もうすぐ決勝戦が始まる。
ちなみに今回は私はジャンパーじゃない。
というか、相手のジャンパーが智代であるので、
さすがの私でもちょっと勝つことは厳しいかな…
まあ、ジャンプボールで全て勝負が決まるわけではないじゃないわよ。
とにかく智代だけにはボールを渡さないようにしないとね…
幸い智代はジャンパーだから最初に取られることはない。
さあ、あと一勝!
気合入れていくわよ!


ピピ―――――ッ!!!!
決勝の始まりの笛が鳴った。





(これって僕達が主役じゃなかったっけ?)
(あ!? 俺は確かに主役だが
お前は「主役」と書いて『ちくしょう』と読む役だぞ?)
(アンタホントに酷すぎッスね!?)
(そんなに褒めるなよ〜、照れるじゃないか)
(全然褒めてないですからね!?)











   朋也の春原な日々 第15話











フォッ

ボールが空中に投げ出された。
クラスメイトと智代がボールにめがけて飛ぶ。
智代のほうが明らかに高く跳んである。

バシッ!

智代がボールを弾いた。

「えっ・・・」

そのボールが私のほうに向かってきている。
本来ならチャンスボールだけれども、
それが智代が放ったボールなら別よ。
まるでバレーのスパイクの如きスピードじゃないのよ!
これは弾くしかないわね。

バシンッ!!

私は両手でそれを防いだ。
それを弾く反動で私も尻餅をついてしまった。
全く…完全に顔コースだったわよ、危ないわね。
その私の弾いたボールを取ったのは…
ジャンパーの智代だった。

「しまっ・・・」

そう思ってる間に智代がドリブルで一気に攻めて行く。
慌てて起き上がって智代を追いかけていくけど、差がなかなか縮まらない。
智代が飛んだ! ゴールに向かって! そして、


智代のダンクシュートが決まった。
というかどんなジャンプ力してるのよ!

「キャ〜〜〜〜〜かっこいいです、生徒会長」

後輩からの黄色い声援が聞こえてくる。

「やるわね、智代・・・」




「ナイスよ智代、さすがは最強の・・・生徒会長ね」
「そんなこと無いぞ」

何か小さな声で聞こえた気がするが…気のせいだろう。

「そんな謙遜しなくてもいいって〜
あんなダンク決められる女子高生は世界広しと言えどもそういないって・・・」
「・・・それは褒められているのだろうか?」
「褒めてるって〜ってほら、先輩達が攻めてくるよ」
「・・・わかった」

納得は出来なかったが、試合にも集中しないとな…
杏にパスがまわったな…

「・・・しまった!」

私が気付いたときには遅かった。
既に杏がシュート体勢に入り、そして放った後だった。
私もすぐにジャンプしてシュートを止めようとしたが、
気付いたのが遅かったため、僅かにボールに届かなかった。
そのまま一気にボールはゴールに叩き込まれた。




「ちょっと何よ、今のシュートは・・・」
「まるで弾丸だったよね〜」

私のクラスメート全員が驚いている。

「くっ、完全に油断していた」

杏がいるということを一瞬でも忘れていたのはミスだったな。

「まさか智代クラスの女子がウチの高校の先輩に居たとはね・・・」
「この学校は怪人の集まりなのかな〜?」
「・・・ちょっと待て、それはどういうことだ?」
「え、違うよ智代
”怪人”じゃ無くて”快人”よ〜」

それは強引な当て字ではないか?

「・・・・・・ジ―――――ッ・・・」
「あ、あははははは・・・・」
「・・・まあ、後でそれは問い詰めることにしてと、
とりあえずあの人、杏は私が抑える」
「任せたよ智代、あのシュートはアンタ以外に止められる人はいないわ」

やっぱり私を怪人扱いしてるみたいだ…




パアンッ!
「さっすが杏、ナイスシュート」
「ありがとね」

ハイタッチで喜び合う。

「「キャ―――――!! 杏先輩かっこいいです―――!!」」
「あら、後輩からの黄色い声援よ」
「そうね・・・」

これでまた女の子からのラブレターとかが増えるのかな…
それはそれでちょっと大変だわ。

「今度は向こうのから攻めね・・・」
「・・・あの子、智代は私が抑えるわ」
「そうだね、あの会長を抑えれるのは杏以外には重荷ね」
「だから、あんたたちも他の子を抑えててね」
「分かってるわよ」
「杏もちゃんと守ってよね」

人事だと思って…智代を抑えるのは至難だと思う。

(かかってきなさい、智代・・・)




ダンダンダン…

(抜けるか!)

「フンッ!」
「甘いわよ!」

パアンッ!

「しまった!」

(貰ったわ!)

今はフリー…

「うりゃああぁぁ―――!!」

ブオンッ

「そうはいくか!」

今ならまだ間に合うはずだ!
ジャンプして手を伸ばす!

バシィッ!!

取られた! あれでも駄目なのね。

「くっ、さすがね智代!」

ダンダンダン…

「あなたもな、杏!」
「久々に本気で戦えそうだわ・・・」
「それは私も同じだ・・・」


・・・・・・


「あの先輩凄いわね・・・」
「あんたのところの会長さんも凄いわね
あの杏と互角にやり合ってるなんて・・・」
「先輩のほうの杏先輩だって凄すぎですよ
まさか智代とやりあえる人物がこんな身近にいたなんて・・・」
「「・・・・・・」」
「お互い怪物がいて大変ね」
「そうですね、先輩」

「何敵とのんびり話してるのよ!」
「何を敵とのんびり話しているんだ!」

「「・・・・・・」」

お互い同じことを今思っているであろう。
この2人はバスケじゃなくて、ある意味戦争をやっていると…
コート外を見てみると…



「杏先輩〜、そんな人早く負かしちゃってくださいよ〜!」
「会長〜、そんな人さっさとぶち抜いてやってくださいよ〜!」
「はぁ!? 何言ってるのよ! あんたら
杏先輩があんな銀髪に負けるわけ無いじゃないですか!」
「あんたこそ何言ってるのよ!
会長があんな一般ピープルに負けるなんて想像も出来ないわ!」
「ぷっ、笑っちゃうわね( ^∀^)
杏先輩が一般人にしか見えないあんたらの評価なんて全く当てにならないわね」
「あんたらのほうが節穴よ!!
あんな遠投しかしかできない人と何でも出来てしまう会長を
比べること自体間違ってるわ!」
「何ですって〜、このアマ」
「それはこっちのセリフよ!」
『コート外の揉め事はやめて下さい〜』



「「・・・・・・」」

どうやら場外戦も行われているみたいだ。

「「はぁ〜〜〜〜」」

壮大なため息をした。




チラッと見ると、残り2分を切った。
今のスコアが7−6。
今までの試合を考えたら物凄いロースコアね。
一応勝ってはいるものの、一点差じゃ全然楽観できないわね。
残り時間も少ないし…
そろそろ切り札も使用しないとね。

「杏パスよ」

私がパスを受け取ると、すかさず智代がやってきた。

(いくわよ・・・)

投げる体勢に入る。そして一気に投げる!

「しまった!」

智代の声がこだました。
私が放ったのはスピンをかけたループシュートだった。
まあ、椋が私に使ったシュートと同じ感じなんだけどね。
そのシュートはリングに全く触れずに静かにゴールに入っていった。

ダ―――ンッ!
ダ――ンッ! ダンッ、ダンダン・・・

そこにはバスケットボールの落ちる音だけがこだましていた。


「これで4点差よ、智代」
「・・・まだまだこれからだ」

そういっている智代の顔が若干険しい顔になっていた。

「ナイスよ、杏
今の1本は大きかったわよ」
「でも最後まで油断は出来ないわよ」
「ええ、分かってるわよ〜」

もう、時間はそんなには無い。
あとは智代を抑えれば、簡単には負けない。
相手が攻めて来た。
私は智代のマークに向かう。
相手は小刻みにパスを回していく。
智代がずば抜けてたから気付かなかったけど、
智代以外の人もかなり上手いわ。
そうこう思ってるうちに智代にパスが回り、ドリブルで切り込んでくる。
しかも、かなりの低い体勢で…
これだと、ボールを取りに行くと、ファウルになってしまう。
そう思ってるうちに、智代にジャンプされ、
ダンクを決められてしまった。

「これで二点差だぞ」
「くっ・・・」

あと1分くらいだから、こっちが決めれば勝利だけど、
もし、ボールを奪われて決められたら同点にされてしまう。
そういえば、同点の場合はどうするんだったっけ?

(って何で同点にされることが前提なのよ、私は!)




私たちの最後の攻防が始まった。
とにかく私たちは後一本決めれば勝利、
決めれなかったら分からないという状況。
執拗にパスをまわして、時間を潰していく。

パシッ

遂に私にパスが来た。
智代が私の前に構える。
今度は打たせもしないという顔だった。

(あ、そういえば・・・)

私はある借りを思い出した。
ちゃんと借りは返してあげないとね、ふふふ…

「最後だから・・・正面に打ってあげるわ!」

ボールを投げる体勢に入る。そして、

「うりゃああああぁぁぁぁ――――っ!!」

フルパワー投球で投げた。



杏がボールを投げた。
言ったとおり、ホントに正面にシュートを放つつもりだ。

(これなら防げる!)

そう思った瞬間、ボールが目の前に迫っていた。
まさか、これは私の顔を狙ったものではないのか!
そう思う前に体が動いて、それを阻止する。

バシ―――――ンッ!!

何とか弾いたものの体のバランスを崩してしまった。
その直後、そのボールを杏がキャッチしていた。
さすがにこの体勢から防ぐのは無理か…
だが、それでも飛びついて防ごうとした。
が、今度の杏のシュートは先ほどのループ気味のシュートだった。
私は触れることも出来なかった。
勿論それは言うまでもなく、先ほどと同じく綺麗に入った。




ピピィ――――――――ッ!!
決勝戦の終了のホイッスルが鳴った。
スコアは13−10、私たちの優勝だ。うん、結構嬉しい。

「やったわね杏
これもあんたの大車輪の活躍のおかげよ
もう抱きしめてやるわ〜」

いきなり抱きつかれた。

「ちょっとやめなさいよ!」
「もう〜そんなに遠慮することもないわよ〜」
「大体周りの目を気にしなさいよ!」
「周りね〜」

私が周りを見渡すと、



「キャ――――!! 私も杏先輩に抱きつきたい〜〜(≧▽≦) 」
「いいな〜、あの人〜」
「あ〜、杏先輩かっこいい〜(ホワ〜ン)」



「・・・・・・何か反論は?」
「・・・はぁ〜〜」
「明日の下駄箱が楽しみね」
「私は全く楽しみじゃないけど?」

しばらくは頭痛の日々なのかな〜…




「杏、おめでとう」

智代が歩み寄って来た。

「ありがとね」
「それにしても、最後のあれは酷くないか?
人の顔を狙うのは許されないぞ」
「あれはあんたがジャンプボールを私に向けて叩き込んだことを
思い出したからその報復みたいなものよ」
「あれはたまたま杏がいただけだが・・・」
「私以外だったら死んでたかもしれないのよ?」
「まあ、その・・・気にするな」

明らかに目が泳いでるわよ…

「その後に私もやったんだから今回のことはチャラにしてあげるわ」
「そうか・・・そういうことにしておこう」

でも、最初にやったのはあんただけどね。

「とにかく、今回はあなたの勝ちだ
だが、今度機会があるときは負けないからな」

智代が手を出してきた。

「残念だけど、そのときも返り討ちにしてあげるわ」

私も手を出し、お互い握手した。
そして、お互いの健闘を称えて抱擁しあった。



「キャ―――――!! もう私倒れそう〜」
「あ〜、あの2ショットの間に入りたいわ〜」
「私、あの御二方に惚れちゃいましたわ」
「私も〜」
「私も抱きしめられた〜〜〜い」



「「・・・・・・・」」

お互い無言になった。

「・・・・・なあ杏」
「・・・何よ」
「明日から辛い日々が続くのか?」
「そんなの考えたくも無いわ」
「「・・・はぁ〜〜〜」」


その二人の姿は
試合中の凛とした姿には程遠かった。










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 TK「ようやくここまで来ました・・・」
 智代「この1日で何話費やしたと思ってるんだ」
 TK「まあ最後はネタも厳しかったですよ」
 智代「それで次で本当に終わりなのか?」
 TK「そうですね・・・多分ですけどね
   次は短いと思いますので・・・すぐにアップしたいですね」
 智代「お前のすぐは異様に長いがな・・・」
 TK「コ、コンドハダイジョウブデスヨ、トモヨサン」
 智代「・・・(プチッ)信用できるか―――――――っ!!」

 どぐしっ、どぐしっ、どぐしっ、どぐしっ、どぐしっ、
 どぐしっ、どぐしっ、どぐしっ、どぐしっ、どぐしっ、
 どぐしっ、どぐしっ、どぐしっ、どぐしっ、どぐしっ、
 どぐしっ、どぐしっ、どぐしっ、どぐしっ・・・・・・・・・・・・


 TK「って私を殺すつもりですか!?」
 智代「では頑張って早くアップしろ」
 TK「あの〜頑張るって・・・
   もう心身ともボロボロなんですけどね。・゚・(ノД`)・゚・。 」
 智代「そこは根性で頑張るんだ」
 TK「姐さんアンタ鬼やわ〜・・・ 」
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