期末テストが近づいてきた。
いつもなら気にはしないが、さすがに今回はまずい。

「せめて春原の知能を人間並みにまではあげないとな。これならまだ
どっかの動物園にいる天才チンパンジーとかのほうが頭いいって。」
「それって僕の頭はチンパンジー以下って事ですか!?」
「いや、違う。チンパンジー未満だ。同じと言われた
チンパンジーに失礼だな。仮にも天才なんだし。」
「…せめて同等にしてくださいよ。」

俺の人生がますます悪い方向に…
元に戻っていい事あるのかな…
梅雨の合間の青空を見上げながら思った。


「ってあんたもそんなに状況変わらないでしょ。」

杏さん、それは言わないでくださいよ。











   朋也の春原な日々  第4話











2週間前…

「あと2週間か…」
「あと2週間ね…」

放課後、春原の部屋にいた。
ちなみに部屋には俺と春原と杏がいた。
考えていることはもちろんもうすぐある期末テストの事だ。
このテストでの結果が悪ければそれは夏休みの補習逝きになってしまう。
ちなみにここにいる内、杏については問題はない。
何だかんだいっても委員長だ(遅刻はするが)。
成績はそれほど悪くない。というか普通は問題ない。
問題は俺と春原だ。特に春原の危険度は深刻だ。

「とりあえず、最初の一週間でどこまで出来るかが勝負ね。」
「何で一週間なんだよ。まだ二週間あるぞ。」
「あんたたちは一週間で進歩しなければ、あと一週間あっても変わらないわ。
そのときは正攻法以外の方法もしないといけないから。」

正攻法以外の方法はあまり聞きたくないな。

「とにかく二人ともがんばりなさい。せめて赤点は免れなさいよ。特に陽平。」
「何で僕だけなんだよ。岡崎もそう変わらないじゃん。」
「……とにかく一週間死ぬ気で勉強しなさい。もし勉強しなかったら…
手の指を一本ずつプレスしていくからね。」
「「はい、頑張らせてもらいます。」」

俺と春原は一瞬でうなづいた。

「何で今更勉強に励まないといけないんだよ。」
「そう言うな春原。元に戻ろうともどらまいと補習は嫌だろ。」
「まあ、そう考えて頑張ってみますよ。」
「ち・な・み・に一週間後になっても成果なさそうだったら
地獄の特訓あるから安心していいよ。」
「おい、春原。」「ああ…」
「死ぬ気で頑張ろう。」「そうだね。」

二人とも杏の地獄の特訓は嫌だった。




その後の一週間、俺は一応まじめに勉強した。
美佐江さんが勉強しているところを見て一言

「もうこの世も終わりなのかね〜。」

と呟きながら遠い空を見ていた。
どうやら春原が勉強すると世界が終わるらしい。気をつけなければ。
まあ、それでも普通のやつに比べれば少ないもんかもしれないが、
俺にしたらこれまでの人生にやった勉強量に
匹敵するのではという位の量はやった。実際そんな事はないが。
まあ、あとは杏の心の広さにかかっている。
そういえば、ここ一週間春原を見てないがあいつは大丈夫なのか。
多分杏の辞書攻撃怖さにやっていると思うが。
俺も実はそれが嫌でやってるわけだが。




1週間前…
その日、再び春原の部屋に集まるおなじみ3人、
俺と杏と…未確認生物通称UMAこと春原。

「あんた何か猛烈にひどいこと考えてますね。」
「うわ、人語しゃべりやがった。このUMA。」
「今はっきり僕のことUMAといいましたね!?」
「こいつUMAの意味も知ってるぞ。侮れないな。」
「あんたが『未確認生物』言ったじゃありませんか!?」

人の心を読むな、このUMA。

「…ねえ、あんたらやる気あるの。
もし無いのなら私がやる気出させてあげようか。」

と今まで黙っていた杏が話した。
が、明らかに怒っている。持っているコップにヒビ入ってるぞ。
ちなみにコップは持ち込んだものだ。

「「イエ、キアイハイリマクリDEATH。」」
「……そう。じゃあ、はじめるわよ。
ここにある問題集のコピーの問題を解くだけ。分かった。」

俺は頷いた。春原も頷いた。

「じゃあ、ときなさい。そんなに難しくはないはずよ。基本のみだから。」

そして、俺たちは問題を解き始めた。




「う〜〜ん、意外に難しいな。」

基本とはいえ授業をまともに受けず、
この一週間のみしか勉強してない俺には難しかった。
春原はと…あ、もう駄目っぽい。予測どおりだ。
俺よ、ここ一週間の人生最大といえる頑張りを思い出せ。
そして、杏の地獄の特訓を想像しろ。
………絶対嫌だ、嫌だ、嫌だ。
うおおおおーーーーー!!!




約二時間後…

「ふーん、まあこんなもんじゃない。」

俺は自分の頑張りに感動した。

「まあ基本が半分も出来てないけど、
普段の授業を考えればこれでも上出来よ。
まあ、あと残り1週間頑張れば何とかなるわよ。」

ふ〜〜〜、とりあえず杏による地獄の特訓は逃れた。
一方、春原はというと

「………はははははは。」
「…春原、あんたやる気あるの?」

…俺は見てないし、見えないぞ。鬼神のような杏の顔なんて。
春原は全く駄目という出来だった。
しかし、杏の脅迫(?)でも効かないとは…さすが人の枠を超えたやつだ。

「あんたは特訓とかの前に地獄を見せてあげるわ。」
「何であんた片手に4つも辞書持てるのさ。」
「指の間に挟めば可能よ。さあ、懺悔の時間は終わったかしら。」
「そんな時間なかったっすよ。
ぎゃああああぁぁぁぁーーーーー!!」

ドスバキボゴメキ……。
ああ、今日もいい天気だな。

「今日は梅雨空ですからね・・・・・・」

それが春原の最後の遺言だった。




その後、すぐに復活した春原は杏に引きずられどこかに逝ってしまった。
おそらくどこかで地獄の特訓でもするのだろう。
内容は終わったら生きていたら本人に聞くとしよう。
俺も残り一週間頑張るか。ここで赤点取ったら
今はこの世にいないかもいれない名も無き人物の二の舞だ。




テスト3日前…
春原が学校に来ない。
というか最近見た記憶が無い。ま、気のせいか。

「なあ、杏。」
「何よ、あんたはテスト大丈夫なの?」
「安心は出来ないが…それより春原はどうなんだ。」
「陽平はあたしと椋が勉強教えてるわ。まあ、こっちは何とかするわ。」

何か罰ゲームっぽくないんだが…春原の方が待遇よくないか?
この世は真面目なやつは損するのか。

「んで、その春原は今何処にいるんだ。」
「陽平ならうちにいるわよ。」
「そうか…ってそれ凄いことじゃん。
つーかよくそんなこと出来るな。両親とか反対しないのか。」
「まあね、そこは話術で何とか。危うく恋人にされそうになったけど。」
「というか春原を家に置いてきて大丈夫なのか。
何か間違いがあってからじゃ遅いぞ。」
「大丈夫よ、特殊な部屋に閉じ込めておいたから。
マシンガン撃ち込まれても壊れないわね。」

お前の家はどういう環境にあるんだよ。
その部屋の存在意義を知りたいぞ。

「ひょっとすると、最近春原を見ないのは…」
「そうよ、その部屋にずっといるからよ。」

神様、俺は真面目に生きてよかったと今そう思った。




前日…

「明日からいよいよテストか…」

まさかこのやる気がここまで続くとは思ってなかった。
自分を褒めてやりたいものだ。
これもやっぱりあいつの二の舞だけは…という気持ちのおかげである。
今頃ミイラになっているえ〜と、ハルハラだっけな?
そいつのおかげと言えよう。
さて、もう一頑張りしますか。




当日…

「・・・・・・」

朝学校に行くと、見慣れない人がいた。もしかして…

「お前、す…岡崎なのか?」
「そうだよ…」

春原(らしき者)はなんか前会ったときとは別人だった。
まず、顔の形がおかし過ぎる。辞書の跡らしきものがある。
あと手の肉が減っている。何か骨人間みたいだ。
って、今思ったが俺の体だぞ。何してくれるんだよ。
すっかり忘れてたよ。馴染みすぎてるじゃん、俺。

「この一週間どんな生活送ってたんだよ。」
「……聞かないで欲しいっす。」

この世の終わりみたいな顔になってるよ。
まあ、今は聞かないでおこう。

「とりあえずテストお互いに頑張ろう。」
「ソウダネ。」

大丈夫なのか、あれで。




テスト終了後…

「あ〜、終わった。」

まあ、平均はあり得ないが、とりあえず赤点は免れた。上出来だ。
さて…

「おい、岡崎はどうだった。」
「とりあえず、ゲーセンにでも行こうよ。」

駄目だったか。やっぱり脳みそが文字通り味噌ではな。

「そんな人間いませんからね!?」
「人の心を読むなよ。で本当のところどうなんだ。」
「大丈夫だよ、マジで。あ〜、やっとあの地獄から開放されるよ。
あそこの暮らしはもう二度と味わいたくないよ。」
「で、どんな生活だったの。」

聞いた途端、春原が携帯のマナーモード並に震えだした。

「…思い出したくないから、二度と聞かないでください。」

想像以上らしい。これは直接杏に聞くか。

「あ、いたいた。朋也〜、陽平〜。」

とナイスタイミングで杏がきた。これで謎が解けるぞ。

「ひいいいいぃぃぃぃーーーー! きょきょきょ杏ーー!!」

・・・こいつは無視の方向で。

「なあ、杏。」
「何、朋…あ。」

慌てて杏の口を閉じた。

「他のやつが居るだろうが。気をつけろよ。」
「あはは、ゴメン。んで、陽平。何よ。」
「この一週間の地獄の特訓ってどんな内容なんだ。
岡崎に聞いても教えてくれないし。」

聞いてもマナーモードだし。

「あれ? 陽平も一日体験してみる。楽しいよ。」

ブルブル、寒気がしてきた。俺の第六感がそれは危険だと判断したらしい。

「いや、遠慮しておく。」
「そっか、残念ね。
もし今度赤点取ったらやってあげるわよ。」
「激しく遠慮しておく。」

まあ、春原の怯えようからおそらく畜生以下の扱いなのだろう。
絶対お断りだ。




テスト一週間後…

「ふう〜、何とか赤点は逃れたみたいだ。」

全教科テストが帰ってきたが赤点らしきものは無かった。
一部ぎりぎりだったが、良かった。
さて、あのヘタレの結果でも見にいくか。

「お〜い、岡崎はどうだっ…た……。」

春原の結果は…何と全教科平均以上だった。

「おい、岡崎。どんな事やったらそんないい点取れるんだよ。」
「ハハハハ…お…春原もあれを受ければ取れるようになる…
ひいいいいいぃぃぃぃぃーーーー!!!」

どうやら何か思い出したらしい。
もう一週間経つのにまだ忘れないらしい。
こりゃ一生もののトラウマだな。
まあ、無事赤点取らずに済んだのだからいっか。




 〜おまけ〜
その後、授業中にも春原の悲鳴が何度か響き渡った。
そのおかげで『岡崎は精神が崩壊したのでは…』という噂がしばらくあった。











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朋也「それにしても気になるな。」
TK「何がですか。」
朋也「春原への特訓。おい、杏
  実際どういう特訓だったんだよ。」
杏「ふふふふふ、あんたも受ければ分かるわよ。」
陽平「ひいいいぃぃぃーーー!!
  岡崎やめとけ。あの特訓、いやごう…へぼしっ!!」
杏「あんたは黙ってなさい。」
朋也・TK「「・・・・・・」」
杏「ふぅ…全くこのヘタレは。で、内容聞きたい?」
朋也「激しく遠慮しておきます。」
杏「あら、残念ね。」
TK「右に同じく。」
杏「あら、右に居るのは陽平だから
 特訓受けたいのね。じゃあ、来なさい。」
TK「何で古典的な方法で連れてかれないといけないんですか。
  いやあああぁぁぁぁーーー!」
杏「遠慮なんかしなくていいのよ。ふふふふふ。」
ズルズルズルズル
朋也「…どうしよう、一人になっちまった。
  次回の更新は管理人が無事に帰って来れたら…
  ということで。今回はここで終了ということで。」



 〜おまけ〜
杏「ほら、問題解きなさいよ。
 出来なかったら…ケツバットならぬケツ辞書の刑ね。」
TK「嫌ですぅぅ。」
杏「ちなみに夕飯は椋の手作りよ。
 大丈夫よ。陽平で実験済みだから。」
TK「何ですか、実験済みって…」
杏「死にはしないって事よ。
 椋ってなかなか料理上達しないなのよ。
 だからあんたが死しょ…いや試食係よ。」
TK「誰か助けてーーーー!……」



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