一年後のお花見
俺が珊瑚ちゃん、瑠璃ちゃんと付き合い始めて一年になろうとしていた……。
春休みも残り二日になって、珊瑚ちゃん達の家に居候していたある日のこと……。
「なぁなぁ貴明、明日ウチらと一緒にお花見せぇへん!?」
「お花見!?」
突然珊瑚ちゃんがお花見しない?って言い出した。
「お花見かぁ……いいよ。」
俺がそう言うと。
「やった〜!!貴明とお花見や〜」
嬉しそうな笑顔を浮かべる珊瑚ちゃん。でも、瑠璃ちゃんは反対って言うよなー多分
「瑠璃ちゃんも、ええやろ!?」
「……うん、貴明来てもええよ。」
あれ?、瑠璃ちゃんが反対って言わない、珍しいな。
「貴明、お花見なぁ、このみ達も誘ってなぁ」
「う〜ん、いちよう誘っておくよ」
「ちなみに、花見は昼十二時公園でするんやで貴明。遅刻したら……貴明、飯抜きやで」
「……絶対遅刻しません」
「冗談や、貴明」
……瑠璃ちゃんが言うと冗談に見えないのは俺だけでしょうか……。
その後、俺は明日のお花見の準備をするために、自分の家に帰ることにした。
そして、準備をすました俺は、最初にこのみの家に電話することにした。
「はい、柚原です。」
電話に出たのは春夏さんだった。
「あ、貴明です。このみいますか?」
「このみ!?ちょっと待ってね。」
「はい。」
数分後……電話機からこのみの声が聞こえてくる。
「タカくん!?どうしたの?」
「このみか、急なんだけどさぁ、明日暇か?」
「え!?暇と言えば暇だけど……」
「実はさぁ、珊瑚ちゃん達とお花見しようって誘われたんだ」
「お花見?タカくん、いいなぁ〜」
「それでさぁ、珊瑚ちゃん達にこのみ達も誘ってくれって言われたんだ」
「うん……」
「もしよかったら、一緒に行かないか?花見に。もちろん、雄二やタマ姉も誘ってさ」
「うん!行く行く!何時に何処に集合するの」
「公園に十二時集合」
「うん、わかった。あ、タカくん、ユウくんとタマお姉ちゃんの家に、私が電話してもいい!?」
「別にいいけど……」
「ありがと〜。じゃあ、明日、楽しみにしてるね」
「ん、わかった。寝坊はすんなよ〜」
そう言って、電話を切る。
「しっかし、なんでこのみがタマ姉と雄二の家に電話をしたがるんだ?」
……まぁ、別に気にしなくてもいいか。
そして、約束の日が来た。花見は十二時からという約束だから、それまでは適当に時間を潰していた。
時刻は十一時四十分。そろそろ、珊瑚ちゃんか、このみが来る頃かな……。そう思っていたら。
ピンポーン
チャイムが鳴ったので、玄関まで行き、ドアを開ける。
「る〜〜☆」
「迎えに来たでぇ」
玄関の先にいたのは、珊瑚ちゃん、瑠璃ちゃんだった。
「貴明、早よ行こ」
「早く行くで」
俺達は公園に向かって歩き出した。
公園には既にイルファさんやこのみ達が待っていた。
「あ、タカくん達やっと来た〜」
「待たせちゃったかな?」
「ううん、今来た所だよ」
「そっか」
「それでは、準備しますので少しお待ちください」
そう言ってイルファさんは持って来たシートを地面の平らな辺りに敷いた。
シートの大きさは、俺達全員が座るには十分な広さだった。
「あれ?このみ、タマ姉、呼んだんじゃあなかったのか?」
「えっと、ユウくんが、タマお姉ちゃん、まだ九条院にいるから来れないって」
「なんだぁ貴明、姉貴がいなくて寂しいのか?」
「そ、そんなんじゃないって、タマ姉がいないから変だなって、思っただけだよ」
「皆さん、準備が出来ました」
イルファさんがそう言ったので適当に腰を下ろして、持ち寄った食い物を広げる。
「おい雄二、あんまり珊瑚ちゃん、瑠璃ちゃんに酒飲ませるなよ。酔うから」
「わかってる、貴明はどうする」
雄二が酒を俺に差し出してくる。
「じゃあ、貰おうかな」
雄二から酒を受け取る。
「貴明も飲みすぎんなよ。あんまりアルコールに強くないんだからよ、アル中でぶっ倒れるなよ」
雄二がからかう。
「雄二こそ、アル中になんなよな」
そんな下らない会話を交わしながら、俺達は思い思いに食い物に手を付け、飲む。
これじゃあ、俺達、花より団子だな……。そんな事をふと思った。
そして、俺達の馬鹿騒ぎは止まること無く、時間だけが過ぎていった。
あれから何時間経っただろう?
皆が持って来た食い物は既に底を尽き、今俺の隣には瑠璃ちゃんが座っている。
「貴明……皆寝ちゃってるなぁ」
「……そうだね」
このみと珊瑚ちゃんは雄二に酒を強引に勧められて『一本だけ』と言って仕方なく飲んだら、
見事に酔っぱらい、ぼーっとしている。
雄二は、酒の飲みすぎで自滅。哀れな奴。
イルファさんは、酔っているこのみ、珊瑚ちゃん、雄二のために水を買いに行っている。
瑠璃ちゃんは……全然酔っているように見えない。瑠璃ちゃんって酒に強いのかな!?
俺は自分のペースで飲んでいた。そのせいか、酔い潰れたりしないで花見をすることができた。
「……貴明、桜綺麗やね」
桜を見ながら瑠璃ちゃんが呟いた。
「うん、そうだね」
「今日は貴明と一緒に花見来れて良かった……」
風に揺れる自分の髪を手で押さえながら、桜を見詰める瑠璃ちゃんが可愛かった。
「また来年も皆で花見しような、貴明!」
「うん!約束するよ。俺も瑠璃ちゃんと一緒にまた花見したいからね」
そして、俺と瑠璃ちゃんは桜が舞い続ける中、唇を重ねた。
「約束やで、貴明……」
桜の花びらが俺と瑠璃ちゃんを包み込むように、花びらが舞った……。
四月八日。
長かったようで短かった春休みは昨日で終わり、始業式の朝を迎えた。
俺達は、校門に張り出されているクラス表を見ながら呟いた。
「……また一緒のクラスかよ」
雄二が呟く。
「ああ、頑張ろうぜ……」
また、雄二と一緒のクラスかぁ、いつまでこの更新記録は続くんだ?そう思っていると。
「貴明〜☆」
俺の背中に抱きついてくる珊瑚ちゃん、その後ろには瑠璃ちゃんもいる。
「なぁなぁ貴明、今回はこのみも一緒のクラスやぁ〜」
「へ〜、このみと仲良くしてやってくれよな」
「もちろんやぁ〜」
久しぶりに手を高く上げる珊瑚ちゃん。
「貴明!」
珊瑚ちゃんの後ろにいた瑠璃ちゃんが話し掛けてくる。
「今年もよろしくな貴明!」
「こちらこそ、よろしく」
また、春が来た。
これから始まる珊瑚ちゃんと瑠璃ちゃんとの新しい一年。学年は違うけどね。
俺の側で微笑む瑠璃ちゃんと珊瑚ちゃん。二人の微笑みがいつもよりも眩しく見えた。
頂き物展示ルームに戻る
どうも、sibaharaです。
SSを見てくださいまして、ありがとうございました。
実はこの一年後のお花見がToHeart2のSSを書くのは初めてです。上手く書けたのか心配で
すが、楽しくこのSSを見てくれれば、幸いです。
それでは、このSSを最後まで読んで下しまして、ありがとうございました。
この話と姫百合姉妹の日常は繋がってますので、そちらも宜しく致しますね。
<管理人の一言>
いつ読んでも、sibaさんの瑠璃ちゃんは可愛すぎるぜ!
タマ姉が来てない理由というのも気になりますね…
それにしても、貴明と雄二が違うクラスになるって想像できないですね。
珊瑚ちゃんと瑠璃ちゃんとこのみが同じクラス…何ともにぎやかになりそうです。
こうSSを読んでると、うちも頑張らねば!と思います。(そして挫折)
感想、誤字等については掲示板にお願いします