夏休み最終日にバースデー











「くそー、何で終わってないんだー!」


俺の目の前にはいまだ終わっていない宿題の山があった。
いや、山ってのは誇大表現なんだけどな…
そのくらい残っているということだ。
勿論、俺がやってないからではあるが、
それでもそう叫びたかった。

「今日だけは空けておきたかったんだが・・・」

しかし、宿題をやってないのはまずい。
数日前に暇潰しに雄二を誘うために電話したら、

『実は全然宿題やってねえのが姉貴にバレちまってよ・・・』

どうやらタマ姉の十八番、アイアンクローを喰らったようだ。
その後は連絡が全く取れなくなった。
今頃はアイアンクローの恐怖と戦いながら消化しているんだろう。
このままでは俺もアイアンクローの餌食に…
しかし、一人じゃ終わる量じゃねえし…
何が悲しくて夏休み最後の日に課題の消化をしないと…




プルルルルッ


電話が鳴っている。
誰だよ、こんな時に。
俺は一刻も早く宿題を終わらせたいのに…
そんなに俺を魔手の餌食にしたいのかよ。
ってそんなことタマ姉に言ったらそれこそ死ぬか。
と思いながら電話に出た。

「はい」
「あ、長瀬ですけど・・・」

それは女性の声だった。しかも、

「由真か?」
「もしかしてたかあき?」

相手は由真だった。

「そうだぞ」
「いきなりだけどあんたにお願いがあるのよ」
「悪いが今日は物凄く忙しいから・・・」
「薄情者〜! あんたそれが困ってる彼女に対する仕打ちなの?」
「別にそういうわけじゃないって
しかしな、俺は明日までにやらねえといけない事があるんだ!」
「奇遇ね。あたしも今日中にやらないとまずい事なのよ!」


「「・・・・・・」」


嫌な予感がするんだが。

「もしかして由真もか・・・」
「何よ、たかあきもなの・・・」

どうやら似た者同士のようだ。
由真からは溜め息が聞こえてきた。

「で、単刀直入に聞くが、お前はどれくらい残ってる?」
「あたしはあと2割くらいかな。あんたは?」
「・・・俺は3割残ってる」
「ふふふ・・・あたしの勝ちね」

意味もなく勝ち誇る由真。

「このままだとある意味二人とも負けだがな」
「ううっ・・・」
「で、何で俺に電話を?」
「もう今日中には終わりそうもなかったから、
たかあきのを写そうと思ったのよ。そしたら・・・」

それは明らかな人選ミスだろ。

「だったら小牧に見せてもらったほうがいいんじゃないか?
あいつだったら確実に終わってるだろ」
「それはもう実行済みよ
でも、あいつの妹に先に電話に出られて阻止されたのよ」

それは初耳だな。

「小牧って妹いたんだ。どんな奴なんだ?」
「一言で言えば・・・愛佳の正反対ね」
「・・・・・・それじゃあ無理だな」
「うん、それで少ない希望を賭けてたかあきに電話したのに…
あんた宿題位やっておきなさいよ」
「そっくりそのまま返してやるよ」
「うっ・・・」
「「・・・・・・・」」

しばらくの沈黙。

「・・・なあ、由真」
「何よ」
「はっきり言ってこれって時間の無駄だよな」
「・・・そうよね」
「ということで、俺はこれから残り3割の宿題を片付けるから―――」


「ちょっと待った!」

急に叫ぶな、耳がキンキンしてきた。

「何だよ、俺はマジで急いでるんだが…」
「今からあんたのうちに行く」
「は?」
「一応あんたもあたしもある程度やってるんでしょ
だからやってるところを写しあえば終わるでしょ?」
「なるほどな・・・それはいい考えだな」

確かに今の状態からの自力勝利はかなり厳しい。

「んじゃ悪いが、今から超特急で来てくれ」
「分かったわ」

ガチャッ


「・・・」

さて、とりあえず由真が来るまで休憩するか。


数分後…

プルルルルルッ

「はい、河野で・・・」
「たかあき?」
「由真か、どうしたんだ
早く来てくれって言ったじゃないかよ」
「え〜と、あんたの家って・・・何処だっけ?」
「・・・・・・お前俺ん家に来たことあるよな?」
「ええ、あるわよ」

コイツ忘れやがったな…

「・・・はぁ〜、で今どこにいるんだ」

由真に今居る場所を聞いて
俺は出来るだけ簡潔に教えた。

「ん〜、大丈夫・・・多分。」

多分かよ。

「じゃあ、今から行くから」
「ってまた分からなかったらすぐに連絡しろよ」
「分かってるわよ」

…激しく心配だぞ。




ピンポーン

どうやら無事に家に着いたみたいだな。

「は〜い、ちょっと待ってろ」


「おじゃましま〜す」
「あんまりキョロキョロ見るな
んで、ここが俺の部屋だ」
「知ってるけどね
そういえば前もそうだったけど、両親はいないの?」
「今日は平日だろ、いなくても普通じゃないか?
まあ、二人とも海外に行ってるから休日でもいないけどな」
「ふ〜ん、じゃああんたいつも一人なの?」
「まあな・・・とりあえず座ってろよ
飲み物持って来るけど・・・ジュースでいいか?」
「うん、それでいいよ」
「コーヒーもあるけどジュースでいいか?」
「うん」
「わかった、ちょっと待ってろよ」



飲み物を持ってきた。

「さてそろそろ始めるか」
「うん」
「そういえばお前は何が終わってないんだ?」
「主に英語、あんたは?」
「俺は数学・・・」
「とりあえず被ってないのね」
「じゃあ、写し合えば早く終るな」

そういって宿題写しという作業を開始した。


カリカリカリ…
カキカキカキ…


1時間後…

「あ〜、飽きた〜」

だら〜んと横になる由真。

「何言ってるんだよ、といいたいがそれには同意だな
ちょっと休憩するか」
「んじゃ、下から菓子でも持ってくる」
「よろしく〜」



「そういえばさ〜」
「何だ?」

二人とも菓子を食べながら雑談していた。

「何でたかあきは宿題まだ終わってないのよ?」
「あ、それはだな・・・
ぶっちゃけお前と遊びすぎていたからかな?」
「何よ、あたしのせいな訳?」
「それじゃあ、お前は何でやってないんだ?」
「ううっ、それはあんたと違ってあたしって多忙だから・・・」

目が泳いでるぞ、このやろう。

ジ――――ッ

「うっ」

ジジ―――――――ッ

「ううっ」

ジジジ――――――――――ッ

「・・・はあっ」

どうやら観念したみたいだ。

「そうよ、あたしとあんたと同じよ」
「じゃあ、同罪ってことだな
というわけでさっさと宿題の続き始めて終わらせるか」
「ええっ!? もう休憩終わり!?」
「もう30分も休んでるわ!」




「・・・ふぅ〜」

だいぶ終わったな。
もし一人だったら、まだ半分以上は残っていただろう。
これならもう少しで終わる量だろう。

「お〜い由真はどのくらい終わったんだ・・・」

と由真を見ると見事に寝ていた。

「全く俺が頑張っているというのにこいつは寝やがって・・・」
「すぅ・・すぅ・・・」
「・・・それにしても・・・・」




「ん、ん〜」

どうやら由真が目を覚ましたみたいだ。

「おはよう」
「ん〜おはよ・・・」

そこで由真の動きが止まった。
そりゃあそうだろう、
起きたら目の前に俺の顔があるんだからな。

ボゴッ

急に目の前が真っ暗になった。
どうやら顔面に拳が入ったみたいだ。

「何するんだよ!」
「アンタが変なことするからよ!
何で顔近づけたのよ」
「いや、そのな・・・・
まあ正直なところ、由真が可愛かったから見惚れてただけだよ」
「そ、そうなんだ・・・」

しまった、気まずくなっちまった。

「・・・と、とりあえず宿題早く終わらすぞ」
「うん・・・って何でアタシの宿題はこんなに残ってるのよ!?」
「そりゃあ、寝てたからな
・・・俺も終わったら手伝ってやるから頑張ろうぜ」
「うん、ありがと
じゃあ、アタシは寝てるから頼むわ」
「・・・・・・」

とりあえずデコピンして続けさせた。




「・・・・・・やっと終わった」

時刻は夕方5時くらいを回っていた。
夜までを覚悟していた俺にとっれは予想をはるかに上回るペースだった。

「・・・そうね、ホントに疲れたわ」
「そうだな・・・
ってお前は最後のほうはほとんど俺に任せっぱなしだったじゃないかよ!」
「分かってるわよ・・・
ありがとね、たかあき」

そんな顔で言われたら何も返せないじゃないかよ。

「いいって別に・・・
それでまだ時間多少あるし行きたいところ無いか?」
「・・・・・・」
「お〜い、由真?」
「・・・え、何よ?」
「(・・・まあ、いいか)今から何処か行きたいところはないか?」
「特にはないわよ」

そういっている顔は何か言いたげだった。

「そうか、俺はちょっと行きたい所あるんだけど・・・
じゃあ、そこにでも行かないか?」
「うん・・・」




「たかあき、ここって・・・」
「そういうことだ
まあ、とりあえず行くぞ」



「俺が今日どうしても行きたかった場所はここ」

そこはツインタワーの渡り廊下だった。

「それで言いたかったことがあったんだ」

由真をまっすぐに見つめて、

「・・・誕生日おめでとうな」
「ちゃんと覚えててくれたんたんだね・・・ありがと」

そういった由真の顔は僅かな夕日を浴びて
より可愛く、そして綺麗に見えた。

「それを言うために、わざわざここまで連れて来たの?」
「ああ、絶対ここで言いたいと思ってた」

二人が自分の思いを吐き出した場所で…
そして、二人が本当に始まったこの場所で…

「ホントはデートでもしてその帰りに寄って言いたかったんだが・・・
ごらんの事情だったし」

俺が苦笑して言う。

「そうだったわね、でもあたしもそうだったし・・・」

二人して苦笑していた。

「あたし達って似たもの同士ね」
「そんなところはな」

その言葉にまた苦笑しあった。

「それにしても、今日はせっかく由真の誕生日なのに
デートとか出来なくて悪かったな」
「まあ、いいじゃないのよ
内容はとにかく一緒にいることは出来たんだし
それに・・・」
「それに?」
「たかあきが私の誕生日の事覚えててくれたしね、それが嬉しかった」
「さすがに由真の誕生日は忘れないよ」

ちょっと照れくさかったが、そう言った。

「でも、ホントにありがとね
たかあきにおめでとうって言われたとき、ホント嬉しかったよ」

そういいながら俺に近づいて俺に抱きついてきた。

「たかあき、好きだよ・・・」
「俺もだ、由真・・・」

そして、お互いの唇を重ねた。
沈みかけた夕日をバックに・・・




ツインタワーから降りた後、

「そういえばたかあき、
私への誕生日プレゼントは無いの?」

その言葉を待ってたぞ。でも・・・

「あ〜、とりあえず夕飯でも食べに行きとするか・・・
ちゃんとついて来いよ、ちなみに今日は俺の奢りだからな」

そういって俺はダッシュした。

「あ、ちょっと待ちなさいよたかあき・・・
こうなったらアンタの財産、食べつくしてやるからね!」

後ろから物騒な言語が聞こえたが、まあ気のせいだろう。
そういいながら俺はダッシュしていた。


ポケットに小さな贈り物を忍ばせながら・・・











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 簡単に・・・
 多分貴明たちは8/31が夏休み最終日だろう!
 と思って書きました・・・
 駄文だ!と思われた方には申し訳無いッス。・゚・(ノД`)・゚・。
 To heart2のSSって難しいのよね・・・
 あと、ポケットのプレゼントはご想像の通りですかね・・・
 決して時間の都合とかじゃないですよ・・・。・゚・(ノД`)・゚・。
 一番気になるのは・・・貴明と由真ってこのような口調でしたっけ?

 最後に・・・由真誕生日おめでとう!!



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