目の前では俺のクラスの女子のバスケの試合が行われていた。

  「…なかなか凄いわね、あんたのクラス。」
  「ああ、俺も今相当驚いてる。」
  「僕も驚いてるよ、自分のクラスの凄さに。」
  「お前には敵わないがな。」
  「アンタには敵わないけどね。」
  「二人揃って言わなくても良いじゃないですか!?」











  朋也の春原な日々 第10話











  「それにしても…これは予想外の強敵ね。」
  「俺も予想できなかったな。」
  「僕無視扱いっすか!?」
  「あたしのクラス優勝の壁になるのは間違いなさそうね。」
  「しかし、まさか自分のクラスが
  杏の優勝を阻む壁になるとはな。」
  「あの〜…」
  「何かその言い方だと私が負けるような言い草ね。」
  「そうは言ってねえよ。」
  「僕のことさっきから無視しないで下さいよ。」
  「「ああっ!?」」
  「…なんでもないです。」
  さて、このヘタレは置いといて、
  「しかし、このスコアだからな…」

  そう言って見てみると


  28−8


  まだ試合が終わってないのに、このスコア。
  この学校は超人が在籍し過ぎなのではないか?
  この学校の方針の方針なのか?

  「んで、肝心のところ、誰が活躍しているんだ?」
  「「さあ?」」

  どうやら二人とも分からないらしいな。

  「まあ、見れば分かるか…」

  そんなことを思いながら見てみると、見知った人物がいた。

  「ん、あれは藤林じゃないか。」
  「ああ、そういえばあの子バスケに出場するって言ってたわ。」
  「そうだったのか。」
  「ってアンタも同じクラスなんだから知っときなさいよ。」
  「決めていた時間は寝てたんだよ。」

  杏と言い合い(?)をしていると

  「あ、委員長がパスを受けたよ。」

  春原の声が聞こえた。
  そして藤林を見ると、パスをするのか、投げる体勢にはいっていた。

  「あ、あの投げ方はもしかして…」

  春原が驚愕という表情をしながら呟いた。
  その直後、藤林がボールを放った。
  そのボールは、


  想像以上のスローボールだった。


  「…よく浮いてるよね、あのボール。」
  「ああ。不覚だが俺もお前と同じこと思ったよ。」

  藤林が放ったボールはフラフラとしながら、
  ゴール側にゆっくりと近づいている。
  明らかに重力を無視してるだろう。

  「岡崎、そういえばさっき投げ方がどうとか言ってなかったか。」
  「うん。投げ方が杏に似てるな、と思っただけっすよ。」
  「ふうん…ってマジか!? というかよく分かったな。
  という事はあれはひょっとして…」

  それは無いだろうと思いつつ、
  ゴールの方を見てみると、ボールがドンドン迫っていた。



  そして、それは見事にゴールに吸い込まれていった。
  まるで杏のロングシュートのスロー再生のように…



  「「「………。」」」

  3人とも言葉が出なかった。

  「なあ、杏。」
  「…何よ。」
  「どうやら勝利への壁はお前の妹らしいぞ。」
  「…そのようね。」
  「一つだけ聞いていいか?」
  「…何よ?」
  「お前の家系は超人揃いなのか?」
  「…それについては否定したいけど、
  はっきり言って否定は出来ないわね。」

  杏ははあ、とため息を吐きながら言った。

  「どっちにしたって3−Dと3−Eの決戦は
  避けられなくなってきたな。」
  「でも、委員長はいつ杏の投げ方なんて覚えたんだろうね。」
  「それは俺も気になった。
  あんなもん見様見真似じゃ出来ないし。」
  「僕はやっぱり血筋だと思うよ。
  仮にも委員長は杏の妹だよ?
  委員長にも杏みたいな凶暴性があ…」

  メゴッ

  「誰が凶暴ですって!?」

  凄い音鳴ってますよ、杏さん。

  「そういうところですよ…」

  死に掛けながら答える春原。
  よく答えることできるな…

  「まあ、こいつはほっといて…
  決勝は杏と藤林か…ある意味楽しみな対戦だな。」
  「でも、アンタが決勝まで言ったら、同じ時間だから
  その対戦は見れないわよ。」
  「くっ、それは残念だ。
  やっぱり次の試合はわ…」
  「わざと負けたらあんたのことを
  即ヘタレ扱いだからね。」
  「…分かったよ、ちゃんとやるよ。」


  「そういえばヘタレはどこ行ったのよ?」
  「ん、確かに…
  さっきまですぐそこに居たんだがな。」

  つーか杏の攻撃受けて倒れてなかったか?

  「そういや〜さっき一年がどうとか言ってたよな。」
  「じゃあ、そっちに行ったんじゃない。
  ちょっと行ってみようよ。」
  「藤林の試合はもう見なくていいのか?」
  「いいわよ。
  それに多分椋とは試合するんだから、
  その時に見ればいいしね。」
  「そうか…じゃあ、一年のほうに行ってみるか。」




  一年の試合をやっているほうに行ってみると、
  やはり春原はそこにいた。

  「お前な…行くなら行くって言えよな。」
  「別にいいじゃん。
  というか気づかなかったの?」
  「「全然。」」
  「…ソウデスカ。」
  「んで、何で一年のところに見に来たんだ…って
  今更聞くことでもないか。
  とりあえず、死刑だけにはなるなよ。」
  「僕がどんなことするって思ってるんですか!?」
  「何言ってるのよ、陽平。」
  「ああ、杏。
  キミだけは僕の…」
  「こいつは存在してるだけで死刑ものよ。」
  「ああ、すまんな、杏。」
  「アンタもやっぱり敵でしたね!?」
  「んでどうなんだ岡崎。
  目ぼしい獲物は見つかったのか?」
  「そうだね…って
  獲物なんか探してないですからね!?」
  「やっぱりアンタ、そんなこと…」

  杏に言われて焦り出す春原。

  「僕はそんなこと考えて無いですよ。
  だから辞書はしまって下さい。
  これは岡崎が考えたことで…」

  …お前、やっぱり馬鹿だな。
  ここは一言いってやるか。

  「つーか岡崎ってお前じゃん。」
  「え、ち、違いますよ。これは…」

  ドゴッ!

  「…いい打撃音でしたね。」
  「ありがと。」

  まあ、足元にいる人物はもともと居なかったことにしておこう。

  「それで陽平、もしかして一年にも知り合いはいるの?」

  何か杏の顔が若干不機嫌に見えるのは俺の気のせい…だな。

  「え〜っと、居たような居なかったような…」

  誰かいた気がするんだが…
  う〜ん、思い出せないぞ。
  喉まで出掛かっているんだがな。

  「その様子だと居るみたいね。
  ひょっとすると、今の試合に出てるかも知れないわよ。」
  「んな漫画みたいなこと
  簡単にあってたまるかよ。…あ。」

  唐突に浮かんできた。

  「どうしたのよ、陽平。」
  「思い出した、そういや風子がいたわ。」

  すっかり忘れてたよ。

  「ふうこ? 誰よそれ。」
  「ああ、説明するのもメンドイな…
  正直本人に会ったほうがいいんだけどな…」


  「あ、変な頭の人が居ます。」

  こんな言い方する奴は俺は一人しか知らないぞ。

  「…風子か。」
  「そうです、風子参上です。」
  「この子が風子って子?」

  杏が聞いてきた。

  「そうです。私が風子こと伊吹風子です。
  という訳でこれをあげます。」

  そういって杏にあげたのは…木彫りのヒトデだった。
  何処から出したんだ、それを。

  「…ありがとう。
  それでこれはどうすればいいの。」
  「それは寝る前などにこう抱いて……」

  ホワァ〜〜〜ン

  風子別世界に旅立つ。

  「陽平、どうしたのこの子?」
  「ああ、いつもの事だ。
  お前は気にすることは無い。」




  さて、どうしようか…

  1、抱いている彫刻をすり替える。
  2、どこかに置いてくる。
  3、話している相手をすり替える
  4、鼻からジュースを飲ませる
  5、頭を下にして何処かに立たせておく。




  っていきなり選択肢かよ!?
  でも、何か見たこと無い選択肢が…これにしよう。
  そう思って風子を持ち上げる。
  そして、頭を体育館のフロアに置き、
  足を壁に立たせた。
  (…何かモップとかが置いてあるようだな。)
  風子の姿を見てそう思った。




  しばらくして、風子が戻ってきた。

  「ん、風子何か素晴らしい世界に行ってました。
  って何か世界が逆さまになっています。
  しかも何だか風子頭がクラクラして痛いです。」

  そりゃあ、逆さまに立っているからな。
  と思っていると、バランスを崩して、
  風子の足が地面に向かって急降下していた。
  そして、

  ドシッ

  と地面に見事な踵落としを食らわしていた。

  「…痛いです。はっきりいって最悪です。」

  ごもっともな意見だ。

  「大丈夫か、風子。
  ボーッとしてるからそんな目に遭うんだぞ。」
  「風子、ボーッとなんてしていません。
  いつも心ここに在らずの状態です。」

  得意気に言っている。

  「風子、その言葉の意味、知ってて使ってるのか?」
  「知りません。
  ただ何となく言ってみただけです。」
  「…お前の言語力がよく分かった気がするぞ。」

  これ以上言ってても不毛だな。

  「そういや風子、お前はどの競技に出場してるんだ。」
  「それはトップシークレットなんです。
  だから変な頭の人もどうしても知りたければ教えないことも無いです。」
  「じゃあ、別にいいや。
  そんなには知りたくもないし。」

  さて、立ち去るとするか。

  「ちょっと待って下さい。
  やっぱり聞いてください。」

  どっちなんだよ一体。

  「…仕方ないから聞いてやってあげよう。
  あと、俺は変な頭の人じゃなくて、春原って呼べ。」
  「分かりました、春原さん。
  風子はバスケットに出ているのです。」
  「風子はバスケなのか…」
  「そうなのです。風子だからこそ出来るのです。
  それでは春原さんはどうなんですか。」
  「俺は…バスケに出てるよ。」

  聞いた途端、風子は驚いて、



  「まさか春原さんは女装して出ているのですか!?
  やっぱり頭が変な人です。」



  とんだ勘違いをしていた。

  「んなはずねえだろ。
  俺は男子のバスケのほうに出てるに決まってるだろ。」
  「ああ、風子とんだ早とちりをしてしまいました。
  危うく『うっかり風子』の称号を会得してしまうところでした。」

  (…もう会得済みなんじゃないのか。)

  もちろんそんな事思っても言わないが。

  「でも、まさか春原さんが風子と同じとは思いませんでした。」
  「ちなみに古河もそうだぞ。あと、杏も。」
  「そうなんですか!?
  風子騙されました。クラスメートに
  『これは風子しか出来ないのよ。』ってそそのかされていました。」
  「いや、騙されたお前が悪いぞ。」

  大体バスケは団体競技だしな。
  ちょっと考えれば分かるだろ。

  「んでどうなんだ、ちゃんと勝ち進んでいるのか?」
  「風子のクラスは強いですから、午前は全勝でした。
  これもヒトデのご加護があるからです。
  このまま午後も全部勝ちます。」
  「ヒトデのご加護は無いと思うぞ。
  そうか…でも、勝ってるのか。」
  「そうなのです。」

  得意気になっている。

  「そういえば、いつも居るはずの岡崎さんが居ませんね。」

  キョロキョロと見渡している。

  「ん、まあ気にするな。」

  岡崎(春原)は今、ダウン中だから。

  「んじゃ、俺はそろそろ行くわ。」
  「そうですか…では岡崎さんによろしくです。」

  そういって走り去ろうとして立ち止まってこっちを向いた。

  「ん、どうしたんだ風子。」
  「そういえば、全然気にしませんでしたが、
  今日の春原さんは岡崎さんみたいです。」


  ギクッ
  「そ、そうか?」
  「そうです…何か雰囲気とかがです。
  多分風子の気のせいだと思いますけど…
  ではまたです、春原さん。」

  そういって今度こそ風子は立ち去った。

  (しかし、危なかったな。
  危うく風子にばれるところだったぜ。)




  「ねえ、陽平。」

  とそこに居たのは杏。
  心持ち、威圧感があるんですが。

  「なんだよ。」
  「アンタって…あんな下級生をいじめる趣味があったとはね…」
  「違うぞ、あれはちゃんとしたスキンシップだそ。」
  「ふ〜ん…じゃあ、さっきの選択肢は何よ?」

  人の心読んでますよ、この人。

  「それはな…そうだ、春原の体に入ってしまったからなんだよ。」

  凄いごまかし方だな、俺も。

  「そうなの…」

  納得したぞ、これで私刑も…

  「じゃあ、私がそれを払ってあげるわ。」
  「杏、俺はもうすぐ試合があるから出来ればやめてもらいたいのだが…」
  「安心して。痛みは無いから♪」

  ウィンクしながら言った。

  「…それって即死じゃないのか。」
  「じゃあ、痛みもすぐに快感に変わるから?」
  「それじゃあ俺が変態みたいじゃないか?」
  「…とにかく死ねや――――っ!!」

  杏の腕が振りかぶられた。
  手には辞書。

  「ああ、次の試合出れるのか…」

  そう呟きながら辞書が腹部にヒットしていた。










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 朋也「俺の試合はいつ行われるんだ?」
 陽平「僕の出番減ってるんですけど…」
 杏「どういうことよ、一体。」
 TK「まあ、はっきり言いますと
   この後のネタが無くて…伸ばし伸ばしになってるんですよ。」
 杏「そんな事言っていいの?」
 TK「この後書き誰も読んでないこと祈って…」
 朋也「じゃあ書かなきゃいいじゃんないか。」
 風子「そんなことより風子初登場です。」
 TK「ふう、これでメインヒロイン5人
   とりあえず出しましたよ。」
 智代「しかし私はほんの少ししか出てないぞ。
   セリフも一言だったし。」
 渚「私なんてセリフありませんでした。」
 TK「…正直すまん。
   智代は出番あるんだが…
   渚は…正直無いぞ、今のところ。」
 渚「私のこと嫌いですか!?」
 TK「そういうわけではありませんよ…」
 智代「貴様のような奴は天誅だ!」
 TK「それだけは勘弁して――!!」

 (どぐしっ、どぐしっ、どぐしっ、どぐしっ、どぐしっ、
  どぐしっ、どぐしっ、どぐしっ、どぐしっ、…………)

 智代「ふうっ。」
 朋也「…今どれくらいヒットした?」
 陽平「ボクハミテマセンヨ。」
 朋也「…何か思い出したんだな。」
 杏「2分くらいは蹴られ続けてたわよ。」
 朋也「そうか…気の毒だな。」
 杏「次作は出るのかしら?」
 朋也「…とりあえずこれで。」





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