すぐにトレーニング始めることにした。

  「じゃあ、まずはランニングからするか。」
  「面倒じゃない。」
  「春原、コンクリ詰…」
  「行きましょう、岡崎。」

  それだけは嫌らしい。

  「よし行くか。」

  そうして俺達はランニングに行った。










  朋也の春原な日々 第6話









  「はあ、はあ、はあ、」

  春原の部屋で息を切らしていた。
  これほど体を動かすことが大変だったとは…
  ちょっと走っただけでこの通り、スタミナ切れだ。
  やはり高校生活での不摂生な生活が影響しているのだろう。

  「というか春原の姿で走っているんだから
  こんなに体力が無いのは春原の体にスタミナがないせいだ。」

  俺のせいではないという事にしたので少し安心した。
  ちなみに春原は俺の半分くらいでへばっていた。
  そりゃあ俺の体のスタミナがないってのも多少はあるが、
  それ以上にあいつの根性がない事が大きい。
  なんてったってヘタレだからな。もし根性あったらヘタレとはいえない。
  そして、春原とも呼べない。俺の知っている春原はそういうやつだ。




  しばらくしてヘタレ春原が戻ってきた。

  「春原やっぱお前根性無いな。あれ位頑張れよ。」

  もちろん本心は別に頑張ってもらう必要は無いんだが。

  「あんたね…あれ位って
  片道5キロ近くの距離走ったんですけどねえ!?」
  「何言ってるんだよ、俺も同じ距離走ったじゃないかよ。」
  「あんた帰り道は自転車で走ってましたよね!?
  あんなものいつの間に用意してたんですか。」

  実は以前あの辺りに放置してたことを思い出しただけだった。
  鍵がかかって無いのによく残ってたな。

  「ちっ、ヘタレの癖に細かいこと気にするなよ。
  あ〜、春原、ポカリ買ってこいよ。」
  「何さにげなく人のことパシリ扱いしてるんですか!?」
  「買ってこいって言ってるだろ!」
  「何でそんな理不尽なキレ方されんといけないんっすか!?」
  「お前が早く買ってこないからだろ!」
  「だから何で買ってこないといけないんっすか!?」


  どどどどどど・・・・・


  ガチャ


  「うるせんだよ、てめえら。」

  あ、ラグビー部が来ちまった。

  「どっちがうるさかったんだ。」
  「こっちの春原っす。」

  そういって俺に指差した。

  「……」

  俺は無言で春原に指差した。

  「…お前来い。」

  と言って引きずられていくのは俺の姿をした春原。

  「何で今日はぼ、俺なんですか!?」

  ビックリ顔の春原。見ていて面白いが
  俺の顔で…というところがマイナスだ。
  やはりあれは春原の顔でこそいいものだ。

  「俺たちの本能はお前だ、と告げている。
   諦めておとなしく引きづられろ。」
  「ちょっと、助けてよ、お…春原。」
  「……」

  少しの無言のあと、右手を突き出し親指を上げた。

  「グット、ファイト!」
  「何そんな爽やかな顔で送り出そうとしてるんですか!?
  うわああああぁぁぁぁーーーー!!」

  春原はラグビー部とともに逝ってしまった。

  「成仏してくれ、春原。」

  そう祈った。おっと、重要なことを言い忘れてた。

  「でも、俺の体はちゃんと残しておけよー。」

  遠くから「アンタ自分勝手っすね!?」という戯言が聞こえてきた。




  30分ほどして春原が戻って来た。
  ちなみに外傷らしきものは見当たらない。さすが規格外。

  「おかしいでしょ、この結果は。」

  それが春原の生まれて初めての人語だった。

  「ってそのナレーションは明らかにおかしいですからね!?」
  「冗談だって、ほんの少しだけは。
  んで何がおかしいんだ? いつも通りの展開だったぞ。
  おかしいことなんか何も 無かったぞ。
  お前が可笑しく面白いのもいつも通りだしよ。」
  「あんた人の事なんだと思ってるんですか!?
  そうじゃなくて僕が言いたいのは何で僕の姿をしている岡崎じゃ無くて
  岡崎の姿をした僕が連れてかれたってことだよ。
  いつものパターン考えてみてよ。」

  いつものパターンか……

  「はははっはははっは。」
  「何がそんなに面白いんですかね!?」
  「すまん、お前の屍が思わず浮かんでしまってな。」
  「僕ちゃんといつも生きてますからね!?しかも
  死んでるのに笑ってるんですか。あんたとんでもない人ですね!?」
  「分かってるよ、春原。死んだら
  ちゃんと香取線香の一本くらいはあげに行くから。
  これで蚊もよってこないだろ。」
  「そんなのならいりませんから。
  そうじゃなくていつも通りなら
  僕の姿したアンタが連れてかれるでしょう。
  その後の想像はしなくていいんですから。」
  「大体そんなの俺が知るはず無いだろ。 本人たちに聞いてくれよ。」
  「さっき聞きましたよ、地獄の直前に。」

  よく聞ける余裕あったな、俺なら無理だ。やはり場数が違うな。

  「そしたら『俺には分からん。今日は珍しくお前が悪く感じたんだ。』とか
  言われましたよ。どういうことか分かるか、岡崎。」
  「そうだな…」

  まず最初にばれている事も考えたが会話した限りそんな感じは無い。
  仕方ない、ここは…

  「春原、もしかするとお前が凄すぎるのかも知れないぞ。」
  「どういうこと?」
  「お前からは特別かつ偉大なオーラが放たれているんだよ。
  だからあいつらは無意識でお前と分かったんだよ。」
  「そ、そうなの?」
  「つまり、お前が隠してるつもりでもやっぱりオーラが出てるんだよ、
  お前は大物すぎるからな。
  だからあいつらの奥底ではお前が春原と分かってたんだよ。」
  「何かよくわかんないけど僕って凄いって事。」
  「そうだ、お前が人の枠に当てはまらない大物だからだ。
  あいつらもお前ばかり殴るのはお前という天才への僻みなんだぞ。」
  「そうなんだ、じゃあ仕方ないことだね。」
  「なあ、天才。俺にジュース買ってきてくれよ。」
  「しょうがないな岡崎も。この天才が買ってきてあげるよ。
  種類とかは何がいい。」
  「なんでもいいぞ。天才の買ってくるジュースなら。」
  「それじゃあ行ってくるよ。」

  そういって春原はご機嫌な様子で買いにいった。

  「…単純だなあいつも。」

  そう思った。やはり思考も規格外だったようだ。
  



  次の日の昼休み、筋肉痛で動けない春原を置いて屋上に行った。

  「そういえばあんた達、昨日何か走ってなかった。」

  そう杏が聞いてきた。

  「ああ、今度の大会で優勝したいからな。自主トレだよ。」
  「…あんた、学校の行事如きでよくそんなに頑張れるわね。」

  春原未満の扱いとか言われたら誰だってやるわ。
  そう考えれば元凶はお前だぞ、杏。

  「んで、あんたは分かるけど何で陽平まで走ってたのよ。」
  「俺だけやるのは嫌だからな。あいつにも強制参加させたんだよ。」
  「よくあのヘタレにそんな事巻き込んだわね。どうやったのよ。」
  「ん…まあ秘密だ。」

  間違っても杏をだしにしたなんて言えない。命に関わるからな。

  「そんなことより昨日は面白いことあったぜ。」

  そういって昨日のラグビー部との出来事を話した。




  「…んで、あいつそんな事信じたの。」
  「おう、もう完全に信じたぜ。まあ、嘘は言ってないからな。
  ほぼ真実だからな。」
  「特別かつ偉大なオーラって。」
  「あいつのヘタレオーラの事だ。
  あそこまでのヘタレオーラ、ある意味特別かつ偉大だろ。」
  「人の枠に当てはまらない大物ってのは…」
  「文字通りだ。あいつは人外の生物だからな、
  少なくとも人の枠には入ってないだろ。」
  「…じゃあ天才ってのは。」
  「ヤラレ、復活の天才だろ。」
  「…あんた凄いわ。ホラでもそんな事言えるんだから。」
  「まあそう言うな。あいつもおかげで浮かれてるんだからよ。」
  「真実知ったら落ち込みそうだわ、あいつ。」
  「まあ春原だし…気にするなよ。」
  「そうね、そんなことよりあんたは自分の心配をするべきね。」

  ん? 杏からなぜか殺気が…

  「どういうことだ、それは?」

  冷汗が出てきたぞ、鳥肌も立ってきた。
  俺の本能が死の危険を訴えている。

  「あんたどうやって陽平をたぶらかしたか聞いてないけど。」

  笑顔で辞書を持っている。

  「え〜っと、それはですね…」

  逃げるか? 三十六計逃げるにしかずって言うし。

  「あ、逃げるなら最後の言葉考えときなさいよ。」

  ……逃げることは無理そうだ。




  その後、素直に吐いた俺は顔面辞書5発の刑に処せられた。










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 朋也「進行がまた遅くなってきたな。」
 杏「やる気あるの。」
 TK「ボリュームはそんなには減らしてないよ。
   あと、あんまり早く進行させようとすると
   陽平を弄れなくなるからね。」
 朋也・杏「じゃあ仕方ないな。」「仕方ないわね。」
 陽平「仕方無くないですからね!?」
 TK「陽平…やっぱあなたが弄られてないと
   出来ないんですよ、SSが。」
 陽平「そんな理由ですか!?」
 TK「このSSの半分はあなたによって出来てるんですよ。」
 陽平「そんな…褒めなくても。」
 TK「褒めてはないですね。」
 朋也「褒めては無いぞ。」
 杏「褒めてないわよ。」
 陽平「3人一緒に言わなくても…」
 朋也「次回はいよいよ大会なのか?」
 TK「違います。」
 杏「次々回はどうなの。」
 TK「そこまでは分かりませんよ。」
 杏「はっきりしないわね…」
 朋也「そういえばお前さ…」
 TK「なんですか?」
 朋也「春原の呼び方ころころ変わってるよな。」
 TK「誰も陽平の呼び方なんか気にしていませんよ。」
 朋也「そうだな…」
 TK「では次に会いましょう。」



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