俺は2試合目があるため、
  試合が行われるコートに向かった。


  
  「…す、春原?お前大丈夫か!?
  何か明らかに顔色が悪いぞ。」

  どうやら春原の名前は認知されつつあるみたいだ。

  「大丈夫…だぞ。
  ちょっとアクシデントがあっただけだ。
  気にしなくていいぞ。」

  手を振って大丈夫だとアピールしておく。

  「……どんなアクシデントに襲われたんだ、お前は。」
  「だから全然大丈夫だって…」

  若干青い顔をしているがな。
  あとほんの少し体が痙攣しているがな…
  何でこんなことになってるかって?
  そう、ちょっと一発食らっただけだ。
  …杏の辞書を鳩尾にな。
  

  実際のところはどうなんだって?



  …死ぬほど辛いぞ。
  
  
  
  
  
  
  
  



  朋也の春原な日々 第11話
  
  
  
  
  
  
  




  何故、俺はこんな苦しい状態で試合しないといけないんだ。
  そんなのは春原だけで十分だ。
  しかも次の対戦相手は…何故か1年。

  「…何で一年と戦わないといけないんだよ。」

  そんな疑問を口にしてみた。

  「あれ、春原知らなかったのか?
  今回の大会、男子は全学年混合なんだぞ。」

  とクラスメートの一人が言ってきた。

  「…知らなかったぞ。」
  「ちゃんと藤林さんが出場競技決めるときに言ってたぞ。
  お前聞いてなかったのかよ。」
  「聞いてないぞ。」

  そん時は寝てたし…

  「ちなみに女子は何故か学年別だがな。」
  「何かメンドイな…
  さっさと決勝戦にしてくれよ。」
  「春原…お前凄い無気力だな…頼むぞ。
  俺らの勝利はお前にかかってるんだからな。」
  「…で、向こうの一年は強いのか?」
  「そうだな…」

  腕を組んで唸っている。
  確かこいつの名前は…

  「山本だったかな…」
  「ん、何がだ?」
  「いや、お前の名前って。」
  「俺の名前は樫本だからな…
  クラスメイトの名前くらい覚えておいてくれよ。」

  ちょっと凹んでいる山本…じゃなくて樫本。
  でも「〜本」はあってたんだ。俺もなかなかだな。

  「んで、さっきの質問の答えを聞きたいんだが…」
  「ああ、それについてだが…
  まあ、一回戦勝ってるって事はそれなりに強いだろう。
  あとはバスケ部員が2人居るっぽい。」
  「二人いるのか…」

  一人なら何とかなるが、二人はさすがの俺もきついな。

  「そういや、何でそんな事知ってるんだ。
  お前バスケ部に所属していたのか?」
  「いいや、ちょっとした情報だって。
  情報元は秘密だけどな。」
  「……」

  こいつも一見普通っぽく見えて、
  実は相当やばい奴なんじゃないのか?

  「なあ、お前って…」
  「春原、試合始まるぞ、って何か用か?」
  「いや、何でもない。試合頑張るか…」
  「おうよ。」

  あまり触れないほうがいいみたいだ。
  どうもやばい気がする。
  


  
  試合が始まると、すぐに分かった。
  明らかに一年のチームのうち二人は動きが違う。
  恐らくこの二人がバスケ部員なのだろう。
  ただ、他の3人の動きはそれほどでもない。
  試合は最初こそ接戦だったが、徐々に差をつけ始めていた。
  それはある男が要因だった。




  「こっちにパスだ。」

  パスを受け取った。
  すると、二人がマークに来た。しかもバスケ部の。

  (さすがにきついかな…)

  「悪いけど先輩はこれ以上通せないですよ。」

  一人がそういう。

  「その通りです、金髪先輩。」

  その呼び方すると『3年B組 金○先生』思い出すぞ。

  「……」

  周りをチラッと見て…そして

  「橋本、パス。」

  ヒュン

  すばやくパスをした。

  「俺の名前は樫本だからな!
  いい加減に覚えとけよ。」

  苦情を言いながらパスを受け取り、ドリブルしていく。
  何か反応が春原みたいだな。
  さっきまで気づかなかったが、樫本は意外に上手かった。
  少なくとも素人ではない。
  一年を軽く一人抜いていった。

  「俺が行く。」

  俺をマークしていた一人が樫本のほうに行った。
  それだけ樫本がいい動きをしていたのだ。
  その隙に残った一人を振り抜いて一気にゴールに近づく。

  「春原、パス。」

  樫本からのパスを受け取った。
  そしてシュート…
  
  パスッ
  
  見事に決まった。

  「なあ、あんな先輩達うちの部に居たっけ?」
  「居なかったぞ。
  大体金髪だったら即気づくだろ。」

  バスケ部の一年の話し声が聞こえてきた。
  そりゃあ、驚くだろうな。
  バスケ部員でもないのに上手い人物が
  一人ではなく二人も居るんだからな。
  あの様子からすると、あの一年達に勝つ方法は無いようだ。
  この試合は恐らく何とかなるだろう。


  
  「樫本、お前凄いな。」

  シュートを決めた後に、近くに行き、そう言った。

  「そうか? このくらい普通じゃないのか?
  おれはそう思っていたが…」
  「…俺の知ってる中では普通じゃないな。」
  「それでも、春原にはまだ勝てないよ。」

  そりゃあ、元バスケ部だしな、俺は。

  「樫本、お前実はバスケやってたんじゃないのか。」
  「いいや、やってないぞ。俺はずっと新聞部一筋だったぞ。
  残念だが、バスケ部に入ったことは一度も無いぞ。」

  それであの実力かよ…底の知れない男だぜ。

  「あれ? そういえば新聞部ってうちの高校にあったっけ?」

  そんな部は聞いたこと無いが…
  すると突如、樫本が笑い出した。

  「ふっふっふ…知らないのか、春原君
  新聞部は常に非公式であるというのが常識なのだよ。」
  「…そんな常識、初めて聞いたからな。」
  「一般人にはこの考え方は恐らく理解出来ないだろうね。」

  一生理解したくもないし…

  「とにかくこの試合に勝つことにしよう。」
  「そうだな…」
  「おっと、一年が攻めてきたぞ。」
  「んじゃ、もう少し頑張りますか…」

  ディフェンスのため、樫本から離れた。
  



  「ホイッとな。」
  「しまった、又取られた。」

  樫本が相手ボールを簡単にスティールした。
  そして、ドリブルで一気に敵陣に切り込んで行った。
  う〜ん、やっぱりあいつは只者じゃない。

  (何で初戦は出来ない振りしてたんだ?)

  う〜ん、謎だ。

  「おい、春原。お前もちゃんと攻めに来いよ。」

  樫本が声をかけてきた。

  「あれ、お前今攻めていなかったか。」
  「何行ってるんだよ春原。
  シュートならさっき決めてきたじゃないか。」

  …コイツ本当に何者だ? 一瞬で決めてきたのか?

  「んじゃ、もう少し頑張るか…」
  「それさっきも聞いたからな。今度はきちんと頼むぞ。
  こんなしがない文化部に頑張らせるなよ。」
  「…俺も帰宅部なんだがな。」

  その言葉を聞く前に樫本は行ってしまった。

  「ん、こっちに来やがった。
  仕方ない、かったるいが頑張ってやるか。」

  そういいながら俺は敵のボールを奪い、
  ドリブルで切り込んでいった。
  


  
  ピピーーッ!!
  試合は結局24−14で勝った。
  やはり樫本の存在は大きかったな。

  「よっ、お疲れだったな樫本。」

  樫本はやや不機嫌だった。

  「春原…お前あんまり動かなかっただろ?」
  「スマン、お前がいると思うと
  どうも頑張って動く気がしなくなってな…」
  「そうか…じゃあ俺は午後からは動かないでおこう。」
  「…冗談だ。だから次も頑張ってくれ。」
  「最初からそういえばよかったのだよ。
  それじゃあ試合も終わったし、俺はちょっとその辺に私用で出かけてくる。」
  「一体、何処に行くんだ。」
  「ふふふ…春原君。私は新聞部に所属しているんだよ。
  もちろん、取材をするに決まってるではないか。」
  「…何の取材するんだよ、って決まってるか。」
  「何だと思うかね、春原君は。」
  「試合の取材じゃないのかよ。」

  すると、樫本はふふふっと笑いながら言った。

  「そんなこと他の奴でも出来るではないか。
  他に取材したいことがあってね。…君も知りたいか?」

  その瞬間、悪寒が走った。

  「…やめておく。」

  触らぬ神に祟り無しって言うしな。

  「そうか…実に残念だ。」

  ちょっとがっかりしている樫本。

  「まあ…頑張れよ、取材。」
  「当然だ。これが生きがいだしな。
  では春原、又午後に会おうとしよう。」

  そういって樫本は何処かに行ってしまった。

  「あいつとはあまり関わらないほうがいいのかもしれないな…」

  ボソッと小声でそう言った。

  (つーか、今思ったんだが、
  初戦にあいつがもう少し頑張れば俺も少しは楽だったのではないか…)

  そんなことを思った。
  でも、あいつには言っても意味ないだろうな。
  今考えたことは無かったことにしておこう。
  
  


  「さて、俺はこれからどうしようか。」

  他の奴は俺が樫本と喋っている間に何処かに行ってしまったようだ。
  ちなみにもうこれで午前中は試合も無いしな…暇すぎる。
  しょうがない、春原の試合にでも嫌がらせ…
  じゃ無かった応援にでも行ってやるか。
  …春原の応援なんかしたくないな、やっぱり嫌がらせでいいか…

  (杏の試合でもいいんだが、見なくても結果は分かるからな。)

  という事で春原の試合が行われているであろうグラウンドに向かった。
  


  
  向かう途中で見知った顔に出会った。

  「よお、古河。」
  「あ、春原さん。おはようございます。」

  古河は頭を下げながら言った。

  「ああ、でももう11時なんだからこんにちわでいいと思うぞ。」
  「あ、そうですか…
  こんにちわ、春原さん。」
  「こんちわ、古河。」
  「ところで春原さんは何処に向かっていたんですか。」
  「ああ、今から岡崎の試合を見に行くところだったんだ。
  もし、暇だったら古河も一緒に見に来るか?」

  すると、古河はちょっと残念な顔で、

  「そうですね、私も見に行きたいのですが、
  やることがあるので見にいけません。」
  「ん、何かやることあるのか…」
  「はい、実は実行委員なのでその関係の仕事があるので。」
  「そうか…」

  俺ならそんなめんどくさそうな事絶対にやらないな。

  「それじゃあ仕方ないよな。
  古河の分まで俺が嫌が…じゃなくて応援しといてやるよ。」
  「お願いしますね。」
  「そういや、お前の試合見たぞ。」

  古河はちょっとビックリした。

  「え、見てたんですか春原さん。」
  「偶然だったんだがな…見てたぞ。
  それにしても初戦の相手が杏のクラスとは不運だったな。」

  それを聞くと古河はちょっと笑いながら、

  「杏さんのロングシュートは凄かったですから。
  残念ながら勝つことは出来なかったです。」
  「あれは俺でも勝てるかわからんよ。」

  正直そう思うぞ。
  むしろ負ける確率のほうが高いだろうな。

  「すいません、そろそろ行かないといけないので…」
  「そうか、呼び止めて悪かったな。」
  「そんな事無いですよ、岡崎さんによろしくお願いします。
  それでは春原さん、また。」
  「ああ…頑張れよ、古河。」
  「はい。」

  古河は走って行ってしまった。
  


  
  古河が去っていった後、ふと思った。

  (そういえば、春原は古河のこと『渚ちゃん』って呼んでたな。
  しまったな、古河にばれてないだろうな。)

  ちょっと考えて

  「…まあ、大丈夫だろう。」

  特に根拠は無いがな。
  まあ、春原のことは古河もちゃんとは覚えてないだろうし、多分。
  いざとなったら何とかごまかせばいい事だしな。

  「それじゃあ、グラウンドに向かうとするか。
  ちょっと喋ってたからな…もう始まってるかな?」

  まあ、別に始まってると知っても、急ぐ必要は無いんだがな…急ぐ気もないし。
  俺は慌てず再びグラウンドに向かっていった。
  
  
  
  
  
  
  




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 朋也「なあ、管理人さんよ…」
 TK「何ですか。」
 朋也「樫本っていったい何者なんだよ?」
 TK「知らないですよ。
   私が直感で作っちゃったオリキャラですから。
   あえて言えば、ダ・カ○ポの杉○みたいなものじゃないのかな?」
 朋也「適当すぎだろ…
   下の名前は考えているのか?」
 TK「特に…必要になったらその時適当に考えます。」
 朋也「…駄目管理人が…」
 TK「さて、ようやく渚ちゃんセリフありました。」
 朋也「スルーしたな…」
 渚「ありがとうございます。」
 朋也「でも、チョイ役だよな…(ボソッ)」
 渚「岡崎さん、私の事嫌いですか(グスッ)」
 朋也「やばい前回もこんな事あったような…」
 ドドドドドド・・・・・・
 杏「あんた女の子泣かしてるんじゃないわよ!!(ヒュンッ!)」
 ドゴッ!
 朋也「グハァッ!
   今回は杏ですか…(ガクッ)」
 杏「んで、本当の所、何者なのよ?」
 TK「だから知りませんって言ってるじゃないですか。
   今後も出てくるかもね。」
 杏「何も考えてないだけでしょ?」
 TK「(ギクッ!?)スイマセン…(ドフッ!)グハァ。」
 渚「…何か後方で大変なことになってますが…
  これで今回は失礼します。」 
 陽平「僕今回出番無しッスか!?」
 
 樫本「ふふふ…私の正体ですか…
   その辺に転がっている普通の学生ですよ。」



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