外が騒がしい。こんな朝は記憶にないぞ。
ふと目を覚ますと、見慣れた春原の部屋にいた。

「そういえば、春原と入れ替わったんだな。忘れてたぜ。」

は〜、学校に行きたくないな。










   朋也の春原な日々   第2話









自分でも珍しく朝に起きた。
美佐枝さんに会ったら

「今日は晴天のはずなんだけどね…」

と言って空を見ていた。やはり春原がこの時間に起きるのは珍しいようだ。
いかに春原が堕落しているかが良く分かった。
まあ、俺がこんな時間に起きるのも珍しいが。
とりあえず、朝飯を食って学校に向かった。




登校中、色んなやつに見られた。
まあ、この学校で頭が金髪のやつなんか春原一人だからな。
それにしても、ジロジロ見すぎだ。
朝から気が滅入ってくる。やはり遅刻していくべきだったな。
ちょっとだけ春原に同情してやった。
でも、金髪をやめればいいだけじゃないか?と思いふと考えてみる。
春原が黒髪になったら・・・。金髪じゃない春原。想像してみた。

「はっはははははー」

笑えるな、すげー。思わず大爆笑だぞ。


「何か一人で笑ってるよ、あの人」
「頭がおかしいからじゃない」
「うわー、イっちゃってるね、あの人」


おっと、声に出していたか。さすがにこれ以上目立ちたくない。
コホン、とわざとらしくせきをして、周りを見る。
周りのやつらは視線をそらしていた。

「何かやな感じだな。」

そう思いつつ学校に向かっていた。




学校の前についた。そこに、彼女はいた。

「こんなときに限って何で知り合いがいるんだよ
しかもあんまり会いたくないやつに」

今は人生のどん底ではないか、と今更ながら感じた。そのとおりなんだが。
前にはその女の子が立っていた。その子は桜をずっと見ていた。
彼女の名は坂上智代。この学校の2年生であり、現生徒会長である。
帰宅部であり、学校のおいても浮いている俺にとっては珍しい下級生の知り合いだ。
生徒会長になった後もある程度の関係ではある。
しかし、朋也、いや陽平にとってはそんなことは関係ない。
陽平は智代に過去何度も蹴られており、その場にいつも朋也はいた。
その様子を見ることがあっても、蹴られたことは無い。
今、朋也の脳内では蹴り上げられている自分の姿が浮かんでいる。

「ここは見て見ぬ振りして通り過ぎよう」

触らぬ神に祟り無し。いい諺だ。
そう思い、通り過ぎようと思って彼女の後ろを通り過ぎようとした。
が、その瞬間、ドゴッ、と言う音とともに朋也は吹っ飛んだ。

「何で俺は飛んでいるんだ」

と落ちた地面で思った。地面でピクピクしていると智代が寄って来た。

「すまない、こんな時間にお前がいるのはおかしいと思って
偽者と思いつい蹴ってしまった」

人は蹴るものではない、と教わってないのかよ、智代。
と言いたかったが、いつも蹴られているのを見て楽しんでいたので言えなかった。
痛みで喋れなかった。さらに痛くて動けない。

「おかしいな、いつもならもう復活してもいいんだが…」

そのときチャイムが鳴った。周りにはもう人がいない。

「おい、遅れるぞ」

そういったが、痛みで動けないし…。

「仕方ない・・・坂の上までなら連れてってやる
ありがたく思えよ」




その後、何とかぼろぼろになりながら教室についた。
あの後、智代には引きずられて下駄箱まで連れて行かれた。
ああ、よくこんな日々であいつは生きていられるな。
俺は初日の朝で挫けそうだぞ。そして、いつもどおり席に座ろうとした。

「おっと、間違えるところだった」

危うく『岡崎朋也』の席に座るところだった。
今はいやでも春原陽平だったんだ。どうもこの事実を忘れたくなる。

「未だ来てないのかよ、あいつは」

俺が朝からきてるのに、あいつはまだ睡眠中かよ。
なんだか腹立つな。何かしてやりたい。

「おい、春原。お前にしては珍しく早いな」

担任の声だ。まあ、何か返しとくか。

「そうっすか? たまたまっすよ」

珍しく返されたのか、担任がちょっと驚きの顔だ。

「そうか・・・でも岡崎は遅刻か」

何か腹立つな。でもここで怒っても意味ないし我慢だ。

「じゃあ、ホームルームはじめるぞ。」




その後、春原が来たのは昼直前だった。

「よう、岡ざ…げふ」

とりあえず殴っておいた。

「何でいきなり殴るんですかね!?」

早くも復活した。小声でいった。

「お前今、俺のこと岡崎と呼ぼうとしただろう」
「何言ってるの? いつもの事…あ」

やっと気づいたのかよ。

「いや〜、忘れてたよ」

とりあえずもう2,3発殴っておいた。

「何でまた殴るんですかね!?痛いんですけど」
「すまん、朝に蹴られてそれで鬱憤がたまってたんだ」
「別に僕殴られなくてもいいじゃないですか!?」

春原(見た目は俺)がそういった。
まあ、すまないと思っているぞ。『一応』。

「一応って強調しなくていいですけど!?」

どうやら聞こえていたらしい。

「とりあえず昼飯食いに行くか、『岡崎』」
「そうだね、おか…春原」

心配だぞ、こいつ。

「そういや…親父はどうだった」
「ん?昨日から一度も会ってないよ
そういえば、岡崎、親父さんと仲悪かったな」
「そういうことだ」
「まあ、僕が二人の仲を勝手に改善させておくよ」
「…お前マジで殺すからな。会っても無視しろよ」
「分かりましたよ。人のせっかくのご好意を」
「ああ?」
「何でもないっすよ」




人がいるのは嫌だったので、とりあえず屋上で飯を食うことにした。
・・・このあほがいつ口を滑らすか分からんからな。

「早く人間に戻りたいよ」
「どういうことですか、それ」
「言葉どおりだ」
「それって僕が人間ではないって言ってるもんですよね!?」
「よくわかったな、そういっているんだよ

まあ、よく言って妖怪人間って言うところだな」
あ、泣いてしまった。そう思っていると

「あんた達なんでこんなところで食事とってるの」

げ、何でこんな日に限って杏がくるんだよ。
朝の二の舞は嫌なんだぞ。辞書は嫌だぞ。

「ちょっと、朋也・・・あんたに用事があるのよ」

春原は反応しない。俺が肘で突いてようやく気づいた。

「え? 僕にですか」
「・・・・僕?」

杏が疑いの目を春原に向けた。やばいぞ。

「違うんだよ、杏
こいつは昨日から一人称を僕に変えたんだよ」

無理ないいわけだったな。

「ふ〜ん、何でそんなわけ分からないことしてるのよ」

やばい、このままではばれる。ここは別の話題をしなければ…

「そういえば、杏
お前昨日夕方頃何してたんだ?」
「何で急にそんなこと聞くのよ。」
「夕方に六法全書がすの…俺の部屋に飛んできたんだよ
そんなもん飛ばすやつお前以外に見当たらないからな」
「・・・・・・」

杏が黙り込んでしまった。

「…なんかあったのか? 杏」
「な、何でもないわよ。あははは」
「…はっきり言って怪しいぞ、お前」

そこに春原が乱入してきた。

「そうだぞ、杏のせいでひどい目にあったんだぞ
僕の顔面に命中したんだぞ」
「その後、こいつが飛んできて俺がガッチンだ
まったく最悪な気分だったぜ、危うく病気になるところだったぞ」
「酷いいいようですねぇ!?」
「事実を言ったまでだ」

ある意味今の状況は病気みたいなもんだ。

「・・・・・・」

何か杏が黙っているんだが…。考え事か?

「おい、きょ・・・」

と言おうとしたが視界が真っ暗になった。

「・・・大丈夫か? おか・・・春原。」
「・・・・・・」

大丈夫じゃない、はっきり言って。いったい俺が何したと言うんだ。
しばらくたち、ようやくおきれた。

「おい、杏。何しやがるんだよ」
「・・・・・」

杏は黙ったままだ。そして


「あんた、陽平じゃないんじゃないの?」
「「え?」」

やばい、もしかしてばれた。いやそんなこと無い(はず)。

「何言ってるんだ? お…僕は春原陽平っすよ」

何とか春原調の発言をして見る。

「じゃあ、もうひとつ試してみるわ」

そういった瞬間辞書が春原の顔面にモロ命中した。俺の顔が〜。

「いったい何してくれるんすか、あんたは!?」
「あんた、ひょっとしてあんたが陽平じゃないの?」
「そそそ、そんなこと無いですよ」
「とすると…陽平の姿したあんたが朋也なんじゃないの?」

すげ〜鋭いな、こいつ。

「だって、発言、行動が明らかに違うじゃん。気持ち悪いくらい
あんたら性格とかが入れ替わってるみたいだもの
そういったほうが辻褄が合うわ」

そして、杏は止めとばかりに言った。

「なによりあたしの辞書を顔面に受けて直ぐ復活するのはヘタレの陽平以外いないわよ」
「しくじった。俺にはあんな再生力は真似できない
すまない、俺は人間をやめることは出来なかった」
「あんた本当に人のこと何だと思ってるんですか」
「・・・本当にそうだったのね・・・当てずっぽうで言ったのに」
「「あ・・・・・」」

しまった、墓穴を掘ってしまった。俺の人生は終わった。
春原になったなんて末代までの恥だ。死ぬことでしか償えない。

「あの、ばっちり聞こえてますから
すんごい失礼なんですが」
「そう? その意見には大まかと言うより完全に賛成よ」
「ううう、酷すぎっす・・・」




この後、杏にはこれまでのいきさつを簡単に説明した。
…勿論、辞書が飛んできたことも。

「じゃあ、あたしのせいとでもいいたいの?」
「結果論だよ。お前が別に悪いわけじゃねえよ
でも、辞書を無差別に投げるのはよしたほうがいいぞ」
「うっ…」

結局辞書が飛んできた理由は言わなかった。第一聞けねえし。
(春原がしつこく聞いたら、顔面変形させられてるし…)

「それにしても…」

そういって春原の方を見た。

「何で、そんなことになったのよ?」
「何行ってるんすか!? あんたが辞書を投げるかへぶ」

春原の顔面にまた辞書が…

「あの〜、杏さん。一応私の体なんで
あんまり辞書は勘弁してもらいたいんですが」
「あ、ごめん。ついそんなこと忘れちゃって」

えへへ、と笑う杏。誤魔化すなよ。

「で、どうするの? これから」
「ん? どうするってもな…」

どうにかしたいのは山々だが、どうすることも出来ない。
こんな超常現象がすぐに解決できるならとっくにそうしてるよ。

「まあ、しばらくはどうにかやっていく。
色々不便だが、こればっかりはどうしようもないな。」
「そうなんだ…」
「まあ、出来れば、いや絶対このことは他言無用だからな。」
「う〜ん、どうしようっかな〜。」
「ばらしたら、自殺するからな、マジで。」
「本当に出来るの?」
「じゃあ、もしお前が春原になって、それが全校生徒にばれたらどうする」

しばらく考える杏。そして

「分かったわ・・・他の人には絶対黙っておくわ」

どうやら分かってもらえたようだ。さすがにそう言われれば納得だろう。




「そういえば…杏。何か俺に用事でもあったのか。」
「え?」
「すっかり忘れてたぞ。なんだったんだ、いったい。」
「え、えへへ〜。」
「笑ってごまかすなよ。」

キーン、コーン、カーン、コーン…
もう、昼休みが終わるようだ。

「何でもないのよ。もう昼休み終わるから私行くね。」

そそくさと退散しちまった。
さて、午後の授業はどうしようか。

「あの〜。」

と、聞き覚えのない声が聞こえた。

「そんなありがちなギャグはいいですからね。」

隣の男が言った。

「うお、何で俺がもう一人いるんだ。」
「それでも親友ですか?」
「お前の親友ってサッカーボールだけだろ?」
「あんたが親友なんですよ。
それになんであんな無機物が親友なんですか。」
「すまん、失礼だったな。ははは。」
「全然笑えないんですけど。」
「それはボールに失礼だったわ。」
「・・・モウイイデスヨ。」

諦めたようだ。

「で、結局何にも話進まなかったですよ。」
「杏が来ちまったからな。仕方ない、続きは放課後にするか。」
「そうだな。」
「んで、授業はどうする。」
「僕はここで昼寝する。」
「お前はな…と言いたいところだが、俺も今日は受ける気がない。
だから俺も昼はここで寝てふける。」

そういって午後の授業は二人ともふけた。






朋也たちと別れてからすぐに教室に戻った。

「はあ〜〜〜、まさかあんな事になってるとはね。」

朋也と陽平が入れ替わっちゃうなんて聞いてないよ。
せっかく今日は一大決心してきたというのに…
でも、朋也の秘密を知っているのはうれしい。
好きな人の秘密を知っていることは。

『あの〜僕のことを忘れてませんか。』

…うれしむのはあのヘタレをあの世に送ってからにしよう。
陽平、あたしのために屍になりなさい。ふふふふふ…










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 陽平「終わり方が怖すぎなんですけど。」
 杏「というわけで陽平、死んでもらうわよ。ふふふふふ。」
 陽平「すんごい怖い笑顔ですね。助けてよ、岡崎〜。」
 朋也(ビシッ!)
 陽平「何そんな笑顔で親指立ててるんですか。」
 朋也「グッドヘル(よい地獄を)!」
 陽平「そんなこと笑顔で言わないでくださいよぉぉぉーーーーー。」
 ドゴ、バギ、ゴフ、メゴ、グチャ……
 杏「ふ〜、疲れたわ。」
 朋也「最後の音が気になるんだが。」
 杏「気にしなくていいわよ。」
 朋也「そうだな、春原だし。」
 杏「それにしても…
  この話進み遅くない?」
 朋也「確かに1話で半日しか終わってないじゃん。」
 TK「だって、そうなっちゃうんですよ。」
 朋也「さすがに現国赤点ギリギリだけあるな。」
 TK「そんなことばらさないで。」
 杏「高校で60点満点4点は伊達じゃないわね。
  はっきり言って陽平以下ね。」
 TK「酷すぎるんですけど。それは冗談ですよね。」
 朋也・杏「本気だろ。」「本気よ。」
 TK「うわ〜〜〜ん、もういいですよーー。」
 朋也「あ、どっか行っちまった。つい春原扱いしちまった。」
 杏「まあ、ここのスペース自体不要物だし。」
 朋也「そういうなよ、必死なんだぞ。」
 杏「どういうことよ。」
 朋也「自分の人生削ってるらしいぞ。」
 杏「……どういうことよ。」
 朋也「まあ、今、人生の岐路なんだよ。」
 杏・朋也「・・・・・・」
 朋也「大丈夫なのか?管理人は?」
 杏「まあ、更新だけは止めないでもらいたいわ。」
 朋也「管理人が死ななきゃな。」



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