昼食を取った後、俺たちが向かったのはゲームセンター。
そういえば、俺も最近色々あったからなかなか来れなかったな。
久々に楽しんでいくとするか。











   朋也の春原な日々 第19話











「ふふふふふ・・・」

ゲーセンに入ると、いきなり春原が不気味に笑い出した。

「どうした、ついに脳みそが底を尽きたか?
それともお迎えでも来たのか?」
「違いますから!?
あれですよ、ここってゲームセンターですよね?」
「少なくともここが天国でないことは確かだ」
「意味分からないよ!?」
「で、それがどうしたんだ?」
「杏は頻繁には来てないだろうし、
智代にいたってはほぼ初めて!(のはず)
つまり、ここからは僕の独壇場というわけだよ」
「ふ〜ん・・・で?」

俺に言わせれば、何処でもお前の独壇場だと思うぞ。
悪い意味でだけどな。

「分かってないな〜、つまり
今までの恨み等をここで晴らすことが出来るって訳ですよ!
実に楽しみだな〜」

自分のホームグラウンドにいるため、物凄く上機嫌な春原。
この上機嫌の春原を何とかして不幸にしてやりたい
と思うのは何故だろう?
これが親心というやつか!?

「ってこんなんの親になってたまるか――――ッ!!」

どぐどふっ!

「「いきなり叫ぶな(叫ばないで)!」」
「す、すまん・・・」

思わず叫んだせいで2人の鬼神から制裁を受けてしまった。
これも全て春原のせいだろう。

「って僕のせいですか!」

人の心に突っ込みは入れるなよ、ヘタレ。




「というわけで最初はこれをやろうよ」

何がというわけかは分からないが、
春原が指差したのは4人対戦用のレーシングゲームだった。
なるほど、ここで自分の力を杏達に見せつけようという作戦だろうか。

「智代はこれでいいか?」

ここは一番初心者であろう智代の意見を聞いてみた。

「別に私は構わないぞ」

とりあえず了承したみたいだ。

「それで、これは一体どうやってやるものなんだ?」
「これか?まあ、見たとおりなんだが、カーレースのゲームだ」
「そうか・・・」

意外に面白そうだな、と呟いている。

「まあ、『百聞は一見に如かず』っていうだろう
実際にやってみるのが一番だろ」
「む、春原のいうことも最もだな」
「それじゃあ、やるとするか」
「そうそう言い忘れてたけど・・・」

とお金を入れる直前、杏が

「最下位だった人は罰ゲームね」
「ちょっと待て!それはまずいだろ
どう見ても、智代が不利だろ」
「・・・・・・別に私はいいぞ」
「やめとけ智代、通常の勝負なら一人のヘタレの存在によって
敗北は無いかもしれないが、今回は奴のホームグラウンド、
さすがに分が悪いぞ」

言い換えれば、智代と春原のキックボクシングといったところだ。
もしくは春原とことみの学力勝負である。

「大丈夫だ、何があっても負けることなど無い」

というかその何処から湧き上がる湧き上がってくるか分からない。
勝利の根拠を知りたい。

「おい諸悪の根源、
さっきの発言をとっとと破棄しろ・・・」
「何ボサーッと突っ立ってるのよ!
さっさとあんたも座りなさいよ!」
「分かりました・・・」

どうやら発言の当事者は撤回する気は無いみたいだ。
こうなったら俺には止める手立ては無い。
無理やり止めようとしたら、その瞬間に夜空のお星様になってしまう。

「春原も早く座れよ〜」

意気揚々と話す春原。
仕方なく座り、コイン投入。
ちなみに座ってる順番は左から俺、智代、杏、春原の順である。

「僕の華麗なドライビングテクニックを見せてあげるよ」

既に勝利を確信したかの様な発言の春原。

「・・・・・・」

既に智代の目はマジになっていた。
話しかけれる雰囲気ではない。

「・・・ふふふ・・・」

そして、杏は不気味な笑い。
確実に何かをたくらんでいますという顔だ。
はっきりいってホラーだ。
こういうときの杏はスルーだ。
触らぬ神に祟り無しと言うしな。

(俺だって負けたくは無い、このメンバーにはな)

春原よりは上手くはないといっても、
俺もそれなりにやっていたからな。
杏や智代には負けるわけにはいかない。

画面に集中する。
カウントダウンが始まる。

3…2…1…0!


どごっ!


何か聞こえた気がするが、気にしては駄目だ。
スタートダッシュに成功して俺はトップスタートだった。
春原より前にいるのは嬉しいことだ。
このまま独走を目論見る!





結局俺はそのままトップを走りゴールした。
最下位はと…
意外なことに春原だったようだ。

「よおヘタレ、口だけだったな
今日は調子でも悪かったのか?」
「・・・・・・」
「それにしても・・・お前いつの間にイメチェンしたんだ?
このゲームはいつから体感ボクシングゲームになったんだ?」
「断じて違いますからね!?」
「まあそれはいい・・・とりあえず、敗者は罰ゲームだからな」
「よくないですからね!?
ちょっと待ってくださいよ!
今のは無効試合っすよ!反則っすよ!」
「・・・牛乳毎日飲んでるか?」
「それって僕がカドニウム不足って言いたいんですかね!?
ちゃんと毎日摂ってますからね!」
「それをいうならカルシウムだからな
そんな有害ミネラルを積極的に摂取するなよ
仕方ない・・・その言い分を聞いてやろう」

それに色々面白いことが聞けそうだしな。

「これは杏の陰謀なんっすよ!?
負けたくないからって、レース中に辞書投げないでくださいよね!?
「あれって杏の辞書がお前に当たる音だったのか・・・
俺はてっきり何処かでパンチングマシーンやってる音かと思ってたよ」
「私はすぐに気付いてたがな・・・」

さすがいつも叩き込んでいるやつは違うな。

「気付いてたならすぐに止めてくださいよね!?」
「いや、まあ私に実害なかったからな・・・
それに私はそんなことをいう余裕は無かったんだ
決してお前だから放置したとかじゃないからな・・・」
「それ自爆だからな」
「まあ、お前の敗因は杏の隣でやったことと思って諦めろ」

ちなみに当の本人は涼しい顔をしていた。

「・・・負けたことは認めますよ
でも、罰ゲームには納得できませんよ!
大体、顔面ばかり狙われるんですよ、杏のやつ画面しか見てないはずのに・・・
横にも目が付いてるんじゃないですかね!?」

ううむ、俺としては春原が罰ゲームを受けることには全く問題ないと思うのだが、
聞けば聞くほど、哀れになってきた。

「杏、さすがに気の毒すぎるから罰ゲームは無しにしてやれよ・・・」

俺も春原の不幸を推奨している人間だが、さすがに哀れすぎた。

「うっ、さすがに今回は悪かったと思ってるわよ・・・」

どうやら、これで春原も平和を取り戻すことに―――

「そんな言葉だけじゃ納得いかないよ
僕としては額を床に擦り付けて謝ってもらいたいものだぼっ!」

余計なことを言ったやつの顔面に辞書がめり込んでいた。
自ら平和を手放すことをするとはな…
とりあえず、一言言っておかないとな。

「もし、俺の顔の皮の厚みが増してたらお前のせいだからな・・・」
「このヘタレがふざけた事言うからよ!
あともしそうなって欲しくないのなら、こいつの性格を直しなさいよ!」

それはこの世界の海と陸を入れ替えるくらい不可能である。

「酷い言いようですね!?」
「ああ、戻ったら整形手術受けないといけないかな…」

ちなみにレーシングゲームについては春原の懇願によって、
もう一回行った。
春原はお望みどおり、トップでゴールした。

「これでもう・・・僕は思い残すことは・・・ない・・・よ・・・」

それがあいつの最後の言葉だった…

「って勝手に殺さないでくださいよ!?」





俺たちが次に向かったのは、UFOキャッチャーだった。
その中のひとつに動物のぬいぐるみが
多数入っている入っているものがあり、それをやっているのだが…

「ちょっと何よこれ、全然取れないじゃないのよ」
「ちょっと落ち着けって・・・
そんな簡単に取れたら商売にならないだろ」
「くっ、あと少しだというのに!」

かれこれもう一時間は粘ってるよ、この2人は。
一体いくら注ぎ込むつもりなんだ?
ちなみに半分は俺の金である。
全部ではないのはわずかの良心であろう。

「だから僕が簡単に取ってあげ・・・」
「「あんた(貴様)に頼むなら潔く諦めるわ(ぞ)!!」」
「・・・どうぞ頑張ってください」

さすがヘタレ春原、一声で萎縮。

「僕、格ゲーの方に行ってきます・・・」
「ああ、賢明な判断だな
お前がいたところでボコボコにされるのがオチだからな」
「そんな事言わないでくださいよね!?
・・・・・・でも、そのとおりだと思うのでさっさと離脱させて頂きます」

そういって春原はこの場所から離脱していった。

「あ〜、何で取れないのよ〜!」
「それはだな・・・アームの力が弱いからだよ
そのアームの力じゃ景品は取れないと思うぞ
だから諦めておけって・・・」
「私に諦めるって言葉は存在してないのよ!」
「私にもだ」

駄目だ、こいつら引く気ゼロだ。
ここは何としても説得しなければ、というか…

「じゃあ、せめて自分の金でやってくれ
人様のお金でやるな
このままじゃ、無一文になるからな」

いくら春原の金だといっても
今は一応、俺の生活費も含まれている。
さすがに無一文になるのは問題だ。

「そうね・・・このままやってたら
陽平のお金が底をついちゃうしね・・・
あと少しで諦めるわ」

いや、そこはさっさと諦めて欲しい。
というか底尽きるまでやるつもりだったのか!…危なかった。

「しかし、諦めるというのは私の主義に反するのだが・・・」

もう一人説得しないとな。

「じゃあ、俺が無一文になって苦しむのは
智代の主義に反していないんだな・・・」
「そ、それは・・・」

智代は言いよどんでいるみたいだ。

「そんな言い方をされては諦めるしかないではないか
あとは自分のお金で何とかしよう」

どうやら、智代も諦めてくれるらしい。
とはいっても、取ることを諦めたわけではないんだがな。




その後、残念ながら景品をゲットすることは出来なかった。
まあ、あれは多分よほどの運と技術がないと取れないだろう。
特に杏は怒り心頭みたいだ。

「あれは詐欺まがいよ!」

と言っている。
まあそうなのだが、それを分かって
なおやり続けるお前達にはある意味尊敬に値するぞ。

「さて、あいつは何処にいるのかな・・・」

確か格ゲーやりに行くとか言ってたな。

(ザワザワ・・・)

「朋也、あそこ人だかりが出来てるわよ」

と杏の指の指す先には人だかりが出来ていた。というか、
ここのゲーセンってこんなに人いたっけ?
…多分考えちゃいけないことなのだろう。
考えたら、負けなのだろう…

「あ、あいつもいるじゃん」

その野次馬の中には春原もいた。

「おい、ヘタレ
何なんだ、この人だかりは?」
「春原じゃないっすか
それで杏たちは景品は取れたんすか?」

どごすふっ!

「・・・こういう結果よ」
「分かりやすい返答ありがとうございます・・・」

春原の顔面に辞書の跡がつくという分かりやすい返答だった。
ちなみにいつの間にか足がありえない方向に曲がっている気がするのは気のせい…だな。

「お前、格ゲーやってたんじゃないのか?」
「少しやってたら、何かざわついてきたからやる気なくなっちゃってさ、
それで様子を見たらこうなってたって訳だよ」
「それで、このゲームセンターではあり得ないといってもいい
この集まりは何なんだ?」
「・・・『百聞は一見に如かず』って言うじゃないですか?
実際見たほうがいいですよ」
「「「・・・・・・・・・・・・」」」

どうやら杏と智代も同じ考えみたいだ。

ササッ

「・・・・・・熱はないな」
「息も脈もあるわね」
「・・・天変地異の前触れでもないみたいだぞ」
「・・・はっ、もしかしてこれは夢なのか!?」

ということは夢から覚めれば、俺は元通りに…

「しかし、痛覚はあるみたいだぞ」
「はぁ・・・そんなわけないか・・・
だったらここはパラレルワールドか!?」
「その可能性も捨てきれないわね」

さまざまな憶測が飛び交っている。

「あんたら揃いも揃って最高ですね!?」
「悪かった、お前がいきなり高度な言葉を発するから・・・」
「それだけで天変地異の前触れとかは酷いっすよね・・・」

涙ながら言葉を発する春原。

「さてと・・・そんなことよりも、本題に戻るとするか・・・」

人を掻き分け、中心部へ行くと、
よくある格ゲーをやっている人物がいた。
ただ、普通と違うところは…

「ほわっちゃ―――っ!!」

何故かシャウトしながら、やっているところだった。
これは見世物になって人が集まるはずだ。
しかし、何処かで見たことあるやつ…

(・・・・・・って風子じゃないかよ!?)

そこにいたのは風子だった。
何故叫びながらやっているかは不明だが…

(しかし・・・)

「や、やりますね・・・
必殺、ヒトデスパイラルプッシュ!
「・・・・・・・・・・」

叫んでいる技の名前は全く意味不明、
風子らしく、ヒトデの言葉が入っていることしか確認できない。

名前はともかく、風子のキャラの動きはかなりトリッキーだ。
予測不能というか、そんな動きも出来るのかよ!?
と言うべき動きもしている。
そして、肝心の対戦相手は…

「なかなかやるの、でもその動きはもう効かないの」

もう一方はことみかよ!?
ことみのほうのキャラは結構堅実な動きをしていた。
が、その動きは既に神レベルと言っても過言ではない。
一切の動きに無駄がない。
常人では歯が立たない。
だからこそ、トリッキーな動きが出来る風子は戦えてるのか…
って何冷静に分析してるんだよ。それ以前に、
何でこの2人は対戦してるんだ?
そもそも、こいつらが格ゲーやってること自体に疑問を抱くのだが…


YOU WIN!

そんなことを考えているうちに試合が終わったみたいだ。
あの激戦(?)はことみが制したみたいだ。

「風子、果てしなく悔しいです!」
「これでこっちの本の嬢ちゃんの33勝29敗だぞ」
「ああ〜、俺はこっちのヒトデ嬢ちゃんに賭けていたのにな・・・」
「さあ、次はどうする?」

どうやら非合法の賭けも行われているみたいだ。
それに変なあだ名もついているみたいだ。
ぴったりといえばぴったりなのだが!
一応、顔見知りということで声をかけてもよかったのだが、
これ以上かかわりたくは無かったので、声を賭けずに中心地から離れていった。

「陽平、何だったのよ?」

俺以外は見に行ってないみたいだった。
この人混みには入りたくなかったのだろう。

「いや、あれは知る必要のないことだ
とりあえず、ヒトデの守り手と本の守護者の戦いが行われているというだけだ?」
「そうか・・・」

これ以上の説明はしたくないのだよ。
杏も智代も風子はともかく、ことみのことと分かったのだろう。

「ま、ここにいても暇なだけだしね・・・って今何時よ?」
「今は・・・4時ちょっと前だな」

てっきりまだ3時くらいだと思ってた。というか、
ここに来てからレーシングゲームしかやってないことに今気付いた。
無駄な一日過ごしてるよな…

(とはいうものの、金はあんまりもう無いしな・・・)

これ以上の浪費は今後(というか夏休み)の生活を圧迫しかねない。
今日のところは…まあ、杏と智代のために使ったと思って諦めるか。
…いささか納得できないのだが、納得するしかない。

「これからどうする?」
「あ〜、私もうあんまりお金残ってないのよ」
「実は私もだ」
「俺もほとんど無いな・・・」

お前ら(特に杏)のせいでな!
そう心の中で叫んだ。
間違ってもそんなこと声に出しては言えないがな。

「仕方ない・・・所持金も苦しくなってきたことだし、
今日のところは退散することにするか」
「それじゃ、このあたりで解散しましょ
あたしはお母さんに頼まれた用事があるからもう少し商店街にいるけど・・・」
「私も買うものがあるから一緒に行くことにする
ではまた近いうちに会おう」
「じゃあね〜、あんた達〜」

そういって杏と智代は行ってしまった。

「・・・・・・」
「・・・・・・」

そうして俺と春原だけが残った。

「お前はどうする?」
「僕は家に帰るしかやること無いけど」
「んじゃ、いつも通り寮でゴロゴロすることにするか」

そういって俺達は寮に向かっていき、
そのまま夏休み前の夜を過ごしていった。











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 TK「めっさ久々更新や――――」
 ドドドドドドドゴッ!!!!!
 TK「っていきなり音速の蹴りですか!?」
 智代「全然更新してこなかった報いだ」
 TK「それよりも書いてて問題が発生しているんですよ」
 智代「・・・・・・聞いておこう」
 TK「実はブランクが空き過ぎて、
    想像と違うものになってきています」
 智代「・・・・・それで?」
 TK「これはおそらく神の悪戯ではないかと――――」
 どどどどどどどどどぐしっ!!!!!!
 TK(・・・ピクピク・・・)
 智代「それは100%貴様の責任だ!!!
    ・・・しまった、蹴りすぎて意識を飛ばしてしまった
    こんなやつの作品をここまで読んでくれてほんとに感謝しているぞ」
 TK「さ、最後にひとつ、だけ・・・」
 智代「何だ?」
 TK「じ、次回は・・・ぐふっ!?(バタッ)」
 智代「・・・・・・・・・(汗)
    ま、まあ気にすることではないだろう
    それでは次の更新まで」


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