姫百合姉妹の新しい日常アフターストーリー 第1話
『今年もよろしくな貴明!』
『こちらこそ、よろしく』
……あの時から一年後。
本来なら、高校を卒業するはずだった俺は、まだ、高校生活を送っていた。
「今日から、四年目の学校生活か……」
学制服を着ながら、呟く。
着替えが終わると同時に、玄関からチャイム音が鳴り響く。
瑠璃ちゃんと珊瑚ちゃんかな?
そう思いながら玄関に迎う。
玄関の扉を開けると、予想通り珊瑚ちゃんと瑠璃ちゃんが居た。
そして、このみも眠たそうだがちゃんといた。
「る〜〜☆」
「貴明まだ準備終わってなかったん!?」
「タカくんおはよー」
「おはよう。皆相変わらず朝から元気だね」
「これくらい当然や。貴明が元気無いだけや」
「まぁ……確かに、寝起きだから眠いね」
「まったくこれやから男は……」
「面目ない」
「まぁ……貴明の準備が遅いんは前から知っとるからええけど」
「なぁ貴明ー、服着終わってるんなら、はよ学校行こ〜」
「じゃあ鞄持ってくるから、待っててね」
珊瑚ちゃん達にそう言って、鞄を取りに行く。
「なぁなぁ貴明、ウチら皆、同じクラスになれたらええなぁ」
準備が終わって、学校の玄関にて掲示板に展示されているクラス表を見ていると、珊瑚ちゃんがそう言ってくる。
「まぁ……一緒になれたらいいよね」
まずはA組を見てみる。
「こ行……河野……A組にはないな」
続いてB組を見る。
…………あっ、小牧の妹とこのみがB組だ。
「あ!このみと郁のん一緒のクラスだぁ」
このみと郁乃がB組か……。
「って事は……後はC組のみだから……」
俺がそう思った直後だった。
「あ〜、ウチと瑠璃ちゃん、貴明と一緒のクラスやぁ〜☆」
隣では珊瑚ちゃんがかなり嬉しそうに喜びを表現している。
瑠璃ちゃんも微笑んでいた。
「べ、別に貴明と一緒のクラスになれて嬉しいんのはさんちゃんやん。
ウチは別にどうでもええもん」
そんな俺の視線に気付いたからだろうか、瑠璃ちゃんは頬を赤くしながら言った。
まぁ……そう言われるとは思ったけどね。
「ほんまは瑠璃ちゃんも大喜びなんやろ?」
「さんちゃんそんな事言わへんでえぇ!」
「瑠璃ちゃんが怒った〜〜」
この会話だけは変わんないな……。
そう思いながら、俺達は教室に向かった。
「貴明〜〜」
放課後、新しく配布された教科書を鞄の中に入れていると、
珊瑚ちゃんが突然後ろから抱きついてくる。
「うわ!いきなり抱きついたら駄目だってば」
「えぇ〜あかんの?」
「当然やんさんちゃん……。此処学校なんやから皆見てるやんか」
「別にウチは皆見てても平気やけど〜?」
「さんちゃん……貴明は駄目やと思う」
「うぅ〜瑠璃ちゃん意地悪やぁ……」
そう言いながらも、珊瑚ちゃんは俺を解放してくれる。
皆からの視線が恥ずかしくて死にそう……。
「ほら、一緒に夕飯のお買物行こ貴明、さんちゃん」
「了解やぁ〜☆」
「また俺は荷物持ち?」
「当然やん」
予想通りの返事が返って来たな……。
そう思いながら、俺たちは商店街に向かった。
「後は……もう無いなぁ。貴明これも持ってな」
「ほい……」
瑠璃ちゃんから買い物袋を受け取る。
「なぁなぁ瑠璃ちゃん、今日は何作るん?」
「今日?今日はさんちゃんの好きなカレーや」
「やたー☆」
そんな会話を交わしながら、俺たちは商店街を後にした。
「ただいまー」
「お帰りなさい瑠璃様、珊瑚様、貴明さん」
姫百合家にあがると、イルファさんが俺達三人を迎えてくれる。
「いっちゃんただいまや〜☆」
「ご飯作るから、イルファと貴明はさんちゃんと遊んでて」
瑠璃ちゃんは、制服の上からエプロンをいつのまにか着け、料理の準備をしていた。
するとそこに、イルファさんが手伝おうと動く。
「あっ瑠璃様、料理なら私も手伝います」
「あかん、今日はウチが料理作るから、さんちゃんと遊んでて」
「はいっ……」
イルファさんは、名残惜しそうに瑠璃ちゃんを見ていた。
「瑠璃ちゃんの意地っ張りは相変わらずだね」
俺は、瑠璃ちゃんに聞こえないようにし、珊瑚ちゃんに言った。
すると珊瑚ちゃんは首を傾げながら言った。
「でもぉ瑠璃ちゃん、前より随分素直になってへん?」
「前って……どのくらい珊瑚ちゃん?」
「うーんとなぁ、ウチと瑠璃ちゃんといっちゃんが貴明達とお花見した頃やぁ」
あぁ……あの時のか。
あの時は皆、雄二が持ってきた酒に酔っ払ってたっけ?
「あの時の花見楽しかったね」
「ほんまやなぁ〜☆」
俺達があの時の花見話をしていると……ふいに瑠璃ちゃんが料理を並べながら言った。
「あっ貴明の話しで思い出した!」
「なにを思い出したん瑠璃ちゃん?」
瑠璃ちゃんは思い出した事を嬉しそうに言った。
あれ……!?そういえば、あの花見の日、瑠璃ちゃんとなにか約束したような……?
「その日にウチな、貴明とまた来年もお花見しようなって言ってたの忘れてたんや、貴明
またお花見せえへんか?」
思い出した……そういえば、またお花見しようって瑠璃ちゃんと約束してた。
「やた〜また貴明とお花見やぁ☆」
「勿論大丈夫。
珊瑚ちゃんのおかげで瑠璃ちゃんとの約束思い出せれたよ、有難う」
珊瑚ちゃんにお礼として、頭を撫でることにした。
「えへへ〜そんなんええよぉ」
珊瑚ちゃんは嬉しそうに微笑んだ。
「じゃあ先にご飯に食べよ珊瑚ちゃん」
「了解やぁ」
「あっ、ご飯出し忘れてもうた」
「瑠璃様、それでしたら私が代わりに」
「ん、任せるでイルファ」
「はいっ」
「なぁなぁ瑠璃ちゃん、お花見何時するん?」
イルファさんがご飯を盛ってる間に、珊瑚ちゃんが瑠璃ちゃんに聞いてくる。
「明日は休みやから、前と同じで十二時でええんとちゃう?
それに昨日、あそこの公園の桜の木がテレビで宣伝されて綺麗やったやん」
「そうなん!?楽しみやぁ〜」
「明日か……起きれるかな」
「貴明が起きへんかったら……強引に起こすから安心せぇ」
瑠璃ちゃんが腕を立て、瘤を出す真似をする。
「お待たせしました」
と、そこにイルファさんがご飯を持ってくる。
「ん、ありがとなイルファ」
「いえ、これが私の仕事ですから」
「ほな、食べよ〜」
「うん、そうだね」
さっそく俺は、瑠璃ちゃんが作ったカレーを食べてみる。
「……うん、相変わらず瑠璃ちゃんのカレー美味しい。
また腕あげたんじゃ?」
カレーを食べながら瑠璃ちゃんに言う。
「カレー粉替えただけやけど、貴明はこれがええんか、さんちゃんはどうなん?」
「瑠璃ちゃんのカレーめちゃ美味やぁ〜☆」
珊瑚ちゃんは至福の笑顔を表現しながら、カレーを食べていた。
「貴明ゲームしよ〜」
皆でご飯を食べ終えて、イルファさんが瑠璃ちゃんの代わりに皿洗いしてると、珊瑚ちゃ
んが今流行のP○3を持ってきていた。
「さんちゃん今日はなにするん?」
瑠璃ちゃんも楽しそうに珊瑚ちゃんに聞く。
すると珊瑚ちゃんは、それはもう幸せそうな笑みを浮かべながら言った。
「おっちゃんがウチに作ってくれた、ゾンビバンバン撃ち殺すゲームやねん。
P○3やからすっごくリアルやぁ!」
ゾンビに反応したのか、瑠璃ちゃんの表情が一瞬に凍り付く。
「あーうー!!
さんちゃんそれウチ嫌いーー」
「それやったらぁ……貴明と一緒に見れば大丈夫や」
「なんでっ?」
「瑠璃ちゃん、恐くなったら貴明に抱きついて、励まして貰えば我慢できるやん☆」
瑠璃ちゃんは一瞬俺を見る。
あぁ……エスパーじゃないけどこの後、瑠璃ちゃんの行動が手に取るように解る……。
「貴明のぉ……スケベェー!!」
瑠璃ちゃんのキックが見事に俺の顔面に直撃。
意識がブラックアウトする寸前に俺は思った。
……瑠璃ちゃんは前より変わったって?
前言撤回、瑠璃ちゃんは変わっていません……。
次回へ続く。
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