無事にテストも乗り切り、後は夏休みを待つばかりになった。しかし、

「春原、岡崎に言っといてくれないか。最近出席数が少ないから
このままだと折角テストがよくても留年だぞ。」

と担任から言われてしまったのでここは
毎度お馴染みである杏による春原への脅し…もとい激励によって
春原は朝から学校に来るようになった。
ちなみに杏に言われた時の春原は凄いビビりっぷりだった。
以前の地獄でも思いだしたのだろう。
俺はこれからの人生、失言には気をつけようと改めて心に誓った。
これであとは夏休みをノンビリ待つだけだ。











   朋也の春原な日々 第5話











  「…と思ったんだがな。」

  何故かもう一つ大きな行事があった。それはスポーツ大会というものだ。
  まあ、名前通りスポーツの大会である。
  つーか去年までそんなの無かった気もするが…
  誰かの陰謀なのではないか?
  テストが終わった後、三年生はいよいよ受験モードであるから、
  ここらでストレスを発散して受験勉強に励まそうという意図があるらしい。
  一方、他の学年は後は夏休みを待つだけという気持ちだから
  授業をやるよりもこういう行事をやったほうがいいだろうと意図があるらしい。
  まあ、分からなくもないんだが…

  「つーか、夏休み終わったらすぐ体育祭があるんだから
  別にこの時期にこんなことやる必要ない気もするんだが…」

  本来ならこんな行事出るだけ体力の無駄なだけだし
  春原を毎日弄り、別に受験勉強もしていない俺は
  ストレス解消する必要もなく、たまったときは春原で解消すればよく、
  こんな行事には出る必要は無く本当はふけるつもりだった。
  しかし、あろうことか名も知らない体育教師が

  『もし、今度のスポーツ大会サボったら体育の単位はやらんからな。
  ちなみに大会の成績がよければ評価もよくするぞ。
  あと、出席にいても試合に出なかったら同じ事だからな。』

  と言ったので仕方なく参加することになった。
  出ることは面倒だが単位を失うのは痛い。
  こんな事で留年するのだけは御免だ。




  さて、どうせ参加しないといけないなら、ちょっとでも楽しまないとな。
  ところで、種目って何があるんだ。
  そういや、今のホームルームの時間で出場種目決めるんだったな。
  まだ時間割も知らないから今が何の授業かも分からない。
  藤林が黒板に男女毎の種目を書いている。
  えーと、女子はバスケとバレーか。

  「まあ、ベタではあるんだが…」

  背の低い子をピンポイントで狙った新手のいじめなのでは?
  で、肝心の男子は…サッカーとバスケか。

  「……誰が決めてるんだよ、この種目は。」

  どうも物凄いピンポイント種目しかないように見えるのは
  やはり俺の気のせいなのか?
  まあ、俺は肩上がんないしここは消去方でサッカーかな。
  ん?待てよ。今更ながら気付いたんだが…
  ヒョイ。と右手を上げてみた。

  「そういや、右肩上がるんだな…」

  今俺の体は春原なのだから当然だった。
  よく今まで気づかなかったな。
  春原は肩上がらない事に気づいているのか。
  だから肩の怪我も無くなっているということか。
  どうせなら春原の不死身の力も受け継いでおいてもいいんじゃないのか?
  どうやらあれはヘタレ精神(?)が無ければ会得出来ないらしい。
  自分がヘタレでないことを知れたのだから良しとするか。
  ちなみにそのヘタレはさっきからずっと隣の席にて爆睡である。

  「おい岡崎、そろそろ起きろよ。種目無くなってるぞ。」
  「んーおか、春原。あと何が残ってるんですか。」
  「あとは智代とのデスマッチか、杏との雪合戦ならぬ辞書合戦の二つだ。」
  「そんなのが学校行事で承認されませんよね!?
  しかもピンポイントすぎじゃないですか。」
  「ドリームマッチというものだ。」
  「っていうか黒板に書いてあるじゃないですか。騙してたんすか!?」
  「まあ、んな事よりお前何出るの? やっぱりサッカーか。」
  「そういう春原はどうするんすか。」
  「んー、サッカーにするつもりだったが、
  折角だし久し振りにバスケでもやろうかと思っている。」
  「そうなんだ。じゅあ僕はサッカー頑張らせてもらうわ」
  「そうだな、記憶は失わないように気をつけろよ。」
  「どういうことですかね、それは。」
  「え、お前ボールとしてサッカーに出場するんだろ。」
  「選手としてに決まってるじゃないですか!?
  何か悲しくて蹴られつづけないといけないんですか。」
  「お前が蹴られてると俺のお前への評価が
  ドンドン上がって俺がホクホクになるんだがな。」
  「下がったままでいいですから!」

  お前の人生は空中で蹴られ続けることに意義があるんだけどな。
  と言いたかったが流石に止めておいた。
  まだまだこの世にいてくれないと困るからな。
  結局俺はバスケ、春原はサッカーを選んだ。




  その日の放課後、屋上で杏と春原で話していた。
  最近はここで話したりすることが恒例となった。
  まあ、春原と杏の3人なら事情も知ってるから気が楽だ。
  内2人は当事者だが…

  「そういや、杏は今度のスポーツ大会何に出るんだ。」
  「ん、あたし? バスケに出るつもりよ。
  そういうあんたたちはどれに出るのよ。」
  「俺はバスケ、春原はサッカーだ。」
  「でも、あんた達当日来るの?
  その日になったら休むとか言うんじゃないの?」
  「大丈夫だ、いくらなんでも留年だけは避けたいからな。」
  「そうだよ杏。僕たちがいくらやる気なし人間だからって
  留年しないくらいのやる気は持ってるよ。」
  「まあ、9割がたは春原の言うとおりだ。
  といっても春原はちょっと前のテストは危なかったよな。」
  「それは言わないでください。あと気になったんですが、
  残りの1割はどういうことですか。」
  「ああ、それは『僕たち』と言ってたが俺とお前が
  セットであることには同意はしないということだ。」
  「それって僕と一緒が嫌ということですか!?」
  「そのとおりだ、杏だって俺の意見には同意してくれると思うぞ。」
  「そんなこと無いですよね、杏さん。」
  「……はあ。」

  ため息を吐いていた。

  「そのため息はどういう意味なんですかね!?」
  「あんたと同等の人間なんて存在しないって事よ。」
  「酷すぎッスよ、その言い方は。」

  あ、拗ねてしまった。メンドイな…

  「ところで朋也、あんたやるなら優勝目指すんでしょ。」
  「何で学校行事なんかで頑張らねえといけねんだよ。
  俺はそんなスポ根みたいな真似はしねえよ。」

  正直出るのも嫌なくらいだ。

  「ふーん、所詮勝ち目が無いからそういうこと言うんでしょ。
  その辺で言ったら陽平以下じゃないの。」

  何か聞き捨てならない事を聞いた気が…

  「俺が陽平以下だって…」
  「だって陽平ならここで『当たり前じゃん』とでも言うのに。
  まあ、陽平以下の朋也には初戦敗退がお似合いなんじゃないの。」
  「言ってくれるじゃないか。」

  待て俺。そんな安い挑発に乗るんじゃない。

  「早々と敗北して陽平の活躍を見てればいいんじゃないの。
  そのときは『真ヘタレ』とでも呼んであげるわ。」

  耐えるんだ俺。

  「見た目もヘタレになってついには中身もヘタレになっちゃったのね。」

  俺の理性はそこで限界だった。

  「てめー、そこまで言うなら優勝してやろうじゃないか。
  それで春原より上と言うことを見せてやる。」
  「うん、分かったわ。じゃあ当日楽しみにしてるわ。」
  「俺の眩しい活躍を待ってることだな。」

  あ〜、結局杏に乗せられてしまった。しかし春原未満だぜ。
  春原と同等にも扱われないと聞いて黙ってられるのは
  人間やめようとするやつのみだ。




  「じゃあ、そろそろ私帰るから。」

  そういって杏は帰っていった。

  「……どうする、これから。」

  杏にあんな事言った手前、実は無理なんて事は言えない。
  それこそ春原以下決定だ。ヘタレ扱いだぞ。

  「とりあえず何かしらしないとな…」
  「あの〜、スイマセン。」
  「ん、す…お前まだ居たのか?」
  「さっきからずっーーと居ましたから。
  あと、人の名前を忘れないでくださいね。」
  「んでシュンゲンはもう帰るのか?」
  「何無理やり音読みで読もうとしてるんですか!?」
  「んでもう帰るのか。俺はちょっと今度の大会のため、
  やることが出来たんだ。」
  「ふ〜ん、こんな学校行事で頑張るなんて
  岡崎もつまらない人間になったね。」
  「別に…お前以下の人間に成り下がるくらいなら
  まだつまらない人間のほうがマシなだけだよ。」
  「どういう意味ですか!? それって。」
  「ご想像に任せるぞ。」
  「もういいです。僕も帰りますわ。」

  何か俺だけ頑張るのもやってられないよな。
  ここらでこいつをはめれないか。

  「そういや春原、俺と杏の会話聞いてなかったのか。」
  「まあね、こっちは傷ついてたから。」

  お前が傷つくよ事は無かったけどな。

  「そうなのか、実は杏が『もし陽平が優勝を逃したら
  コンクリ詰めで湾に沈めてあげるわ♪』とか言ってたぞ。」
  「マジっすか!!」
  「ああ、もう満面の笑顔で言ってたぞ。
  『あ〜、陽平を沈める日が楽しみだわ』って。あれは俺も怖かったぞ。」

  勿論嘘だが。だが若干本当だ。
  以前春原をコンクリ詰めにしてみたいといってた気がする。

  「じゃあ、僕も特訓しようかな。僕なら大丈夫だと思うけど
  万一のことがあると死んじゃうからね。」
  「そうか…じゃあ頑張るか、春原。」
  「おうよ、岡崎。」
  「とりあえず俺たちは体力が無いから体力増強から始めよう。」
  「分かったぜ、岡崎。」

  よし、これで春原という生贄も出来た。
  こうして俺と馬鹿一人のスポーツ大会までの
  短いトレーニングが始まった。










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 朋也「行くぞ、春原。」
 陽平「ああ、岡崎。」
 朋也・春原「うおおおおぉぉぉぉーーーーー!!」
 TK「…何か凄い気合入ってますね。
   やっぱり春原以下というのが嫌なんでしょう。
   って一人になってしまいました。」
 ことみ「こんにちわなの。」
 TK「あ、ことみちゃんではないですか。」
 ことみ「お久しぶりなの。ずっと研究してたから。」
 TK「そうですか、それでどうなんですか。
   岡崎くん達は戻れるの?」
 ことみ「…?何のことなの。」
 TK「あなた何の研究してたんですか!?」
 ことみ「冗談なの。」
 TK「……」
 ことみ「なんでやねんって突っ込むところなの。」
 TK「冗談でしたか。」
 ことみ「???」
 Tk「いや、首傾げられても…」
 ことみ「まだまだなの。」
 TK「岡崎君たちが戻るのが。」
 ことみ「そうなの。ということで
    もう少し堪能してもらうの。」
 TK「堪能はしてるよ…彼らは。」
 ことみ「では忙しいからこれでさよならなの。
    管理人さん…また来世。」
 TK「キャラ違ってるよ!? それ。
   という訳で(?)次で会いましょう。」



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