Reunion
『兄さんっ!やだっ!……消えちゃ、やだよ!!』
『由夢!俺は必ず未来を変えて……!』
『兄さんっ!いやぁぁぁぁっ!!』
あの時から二ヵ月後―――。
枯れない桜は花を散らしてしまったが、春を迎えると、樹々に再び咲き始めていた。
そんな枯れない桜の木の下に、あの日、消えたはずの桜内義之が倒れていた。
倒れている義之の顔に桜の花びらが舞った。
「ぅ……」
それと同時に桜の花びらが義之を起こしたかのように、義之が目を覚ます。
「……戻ってこれたのか?」
「ようやく気が付いたか」
義之の背後から声。
反射的に背後を振り返る義之。
そこには杉並が薔薇を片手に、枯れない桜の木に寄り掛かっていた。
「杉並……なんで此処にっ……」
杉並は義之の制服の胸ポケットに向け、薔薇を投げる。
その薔薇は見事に義之の制服の胸ポケットに入る。
「桜内よ、そんな事よりも、こんな所で道草をしていていいのか。
朝倉妹はまだ学園にいる、早く迎えに行くがいい」
義之が腕時計を見る。
既に終学活が終わっている時間だ。
だが今、義之は杉並がどうして義之と由夢の関係に気付いているのかが気になっていた。
「杉並……気付いてたのか?俺と由夢の関係に」
「ふっ、非公式新聞部に見抜けぬ事は無い。
早く行かぬと朝倉妹が帰ってしまうぞ」
義之が杉並に薔薇を投げ返す。
杉並はその薔薇を受け取る。
「ありがとな……」
「礼などいらん、あまり恋人を悲しませるな」
「あぁ」
義之は走りだした、大事な妹、もとい恋人が居る学園に。
「ようやく……奴も一人前か」
「ハァ……ハァ……、由夢……こんな時間帯じゃもう帰ってるか」
義之は、教室からこの校門が見える門柱に寄り掛かる。
「そういえば……前に由夢がこの門柱に寄り掛かって俺を待っていたっけ」
――今回は逆だな。
義之がそう思いながら、ふと玄関を見ると……。
一人の女子生徒が義之に向かっていた。
髪の両側にお団子。
その女子生徒は間違いなく、義之が待っていた……朝倉由夢であった。
「由夢……」
――未来を替えれたぞ由夢。
義之は軽く由夢に手を振る。
由夢は大きく両手をを広げて駆け寄りながら、義之に叫んだ。
「おかえりなさい、兄さんっ!!」
由夢は瞳に涙を貯めながらもその勢いのまま、義之に抱きついてくる。
「ばかばかばか、兄さんのばかっ!ずっと心配してたんだからぁ!」
「あぁ……馬鹿だな、恋人を悲しませるなんてな」
義之は由夢を抱き締め返し、由夢を強く抱き締める。
二度と由夢を離さぬように……。
「兄さんっ……」
二人は二ヵ月会えなかった寂しさを取り戻すかの様に長く長く抱き合い続けた……。
「大体兄さんってば、こんなに可愛い妹を待たせすぎだよっ!」
あれから暫らくし、由夢と義之は桜公園にて、由夢の提案でクレープを食べにきていた。
「やっぱり兄さんってジャンケン弱いよね〜」
由夢は、両手にクレープを握りながらベンチの隣で至福の表情を浮かべていた。
右手にストロベリーアイス。
左手にフレッシュラズベリー。
二つ共出費したのは義之だが、またジャンケンで負けた義之は、由夢に二つ共消費されて
しまったのだ。
義之はそんな由夢を見つめながら、自分の掌から出した和菓子を食べている。
「兄さんって毎回チョキで負けるよね、やっぱり無意識にしてるんじゃないの?」
「な、なにを言うかわざと負けてやってるんだ」
「あっ……ふふっ兄さんってば」
突然苦笑する由夢。
義之はそんな由夢を見ている。
「ねぇ兄さん……これからもずっと一緒なんだよね?」
義之は由夢を見る、そして桜が舞い続ける中、その小さな手を握り締める。
「あぁ……ずっと一緒だ由夢」
二人を包み込む桜がまるで祝福する如く吹き続けていく……。
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