「「「「かんぱ〜い!!」」」」

そういって全員がコップのジュースを飲んだ。











   朋也の春原な日々 第17話











「それにしても、今日は疲れたわ〜」
「そうだな・・・」
「でも、楽しかったの」
「確かにな・・・」
「僕は悲惨な目に遭いましたけどね」
「「「「えっ・・・?」」」」

全員顔を見合わせる。

「・・・んなことあったか?」
「あたしの記憶にも全然無いわよ」
「私にもまっったく無いのだが・・・」
「きっと気のせいなの」
「そうだよな・・・」
「って100%、あんたたちが原因なんですけどね!?」

「何か言ったか!?」
「何か言った!?」
「何か言ったのか!?」
「何か言ったの?」

「・・・ナンデモナイデスヨ」

全員が睨むとあっさり降伏。
流石、世界のSUNOHARA、ヘタレっぷりもメジャー級。
W杯、もといWH杯でも優勝間違い無しだろう・・・

「って何ですか、WH杯って!?」
「え、知らないのかよ! ワールドヘタレ杯の略だよ
4年に一度行われてるらしいぞ」
「そんなの聞いたことないんですけどね!?」
「ああ・・・遅れてるな、春原
WH杯はもう世界レベルの常識だぞ
そんなんじゃこの情報化社会から孤立するぞ」
「ええ、マジであるんすか!
ありがとね、岡崎」

さすがヘタレ。こんな嘘も信じてる…
お前のアホっぷりには俺も感服だ。

「春原くん」
「ん、なんだことみ?」
「そんな大会ホントにあるの?
私は聞いたことないの」
「あっはっはっはっは、そんなんあるはず無いだろ!
んな大会が開かれたら世も末だって」
「あんためっちゃ騙してたんですね!?」
「さて、無くなったジュースでも注ぐか・・・」
「最後は無視ッスか!?」
「杏たちもいるか?」

杏と智代は今日の試合のことで盛り上がっていた。
時々物騒な単語が聞こえた気もするが…気のせいだろう。

「ええ、じゃあお願い」
「じゃあ私も・・・」
「ことみはどうする?」
「私もなの」
「オッケー、今すぐ注いでやるからな」
「あの〜、僕には聞かないんですかね?」
「あ!? お前は下水でも汲んで飲んでろ!」
「あんたそれは酷すぎッスよ!?」
「朋也、それは駄目よ!」

思わぬ加勢に春原も喜ぶ。

「ああ、今日の杏は天使に見えるよ・・・」
「春原に今、下水飲ましたらあんたが戻ったときに
下水臭くなってるかもしれないのよ! そうなってもいいの?」
「物凄く気のせいでしたね!?」
「そうか・・・仕方ないな、不本意だがお前にも
超法規的措置としてジュースを飲ませてやろう・・・」
「僕にジュース一杯飲ませるだけでそこまで大事なんですかね?」
「そんなことよりも・・・」

と杏はいいながら春原のほうを見ていた。

「さっきの『今日の杏は天使に見えるよ・・・』の発言が
あたしとっても気になったんだけどね・・・」

ちなみに右手には彼女の宝具…じゃなかった武器が
発射準備可能状態になっている。
対する春原は既に死が見えているのか、顔面蒼白だ。

「え、え、杏がいつも悪魔と言ってるわけじゃ」

ドゴッ!

「へぶしっ!」

(・・・やはりアホだな・・・)

そんな事言ったら、即リリースに決まってるじゃないかよ。
学習能力のない奴だな。

「お、岡崎・・・」

春原は俺に助けを求めているみたいだ。
だが、俺は助けるつもりは無かった。

「え、誰のこと?」
「あんたのことですよ!」
「俺、春原だし・・・」
「ああ〜、じゃあ春原助けてよ〜」
「岡崎・・・お前のパワーアップした生命力なら大丈夫だ!」
「そんな爽やかな笑顔で物騒なこと言わないでくださいよね!?」
「ね〜、陽平・・・そろそろいいかしら?」
「おっと待たせちまったな
遠慮なくやっていいぞ」

その瞬間の杏の笑顔と言ったら、
それはまさに天使と言っても過言ではなかった。
・・・中身は悪魔だったというのは、俺の口からは言えないがな。




「ふ〜、結構楽しいわね〜」
「そうだな、私もこんな風にしたのは久しぶりな気がするな」
「私もなの」
「そうか、楽しんでくれたんだったら、
お前ら呼んで良かったと思うよ・・・な、岡崎」
「そうですね・・・」

ちなみに春原はあの後、杏の猛攻を受けたにも関わらず、
現在はほぼ完治している。
恐ろしい再生能力を持っているな…
ことみはその再生能力に感心して、

「ちょっとだけ解剖とかしてみたいの」

といって全員を震撼させた。
当人の春原は真っ青だった。
まあ、そんなことは置いといていいだろう。
「岡崎、アレいかないか?」
「アレって・・・もしかしてアレ?」
「そうだ、アレだ」

そういって俺は冷蔵庫に向かってあるものを取りに行った。

「アレって何よ?」
「ん、まあすぐに分かるって・・・」
「取ってきたぞ―――!」

そう、アレとは大人のジュース、正式名称ビールだ。

「じゃあ、お先に・・・」

隣で春原が先にビール缶を先に開けた。

「こういうときはこれが無いとね」
「ああ、全くもって不本意だがそうだな・・・」
「どういう意味ッスかね!?」
「勿論、お前と同じ意見と言うことにだよ
今更そんな事言わせるなよ〜」
「あんたいつでも酷いっすね!?」
「ちょっと待て、貴様ら!」

その声は背後から聞こえてきた。

「ん、何だ智代?」
「未成年だというのに、ビールを飲むことは許されないぞ
しかもこの私の目の前で・・・覚悟はしてるんだろうな?」
「え、え、え・・・・・・」

明らかに智代から殺気が放たれている。
しかも、俺をスルーして春原にのみに降り注がれている。
もう、春原が震えまくりだ。

「おおおおおお落ち着いててててよ、とととと智代ちゃん・・・」
「とりあえずお前が落ち着けな」

いつもなら春原が宙に舞うところを楽しく見物したいところなのだが、
今日のところは助けないと、ビールをゆっくり飲めないからな…
仕方ない、と思いつつ智代に近づいていった。

「なあ、智代・・・」
「何だ・・・ん・・・」

そして、俺が持っていたビールを一気に飲ました。

「・・・・・・バタッ」

ビールを飲まされた智代はそのまま倒れてしまった。

「ちょっと智代は大丈夫なの!?」
「智代ちゃん、大丈夫?」

そこに今まで傍観していた二人が智代に近づいていった。

「いや、大丈夫みたいだぞ・・・」
「・・・すやすや・・・」

智代は寝てしまったようだ。
俺は心の中でガッツポーズをとった。
これで安心してビールが飲める。

「というわけで杏、ことみ・・・
お前らも飲むか? 」
「ん、そうね・・・せっかくだから貰うことにするわ」
「それじゃあ、私も・・・」
「オッケー、ちょっと待ってろ
今、冷蔵庫から取ってくるから」

そういって冷蔵庫から新たに二つの缶を取ってきた。
そしてそれを杏とことみに手渡した。

「あの〜、岡崎さん?」
「え、誰のこと?」
「あんたのことですよ!?」
「ワタシオカザキジャナイアルネ」
「何でいきなり片言なんですかね!?
しかも、『アルネ』って何ですか!?」
「まあ、気にするな・・・で何だ?」
「この部屋の冷蔵庫には一体何本ビール缶が入っているんですか?」
「ん〜、わからんがそこそこの数は入ってるぞ」
「・・・そのお金はどこから?」
「もちろん、春原陽平名義の通帳のお金を
キャッシュカードから引き落とした
に決まってるじゃないかよ
・・・・・・お前アホか?」
「何人のお金勝手に使い込んでるんですか!?
っていうか何で人の暗証番号が分かるんですかね!?
しかもそれって犯罪行為ですよね!?
むしろその金返してくださいよね!?」

春原の連続ツッコミが炸裂する。

「・・・はぁはぁ・・・」
「・・・・・・お前そんなに突っ込んでて疲れないか?」
「あんたのせいですからね!?」
「ねえ、あんたらの漫才はもういいんだけど・・・」
「僕にとっては死活問題ですから・・・へぶっ!?」

春原の顔面にはある人物の黄金の右手から放たれた辞書がめり込んでいた。
もう杏の中では外見はぜんぜん関係ないらしい。

「んじゃ、二次会みたいなもんだからな・・・
もう一回・・・カンパ〜イ!」
「「「かんぱ〜い」」」

春原はもう復活していた。・・・感服だ。




「ふ〜、ビールもなかなか美味しいわね」
「・・・ちょっと苦いの」
「ことみ、無理っぽかったら飲まなくてもいいんだぞ」
「がんばってこの一本だけは飲むの」

ちなみにここで発言していないあのアホは
とある事情によって杏の辞書を喰らい、
ビール缶を口に突っ込んだまま伸びている。
喉まで到達して窒息していないことを切に願っておこう…

「陽平〜、ビールもう一本お願いしていい?」
「ん、まだ飲んでも大丈夫か?」
「大丈夫だと思うわ」
「思うかよ・・・まあ、ちょっと待ってろ」

そういってもう一本持ってきた。

「岡崎ー、僕のも持ってきてよ〜」

どうやら、あのヘタレは早くも復活したみたいだ。
一時期は心停止してた気がするがな。
ちなみにあいつの分は持っていく気は毛頭にないがな。

「ん、ありがと」

そういいながら杏が取ろうとした。
が、俺の手にはすでに缶はなかった。
俺たちが横を見ると、缶を持った智代が立っていた。

「あの〜智代さん・・・」

盾の春原もいない…やられると思った次の瞬間、

「ゴクゴクゴク・・・」
「って飲むんかよ!? しかも一気に飲むつもりか!」
「・・・おい、春原」
「・・・・・・なんでしょうか?」
「次の缶を持って来い」
「え、でも先ほど、『未成年がビールなんか飲むことは許されない』
と仰ってた気もするんですが・・・」
「・・・とっとと持って来いと言ってるだろ!」

どぐしっ!

何故か空中に乱舞していた。

「ちょっと大丈夫!?」
「な、何とかな・・・」

今だけは春原の体の丈夫さに感謝だ。

「さっさと持って来いと言っているだろ! 春原」
「あの〜智代さん、もしかして酔っているのでは?」
「酔ってなどいない!」

どぐしっ!

ちなみに酔ってないやつほどそういうんだがな。

「ぐはっ!?」
「仕方ない・・・岡崎、代わりに持って来い!」
「はははははいいいいい!! 今すぐ持ってきます!」

光の如くスピードで春原が取ってきた。

「取ってきました・・・」
「ありがとな岡崎」

そういって再び飲もうとして、杏のほうを見た。

「杏さん、あなたももっと飲まないと」
「いや、あたし未成年だし・・・」
「気にしないでくれ、今日は無礼講だからな」

意味間違っているがな。
あと無礼講でも、人は蹴ってはいけないぞ。

「おい、そこでへばってる奴
さっさと杏さんのビールを持ってこないか」
「つーても、節々が痛いんだよ・・・」
「仕方ない・・・」

どぐしっ!

(な、何故に・・・)

智代の蹴りと共に俺は冷蔵庫の前に辿り着いた。

「それで取ってこれるだろ?」
「・・・・・・ボロボロでそっちにいけないんですけど・・・」
「ちっ、使えない奴だな・・・
岡崎、冷蔵庫からもう数本持ってきてくれ」

春原は迅速に缶を数本持ってきた。

「持って参りました!」
「ありがとな、度々済まないな・・・
では杏さん、ことみさん一緒に飲みましょう!」
「え、あたしはあと一本飲めば十分なんだけど・・・」
「私もこの一本でいいの」
「そうですか・・・
私とはビールなんて飲めないってことですね、ううう・・・」
「あ、そういうわけじゃ・・・」

智代のキャラの変貌振りに全員置いてきぼりだ。

「じゃあ、飲むぞ」
「え、だから・・・」
「遠慮するな、杏さんらしくもない」
「こうなったら・・・飲んでやりますよ!」
「そうこなくては・・・ことみさんも飲みましょう!」
「え、でも私は・・・」
「ことみ、あんたも飲みなさい!」
「ううう、分かったの」

まああの二人、特に杏から言われたら断るのは無理だ。
断ったら何されるか分からないしな…

「それでは飲みましょう!」
「こうなったら・・・飲みまくってやる――――!!」
「お〜なの」

こうして女3人の飲み会が始まった。

(どうするの、岡崎!)

春原が近くによって小声で聞いてきた。

(どうにかなると思うか?)
(・・・思いませんよ)
(だからほっとくしかないだろ、それに・・・)
(それに?)
(止めにいって蹴られたくはない)

それが今の本心だった。




「す〜、す〜・・・」
「う〜・・・智代、もういらないわよ・・・」
「う〜ん、二人とも怖いの・・・」
「・・・ようやく寝たみたいだな」
「・・・そうだね」

悪夢の一時間が過ぎ去った。

「岡崎、大丈夫?」
「今は何とかな・・・途中で
記憶にないはずの母さんの声が遠くのお花畑から聞こえてきたがな・・・」
「そりゃあ、酔った杏に辞書くらって、智代の蹴りもくらってたらね・・・
霊視体験もするよ・・・」

やはりあれはあの世への一歩手前だったか。
経験者の話は身にしみるな…

「お前もよくあんなのくらってて今まで平気だったな・・・」
「何言ってるんだよ、全部避・け・て・るに決まってるじゃん!」
「いつも酸欠の金魚みたいにピクピクしてても説得力ないけどな」
「ほっといて下さいよ!?」
「・・・・・・なあ春原」
「何だよ?」
「平和っていいな・・・」
「ホントだね・・・」

そう二人でしみじみ思いながら
冷蔵庫に残っていた2本のビールを持ってきた。

「やっと静かに飲めるね」
「っていってもあとこの2本しか残ってないけどな
あの3人・・・というか智代に飲まれたからな」
「僕、金輪際智代の周辺でお酒は飲まないよ」
「ああ、俺もだ・・・でも、今日だけは飲む」
「じゃあ、僕も・・・」

そういって二人とも缶を持った。

「は〜・・・」
「どうしたの、そんなため息をついてさ?」
「いや、せっかくのビールなのにこんなやつと飲むことに少し嫌気がな・・・」
「そんな事言わないでくださいね!?」
「いや、だってな・・・」
「じゃあ、智代とでも飲んでくださいよね!?」
「それは今現在は勘弁!」

ま、元の姿に戻ったら飲んでも問題ないと思うが…

「じゃあ、今日のところは僕で我慢してください!」
「仕方ない・・・大まけにまけて特別サービスで飲んでやるよ・・・」
「僕と飲むのがそんなに嫌なんですかね!?」
「ちょっとしたジョークだって・・・」
「全然ジョークに聞こえなかったんですけどね!?」
「それじゃあ、本日3回目になるが・・・」
「もうスルーですか!?」
「カンパーイ!」
「・・・カンパーイ!」


そういって俺と春原は残っていた
2本のビールを飲んでいた。











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 朋也「うわ〜、最終回みたいな感じだな・・・
   見方を変えれば・・・」
 陽平「もう最終回でいいじゃん〜」
 朋也「それはだめだ!
   こんなヘタレの姿のままで終わってほしくはない!」
 陽平「やっぱりそこですか!」
 朋也「俺には最重要事項だからな」
 陽平「一体どこまで行くのかな?」
 朋也「まあ、20話行けばいいんじゃないか?」
 陽平「意外と弱気っすね」
 朋也「早く元に戻りたいだけだ」
 陽平「そういうことでしたか!
   そういえば、今日はいないんだね」
 朋也「まあ、いなくてもいいんだが・・・
   では今回はこのあたりで・・・」



その頃…

 智代「・・・今回の私は酷すぎるではないか!
   貴様には鉄拳制裁だな・・・」
 TK「お、お助け―――――っ!!」

 どぐしっ、どぐしっ、どぐしっ、どぐしっ、どぐしっ・・・
 
 TK「もはやお約束ですかね・・・
   大体鉄拳ちゃうし・・・」
感想、誤字等については拍手、メール、もしくは掲示板に…



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