「急がないといけないわね・・・」

朋也たちと別れた後、教室に急いで戻っていった。
教室に戻ると、もうあまり人は残っていなかった。
私と同じバスケのチームの人は一人も残っていなかった。
お弁当箱をすばやく片付けた後、急いで体育館に向かっていった。
私の試合は昼休み後すぐだったから。
ちょっとばかしあの馬鹿のために無駄な体力を使っちゃったからな〜

「これはギリギリになるかな〜」

ちなみに相手は3−D、


つまり椋が相手ということになるわね。











   朋也の春原な日々  第14,5話










「ちょっと杏、急いでよ〜、もうすぐ始まるよ〜」

他のクラスメイトが急かしている。
もう目の前だっつーの。

「はぁ、はぁ・・・そんなに急かさなくても・・いいじゃないのよ」

ダッシュで走ってきたので、息を整えながら言う。

「だってギリギリまで来ないんだもん。
急かしたくもなるわよ」
「あ〜、悪かったわよ。それでみんなもう来てるの?」
「・・・あんたが最後だわ」

やっぱりそうだったのね。
それにしても、何も悪い事していないのに、
皆の目が責めてる気がするのだけど…

「あははは・・・ホントに悪かったわ
って別に私、遅刻したわけじゃないからいいじゃないのよ!」
「あ、お姉ちゃん」

そこに椋がやってきた。

「椋じゃないのよ
まさか椋と一戦交えるとはね・・・
言っとくけど身内だからって手加減はしないからね」
「そんな事言わないでよ〜
それじゃあお姉ちゃん、お互い頑張ろうね〜♪」

椋は自分のクラスメイトのところに戻っていった。

「あんたたちは仲良いわね〜」
「まあね」
「でも、いくらカワイイ妹が相手だからって
試合で手は抜いたりはしないでよね」
「いくらなんでもそんなことはしないわよ」

そりゃあ、ホントだったらちょっとは手加減してあげたいけど、
あのシュートを見てるからね…
手加減したらこっちが負けるかもしれないし。

「分かってるわよ、手加減なんて考えてないわよ」




ピィ―――――ッ!!

遂に始まった。
ちなみに今回は私がジャンパーである。
何で私にやらせるかねえ?
審判がボールを高く上げた。
それに向かって私と相手がジャンプした。
私のほうが高くジャンプできた。
ボールをクラスメイトに向けて飛ばした、が、

ボゴッ

ちょっとばかし勢いが付きすぎたのか
ボールを取り損なって、顔に命中してしまった。
しかもまた見事なめり込み方よね…

「杏・・・勢いつけすぎ・・・」

…さすがに後で謝っておこう。
幸い、その顔面に当たったボールを拾ったのは私たちのクラスだった。
私は着地した後、すばやく動いて、フリーになる。
ここからはいつも通りの展開だ。
他の相手を惹きつけてもらって私がパスを貰う。
そして、シュートを放った。



ここまでは今までどおりだった。
でも、ここからが違った。

バシッ!!

何と私のシュートが両手でとはいえ、防がれたのだ。
しかも防いだ相手は椋だった。

「お姉ちゃん、まだまだですね。」
「・・・・・・・・・」

何か人格変わってるよね、椋。
あんたそんな事いうキャラじゃないよね!?
すかさず椋がシュート体勢に入る。

(しまったわ!?)

私も慌てて椋のシュートを防ぐために椋に接近した。
椋がシュートを放つ。私はシュートを防ごうとした。が、
椋のシュートは私のような直線ではなく、
高い放物線を描いていてさすがに届かなかった。
勿論、そのシュートは入って先手を取られてしまった。



「まさか杏のあのシュートが止められるなんてね・・・」

それは私も驚いているところだって…

「椋ってああ見えて実は凄いのかもね・・・」

私もそう思ったわ、たった今。

「やっぱり椋ちゃんも杏の妹、藤林の姓の持ち主だったのね」

そうそう…ってちょっと待ちなさい!
何で全員頷いているのよ。

「あんたたち、それってどういう意味なのかしら?
答えによってはたたじゃおかな・・・」
「あ、杏、試合再開だから。
あんたに期待してるわよ。」
「「私も〜」」
「あ、ちょっと待ちなさいよ!」

全員、私が言い終わる前に一目散に散っていった。

「・・・後でどういうことか全員取調べ決定ね。」

それにしても、椋のあのセリフ、

『お姉ちゃん、まだまだですね。』

もしかして椋って二重人格者?
というか一瞬、母さんの顔が浮かんだわよ。
でもね椋、ちょっと甘いわね。

「私にそんなセリフを言ったことを地獄の底から後悔しなさいよ、ふふふ・・・」

その顔をちらりと見てしまったクラスメイトが
ちょっと、いやかなりの冷や汗をかいていたことを杏は知らない。




次は私たちからの攻撃だ。
さっさとパスしなさい、皆。
でも、さっきの椋のシュートカットが頭に残っているのか、
なかなか私に渡してくれない。そう思っていると、
パシッ
遂にパスが来た。予想通り椋が私のマークに来た。
私は思いっきり振りかぶった。

「うりゃあああぁぁぁ―――!!」

ブオンッ!!

思いっきり投げた。椋がそれをカットしてきた。けど、

ギュルルルルルッ・・・ バシッ!?

椋の手からボールが弾かれた。

「いたっ」

椋も同時に弾かれた。
いつもなら同情だけど、あのセリフを聞いた後だからそんなものないわよ!
弾かれたボールをすばやく拾い、再びシュート!

ヒュンッ、ガゴンッ

ゴールを決めた。

「いたた・・・何で止めれなかったんだろう?」

椋ははてな顔だった。

「ふっふっふ、甘いわね椋」
「お姉ちゃん!?」
「あれはシュートじゃなくて椋を誘う釣り球だったのよ。
あんなの入るわけ無いでしょ」

何しろ一投目はスパイラル回転していたからね。
野球で言ったらジャイロボールだったかな?

「お姉ちゃんに騙されたよ!」
「ふふふ、騙された椋が悪いのよ。
とにかくこれで3−3の同点! 勝負はこれからよ!」
「それはこっちのセリフですよ、お姉ちゃん!」

というか椋ってこんな性格もあったんだ。
やっぱり私の妹、というか母さんの子供ってのを痛感しちゃった。
これからは気をつけないとね。




しばらくは一進一退の試合展開だった。
椋もあの後から私のフェイクシュートには引っかからなくなったため、
なかなか決まらなくなっていた。
一方の椋も私が執拗にマークしていたため、
なかなかパスを受け取れなくなっていった。
そのため、他の人による戦いになっていた。
それでも両クラスとも同じくらいの強さだったので
決定的な差は出来ていなかった。




「ねえ杏」

一人が話しかけてきた。

「このままじゃ勝てるか分からないわよ」
「分かってるわよ」

でも、椋のマークを私以外の人には任せたくないし・・・
何といっても今の椋はいつもの椋とは違うから
とすると、後残ってるのは・・・

「・・・とりあえず、あの手から使うことにしようかしら・・・」

まあ、他にも手はあるんだけどね・・・
それは次の一手ということで、まだ使わないわよ。



そんなことを考えていると、

「杏パスよ!」

ちょうどパスが来た。
パスを受け取ると、椋がマークしてきた。

「お姉ちゃんのシュートはもう入れさせないよ」

すかさず振りかぶって投げた。

「えっ」

椋が驚愕の声を上げる。
なぜなら私の手元にはまだボールがあったからだ。
椋は体勢が崩れている。今がチャンスね。

「まだまだ甘いわよ、椋!」

ブオンッ!

そこからソフトボール張りのアンダースローでシュートを投げ込んだ。
シュートは椋のすぐ横を通っていたが椋は触れることが出来ず、
そのままゴールに入っていった。

「またお姉ちゃんに騙された〜」

心底悔しそうな表情をする椋。 …やっぱりいつもの椋とは違うわね。

「ふふふ、騙されるほうが悪いのよ
最後に勝つのは策士なのよ」

悪いけどまだまだ椋に負けるつもりはないわよ。
まあこれも一回限りしか通用しないだろうな〜。



次は3−Dからの攻撃になる。
こっちが私中心の攻めを行うなら、相手は椋中心の攻めである。
他の人もいかに私や椋にパスするかさせないかの攻防だ。
そこでちょっと焦ったのか、椋にパスしたボールを
クラスメイトが見事にパスカットした。
すばやく攻撃に転換し、全員ゴールに向かっていく。
皆結構運動神経のいい人ばかりだから、私がシュートしなくても
他の人がシュートを決めてくれるから大丈夫でしょ。
相手もパスカットされて慌てて戻っていったが、
私たちが落ち着いてゴールを決めたので、これで3点差になった。
確かに3Pシュートを決められたら同点になっちゃうけど、
そう簡単には決まるものじゃないしね。
私は椋のマークに全力を挙げるとしますか。

その後はこの3点差を攻めることで守ることにした。
攻撃は最大の防御っていうでしょ?



ピィ―――――――!!

終了の笛が鳴った。
結果は19−17、何とか二点差での勝利だった。
あのあと一本椋に決められたけど、後は凌ぎきって勝利した。

「あ〜あ、お姉ちゃんにはやっぱり敵わなかったよ」

傍にいた椋が呟いた。
どうやらいつもどおりの椋に戻ったみたいね。

「それにしても椋もやるじゃないのよ
ちょっとばかし驚いたわよ」

ホントは物凄く驚いたんだけどね。

「でも、お姉ちゃんにはまだ敵わないみたいです」
「当たり前よ、まだまだ椋に負けるつもりはないわよ
そういえば、よくあんなシュート打てたわね」
「う〜ん、お姉ちゃんやお母さんをいつも見てるからかな〜」
「・・・それはどういうことかしら、椋?」
「あははは・・・あとは、何か試合が始まったら、
内側から何かがこみ上げてきて・・・本能って言うのかな?多分・・・」

…将来トランプとか投げないか本気で心配になってきたわよ、お姉ちゃんは。
やっぱり母さんの血がそうさせるのかしらね?

「お姉ちゃん、ここまできたら優勝目指してね」
「当たり前よ!
さて、そろそろ整列しに行きましょう」
「うんそうだね、お姉ちゃん」




「さてと・・・今からどうしよう?」
「お姉ちゃ〜ん」

椋がやってきた。

「お姉ちゃん、今暇だよね?
少し飲み物でも飲みに行かない?」
「う〜ん、他ならぬ椋の頼みだからね、
一緒に行ってあげるわ
それにちょうど喉も渇いてたしね」
「それじゃあ早く行こうよ、お姉ちゃん」




「んぐっんぐっ・・・ぷは〜っ、
やっぱり運動した後の一杯は格別だわ〜」

ちなみに飲んでるのはスポーツドリンクよ。
勿論、ビールではないわよ

「お姉ちゃん、何だかお父さんみたいだよ」

ちなみに椋も同じものを飲んでいる。

「・・・何か言った、椋?」
「何にも言ってないよ
あ、サッカーの試合やってるよ」

椋がそそくさと歩いていく。

「・・・逃げたわね」

まあ、暇だったしちょうどいいわね。私も向かっていった。




「で、どこの試合なのよ?」
「あ、私のクラスの試合みたいだよ」
「ふ〜ん、椋のクラスのね〜・・・
で、どうなの、勝ってるの?」
「それが・・・0−5で負けてるみたい」

それってボロ負けしてるってことよね…

「・・・相手が相当強いってことじゃないの?」
「さあ、それは知らないよ」

まあ、そりゃあそうよね。

「う〜ん・・・あ、そういえば・・・」

コート内を見渡すと、ある人物が見当たらなかった。

「確かこれって朋也が出ていたはずだけど、見当たらないわね」
「あれ? そういえば居ませんね」

もしかして…
私の脳裏には昼休みの光景が浮かんだ。

(まだ屋上でくたばってるのかな…)

そう思ったけど、

(ま、陽平だし大丈夫でしょ!)

「きっと寝すぎて間に合ってないだけじゃないの?」

まあ、大方嘘は言ってないわ。
ただ、ちょっとばかし詳細を削っただけよ。
アンタ悪魔ッスね!? という空耳が聞こえた気がするけど気のせいね
というか誰が悪魔よ! 後で覚えてなさいよ…

ピピ―――――!!

無常にも笛が鳴り、椋のクラスのサッカーは大敗北を喫した。



「残念だったわね」
「そうですね、岡崎くんは午前中活躍していたみたいでしたから、
居れば分からなかったね」

多分、そいつが来ない理由は約二名にあると思うわ。…私を含めて。

「これで、あとは男子のバスケットだけになっちゃいました」
「ん、男子のバスケは勝利したの?」
「うん、そうみたいだよ」

確か男子はあと2勝すれば優勝だったはずだから、
あと1勝すれば優勝になるのね。

「春原くんが頑張ってるみたいだよ」
「ふ〜ん」
「・・・お姉ちゃん、ちょっと変だね」
「何で?」
「だって、いつもだったら
『まあ、ヘタレにしてはやるわね』とか言うから」

椋の中でも陽平はヘタレで通るのね。
しかし私のセリフが結構感情こもってたわよ。
実は椋って奥底では・・・

「お姉ちゃんどうかしたんですか?
何か私の顔をずっと見てるんだけど・・・」
「ん、何でもないわよ」
「それで質問に答えてよ、お姉ちゃん」

ちっ、質問は忘れてなかったのね。

「それは言うのも煩わしかったのよ」
「ふ〜ん、そういうことにしてあげるよ」

ううっ、今日の一日で椋への見方が180°以上変わったわ。
むしろ、椋のほうが母さんの血が濃い気がすると感じたわ。



「それで椋は今からどうするの?」
「私はもう試合もないから、クラスの人と中庭で居ようかと・・・」
「はあ、私もしばらくそこにお邪魔するわ」
「うん、お姉ちゃんならいつでも歓迎だよ」
「それじゃあ行きますか」


その後、しばらく椋や椋のクラスメイトとお喋りをしていた。
なかなかきわどい話もあったから、ちょっと焦ったわ。




「そろそろ行くとするわ」
「でも、まだ時間あるよ?」

確かに1年生と2年生の試合が終わっても、
しばらく経ってからしか試合は始まらないけど…

「まあ、早めに行って損はしないから・・・じゃあね、椋
暇になったら試合見に来てね」
「うん」
「杏も頑張ってね〜」

椋たちと別れて体育館に向かうことにした。




行ってみると、1年生と2年生の勝負は終わっていた。
どうやら、2年生が勝利したみたいだ。
ん、あれは…

「智代じゃないのよ」
「ん、ああ・・・杏か」
「って私は未だに呼び捨てなのね・・・」

もういいんだけどね、別に。

「そういえば、見たところ決勝の相手は杏みたいなのだが・・・」
「つまり、勝った2年生のチームはアンタのところだったのね」
「そういうことだ
杏、あなたには負けないからな」
「私だってアンタにだけは負けたくないわよ・・・」
「「ふふふふふふ・・・」」



「うわ、何だあそこは! 妖気が出てないか!?」
「何か殺気も混じってる気もするんだが・・・」
「うかつに近づかないほうがいいな・・・」
「何か悪寒が・・・」




一方、その頃・・・

「風子納得いきません!」
「風子〜、負けは負けだって」
「あのジャンプ力は人間技じゃなかったです
きっとブース○ーか何かが取り付けてあるんです!」
「そんなの付いてるはずないよ〜」
「じゃあ、サイ○ーグなんですか!?」
「それもないって・・・」
「じゃあ、妖怪だったんですね!?
風子さすがに妖怪には勝てません!」
「「「・・・・・・」」」




「そろそろ試合ね・・・」
「そうだな・・・」

試合を行うコートに向かっていった。



「お互い、いい試合しましょうね、智代」
「そうだな」




ピピ―――――ッ!!

決勝の試合の始まりの笛が鳴った。











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 TK「もはやバスケじゃないですよね!?」
 杏「アンタが書いたんでしょ!」
 TK「確かにそうですがね・・・でも、悲しいかな
   筆は異様に進みまして、久々に1週間以内の更新です」
 杏「というか前回が遅すぎなのよ!」
 TK「それは言わないでくださいよ・・・_| ̄|○」
 杏「で、今回は前回よりやけにボリュームも多いわね」
 TK「そりゃあ、ある意味、楽ですもん
   もう、やりたい放題ですからね( ^∀^)
   ルールとか気にせずにノビノビ書けますよ」
 トコトコトコ・・・
 杏「・・・・・・あ、椋だわ」
 椋「ねえ、管理人さん・・・」
 TK「何ですか・・・っていきなりBK(ブラック)椋降臨ですか!?」
 杏(ブラック椋・・・その名称、似合いすぎよ・・・)
 椋「私って原作でこんな性格でしたか?(ニコニコ)」
 TK「その笑顔が非常に怖いッスね!?」
 杏(それは私も同意するわよ・・・)
 椋「・・・返答無しですか・・・
  じゃあ死んでください(ヒュッヒュッヒュッ・・・)」
 TK「(グサグササ・・・)ぐわあああぁぁぁぁ――――っ!!
   トランプが全身にめり込んでる―――――っ!!」
 杏(やっぱり椋って怖いわね・・・)
 椋「それじゃあ・・・(スタスタスタ・・・・)」
 TK「・・・・・・ってヘタレじゃなかったら死んでますよね!?」
 杏「じゃあ、生きていたアンタはヘタレなのね・・・」
 TK「・・・・・_| ̄|○」

 朋也「俺達出番ここだけかよ・・・」
 陽平「次はあるでしょ」
 朋也「お前は永遠になくてもいいがな」
 陽平「どういうことっすかね!?」
感想、誤字等については拍手、メール、もしくは掲示板に…



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