さん、あと…おにいちゃんも。」
  「僕無視ッスか、しかもオマケ扱いっすか!?」

  今度こそ芽衣ちゃんといったみたいだ。



  「春原…」
  「何すか、いったい。」
  「いや、あと半年よろしくな。」
  「え、勿論だって。急になんだよ岡崎。お前らしくないじゃん。」
  「いや、ただ言いたかっただけだよ…気にするな。」
  「僕達友達ッスからそんなの今更じゃないッスか。」
  「じゃあ、その友達のために智代の空中コンボを見せてくださいよ。」
  「どうやって見せるんですか。」
  「もちろんお前が智代に挑めばみれるじゃん。」
  「そんなこと友達に頼むことじゃないですよね!?」
  「お前の飛んでる姿に俺いつも感動しちゃうんだけどな。」
  「そんなことに感動されてもうれしくないですからね!?」
  「俺は心底感動するんだが…」



  「岡崎さん。」

  遊園地に行った帰りだった。

  「岡崎さんはあと半年おにいちゃんと過ごすんですよね。」
  「そうだな、このまま普通に卒業するならな。」
  「おにいちゃんとは半年仲良くやってくださいね。」

  冗談で返そうとしたが芽衣ちゃんは真剣に言ってきたのでちゃんと答えた。

  「ああ、分かってるよ。」



  そうだな、あと半年しかない学生としての時間。
  このヘタレとこんな馬鹿やっててもいいな。

  「ってアンタ最後まで人をヘタレ扱いっすか!?」

  …とりあえずまずこいつには空中にでも飛んでもらおう。











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 TK「終わりました、何とか…」
 芽衣「結構な量になりましたね。」
 TK「はい、予想以上の量です。
   原因は私のまとめる力の不足です。」
 芽衣「これで終わりですか…残念ですね。」
 TK「しかし最大の問題が…」
 芽衣「なんなんですか、いったい。」
 TK「誤字脱字の心配が…」
 芽衣「大丈夫なんですか?」
 TK「何といっても現国苦手だったんで…」
 芽衣「そこはおにいちゃんと一緒ですね。」
 TK「陽平と一緒って言われた…死のう。」
 芽衣「わーー! 自室から飛び降りようとしないでください。」
 TK「それよりももっと大きい問題が…」
 芽衣「いったい何なんですか…」
 TK「題名は3daysなのに
   4日目があります。」
 芽衣「…先のこと考えて題名はつけてくださいよ。」
 TK「仕方ないんですよ、題名は難しいんです。
   これでも題名考えるだけで1日終わってる日もあるよ。」
 芽衣「ボキャブラリー貧困なんですね。
   やっぱりおにいちゃんみたいです。」
 TK「…やっぱ死のう。」
 芽衣「わーー! 紐探し出さないで下さいよ。」
 朋也「という訳で次の作品で。」
 TK・芽衣「最後とられちゃったよ。」

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