夏の3days 前編











  夏休みに入り、暑く暇な日々が続いた。
  本来3年であるため、受験勉強をしないといけない時期なのだが
  既に進学を完全に諦めている俺と春原は
  毎日春原の部屋でボーッとしたり、漫画や雑誌を読む日々が続いていた。

  「それにしても暑いな。春原、ここにクーラー無いのかよ。」
  「そんなものあるはず無いじゃん。」
  「じゃあクーラー買ってきて、お前の金で。」
  「んなもん、買うお金なんかありませんから。」
  「金借りてでも買ってこいよ。」
  「何であんたのためにそこまでしないといけないんですか!?
  大体誰にそんな金借りるんですか。」
  「タ〇フジかむじ〇く〇の二つの選択肢があるが…どっちがいい?」
  「何でそこまでしてお金を工面しないといけないんですか!?
  大体普通の高校生がそんな所でお金借りれませんから。」
  「お前ふつ〜〜じゃないから借りれるんじゃないのか。」
  「僕は普通の学生ですよ。」
  「何、そうだったのか。世界の常識が覆されたぞ。」
  「そんな常識は捨ててくださいよ!
  それに今知ったっていう顔しないでくださいよ。」
  「え、今知ったんだけど。」
  「あんた何年友達やってたんですか!?」
  「・・・誰と誰が。」
  「僕と岡崎のことに決まってるじゃん。」
  「冗談だ。ちなみにまだ2年位だぞ。」
  「そうですよ、もう2年間も友達やってるんですよ。
  そろそろ僕が普通の学生であることにしてくださいよ。」
  「うははははは、この四コマおもしれーな。春原、続きないの?」
  「あんた人の話聞いて下さいよ!?」
  「聞いてたよ。俺とお前が主従関係だって話だっけ。」
  「そんなこと言ったことありませんからね!?」

  こんな会話ももう三日連続だ。そろそろ飽きてきたぞ。




  それにしても暇すぎる。また春原を弄る事にするか。

  「あー春原…」
  「春原ー、今いる?」

  俺が春原に声を掛けた瞬間、外からの別の声が聞こえて来た。

  「ちょっと入らせてもらうよ。ってなんだい、
  岡崎やっぱり今日もこの部屋にいるのかい。
  毎日春原の部屋に用事でもあるのかい?」
  「美佐枝さん、こんちは。こんなヘタレになんか用事っすか。
  あと俺はこの部屋の本に用事があるんですよ。」
  「僕って本以下の価値って事ですか!?」
  「そうだぞ、今更気づいたか春原。」
  「あー、それより…」

  いつもの事と思ったのか、美佐枝さんが話を続けた。

  「あんたにお客さんよ。」
  「え? 僕にッスか?」
  「そうか春原、とうとうムショに行ってしまうのか…寂しいな。」
  「そんなところには行きませんから。
  でも、岡崎が僕が居なくなるのが寂しいと思ってくれたのが嬉しいよ。」
  「あー、これで最新の雑誌がタダで読めなくなるじゃないか。」
  「僕のことはどうでもいいんですね!?」
  「そんなことより…」

  また美佐枝さんが話を切った。

  「そんな事って…美佐枝さん、僕の事嫌いなんですか。
  さっきから聞いてると僕いい扱いされてないような気がするんですけど。」
  「違うよ、ただお客さん待たせてるから…」
  「すいません美佐江さん。この馬鹿のせいで。」
  「間違いなくあんたのせいでしょ!?」
  「もういいわ…じゃあ、入って来ていいよ。」

  そういって部屋に入ってきたのは見たことのある女の子だった。

  「あれ、芽衣ちゃんじゃない。」

  それは少し前に春原の様子を見に来た芽衣ちゃんだった。




  「お久しぶりです、岡崎さん。」

  そういって、お辞儀をした。こういう律義な所とか
  春原の妹とはとても思えないよな。
  最初会ったときは春原の妹と認知出来なかったくらいだ。

  「芽衣、僕には挨拶無しなんですか。」
  「あ、おにいちゃんも久し振り。生きてたんだね、ちゃんと。」
  「実の兄に向かってひどい仕打ちですね!?」
  「だっておにいちゃん全然連絡しないんだもん。そう思われても仕方ないよ。」
  「うっ…」

  的確な指摘に黙ってしまう春原。

  「どうせ面倒臭いとか思ってたんでしょ。」
  「ううぅ…」

  的確すぎる…さすがに兄妹だけはある。

  「毎日ゴロゴロしてるだけなら戻ってきても変わらないのに…」
  「うぐぅぐは。」

  何か場違いな口癖が聞こえた気がしたので殴っておいた。

  「すまない、春原殴っちまって。」
  「いいえ、兄にはこのくらいがちょうどいいですよ。」

  さて、春原イビリにも飽きてきたな…そろそろ本題に入るか。

  「ってあんた人のこと、もてあそんでたんですか!?」

  復活春原。相変わらずの再生力だ。

  「え、いつもの事じゃん。今更気にするなよ。
  ところで芽衣ちゃん、今日はここにきた理由は?」
  「それはですね、まず夏休みになったけど、
  どうせおにいちゃんは帰ってこないだろうから様子見に私が来たんです。」
  「そんなことなら俺が教えてやるのに。
  『春原は今日も元気良く空を飛んでいます』って。」
  「僕どういう人生歩んでるんですかね。」
  「言ってやってもいいぞ。」
  「遠慮しときます。」
  「はは・・・」

  芽衣ちゃんは苦笑いしながら続けた。

  「それはついでなんですけどね。本当の目的は
  ただ単に私が遊びに来たかったからです。
  前来た時は平日でしかも学校をサボってきたので
  あんまりのんびり出来なかったからです。」

  つまり、芽衣ちゃんはこの町に遊びに来たというわけか。
  ちょうど暇な日々が続いていたので願っても無い話だ。

  「そういうことか。んでこれからどうするの?」
  「とりあえず、今日はこれから泊まるホテルに行こうかと思ってます。
  今回は両親にも了承貰ってるのでお金もありますから。」
  「そうか…でももう少しならここに居ても大丈夫なんじゃない。」
  「そうですね、ではもう少しここに居て以前はあまり聞けなかった
  兄の学校での生活の様子でも聞いていくことにします。」
  「オッケーだぞ、どんな話でもばらしてやるぞ。
  ちなみにいい話はカットでいくから。」
  「はい、それでお願いします、岡崎さん。」
  「あの〜、少しはいい話を入れといてくださいよ。」
  「嘘はよくないからな。包み隠さず言うぞ。
  正直な話いい話なんかお前には皆無だけどな。」
  「楽しみです、とっっても!」

  笑顔の俺と芽衣ちゃん、そして引きつり笑顔の春原が居た。




  「……ということなんだよ、芽衣ちゃん。」
  「おにいちゃん…そんなことしてたんだね。
  私もうおにいちゃんの知り合いに顔向け出来ないです。」
  「そうなんだよ、まさか授業中にやるなんて。
  俺も初めて見た。そんなやつ。」
  「違うんだよ、あれは岡崎に騙されたんだよ。
  『おい、春原起きろ。お前当たったぞ。
  愛を取り戻せを歌え。』って嘘教えられたから。」
  「でも、おにいちゃんもそんな嘘に騙されるなんて…」
  「俺も流石に春原も騙されないと思ったんだが…
  春原の恐ろしさを改めて知ったときだったよ。」
  「そんな恐ろしさ知らなくていいですからね!?」
  「じゃあ、智代のコンボで空中に飛んでたとき?
  確か最近は80Hitまでいったかな? もう100の大台に乗ったか。」
  「それも思い出さなくていいことですよね。」
  「……おにいちゃん、何かある意味で凄い人が友達にいるんだね。」
  「ああ。ちなみに全員春原の主人なんだがな。」
  「それは僕がみんなの手下って言ってるようなようなものですよ。」
  「違うぞ、全員の下僕だぞ。」
  「ランク下がってる気がするんですけど。」
  「あれ、奴隷だったか。」
  「友達という扱いは無いんですかね!?」
  「おにいちゃんって…」

  芽衣ちゃんは乾いた笑いだ。ちょっと可哀相だった。




  「おっと、もうこんな時間か。時間の経過が早いな、今日は。」

  時計は4時半を指していた。

  「もうこんな時間なんですか。」

  芽衣ちゃんがそういって立ち上がった。

  「では、そろそろ泊まるホテルに行きます。」
  「そういえば、芽衣ちゃんは明日どうするの?」
  「特に決まってはいませんけど。」
  「じゃあ、明日は一緒に商店街にでも行かない。
  もし他に何も無ければでいいんだけど。」
  「いいんですか? 用事とかあるんじゃないんですか。」
  「何も無いよ。むしろ芽衣ちゃんが来てくれて良かった位だよ。
  暇すぎて仕方なかったんだよ。」
  「それじゃあ、お願いします。」

  と即答で返事をした。

  「それでは明日またここに来ますから。
  また明日に会いましょう岡崎さん、おにいちゃん。」

  そういって芽衣ちゃんは出て行った。




  「なあ、岡崎。」
  「ん? あ、お前も来いよ春原。」
  「僕も行かなくちゃならないんですか。」
  「ああ、勿論そうだぞ。ちなみに拒否権は無いからな。」
  「何が悲しくてこの年になって妹と商店街を歩かないといけないんだよ。」
  「どうせ暇なんだしいいじゃないか。」
  「分かったよ。何で芽衣の為なんかに…」

  と言っている春原の顔はどこか嬉しそうだった。











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 TK「こんな所ですか。」
 芽衣「今回初登場の春原芽衣です。」
 TK「ちょっと短めにしてみました。
   本当はもう少し早くアップする予定だったんですが…」
 芽衣「これも諸事情があったのです。
   管理人さんに変わって謝ります。」
 TK「ホント芽衣ちゃんって出来た子だね。
   本当に陽平君は兄妹なの?」
 陽平「そうだよ、揃いも揃って僕を変な扱いするし…」
 芽衣「ほら、髪の色が一緒じゃないですか。」
 陽平「それってフォローになってないよ!?」
 TK「それにしても高3の夏か…
   もう遠い過去の話だな。」
 芽衣「管理人さんも大学進学してんですよね。
   夏休みはどうだったんですか。」
 TK「毎日遊んでましたね。学校の課外授業以外は
   勉強もしてませんでした。」
 芽衣「よくそんなんで受かりましたね。
   真面目に受験勉強してる人に謝ってもほしいです。」
 TK「皆さんは真面目に生きてください。」
 芽衣「それ謝ってないですよ。」
 TK「さて、話を戻して、この話は3話構成の予定です。
   まあ、予定は破るためにあるものですが。
   ちなみに実は第2話もほぼ出来てます。」
 芽衣「じゃあ、明日には更新出来そうですね。」
 TK「無理ですね。」
 芽衣「何でですか?」
 TK「忙しいのです、明日明後日と。
   でも更新できたらします。」
 芽衣「管理人さん頑張ってください!」
 TK「こんないい子が陽平君の妹なんて…
   不憫過ぎます――――!!!!!」
 陽平「そんなに沢山エクスクラメーションマーク付けてまで言いますか!?」



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